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nano tech 2021/先進印刷技術展2021/新機能性材料展2021(2020年12月9〜11日)


nano tech 2021/先進印刷技術展2021/新機能性材料展2021
5G向けのFPC製造プロセスとして無電解めっき法が急浮上

2020年12月9〜11日、東京ビッグサイトで開かれた「nano tech 2021/先進印刷技術展2021/新機能性材料展2021」。昨今のトレンド通りフレキシブルデバイス向けの提案が目立ったほか、抗菌・抗ウイルス向け技術など異業態からの発表も目についた。おもなトピックスをレポートする。



図1 フレキシブル基板への無電解めっきパターニングプロセス例@

 まずエレクトロニクスデバイスのプロセステクノロジーでは、大阪産業技術研究所が5G向けのFPC基板パターニング法として新たな無電解めっき法を提案した。ひとつは、図1のようにフィルム基板をUV照射やプラズマ照射によって改質した後、アニオン性とカチオン性の水溶性ポリマーを交互にウェット成膜して多層膜を形成。続いて、触媒を成膜し市販のめっき液で無電解めっき処理してメタル膜を形成する仕組み。


図2 フレキシブル基板への無電解めっきパターニングプロセス例A

 もうひとつは、図2のようにPd系触媒をウェット成膜した後、365nmなどのUV光をフォトマスク越しに露光することによって光硬化させ、これを未露光部をウェット処理によって除去した後、Cuなどのメタル膜を無電解めっきによって選択成長させる仕組み。

 いずれも5G用フレキシブル基板では高周波対策としてRa=nmオーダーと極めて高い平坦性が求められるためで、現状のポリイミドフィルム+Cuエッチングというプロセスでは平坦性要求が満たせないため、こうしたウェット成膜・パターニング技術が主流になると強調していた。

15.5cm2/Vsというハイモビリティの有機半導体が出現


図3 有機半導体5H-21DNTTの分子構造

 一方、エレクトロニクスデバイス用マテリアルでは山形大学大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンターがキャリアモビリティが極めて高い有機半導体材料5H-21DNTT(図3参照)を紹介した。ウシオケミックスが開発したもので、有機半導体溶液を基板上に垂らした後、ブレードによって水平方向に掃引するブレードコート法によってボトムコンタクト有機TFT上に成膜。膜は単結晶ではなく多結晶ながらキャリアモビリティ15.5cm2/Vs、再現性100%というエクセレントな結果が得られた。

フレキシブルデバイス用透明導電膜として単層グラフェンを提案


写真1 単層グラフェン転写フィルム
 代表的なナノテクノロジーマテリアルであるグラフェンでは、帝人が単層グラフェン転写フィルムを展示した。PETフィルムなどの各種プラスチックフィルムにグラフェン膜を設けた透明導電フィルムで、グラフェンは厚さ0.34nmと単層である。その膜形状はハニカム状でつながっていると推測され、ドライエッチングやレーザーダイレクトエッチングによってパターニングすることができる。単層の場合、可視光透過率は97.6%、シート抵抗値は165Ω/□で、複層化することによってシート抵抗値を調整することができる(その分透過率は低下する)。銅箔上にグラフェンを熱CVD成膜した後、プラスチックフィルムに転写するため、高温プロセスで高性能なグラフェンが得られるのが特徴といえる。

 ブースでは写真1のように曲げた状態でフィルムを展示。フレキシブルデバイス向けのポストITOフィルムとして実用化したい考えを示した。なお、現時点での最大サイズは500×600oで、これからサンプル出荷する段階だという。

微細構造物を印刷し抗菌・抗ウイルス効果を付与


写真2 抗菌・抗ウイルス構造膜のサンプル
 エレクトロニクス関連とはいえないが、リコーは抗菌・抗ウイルス構造膜というタイムリーなテクノロジーで抜群の存在感を示した。独自のインクジェット系印刷技術によって各種サブストレートの表面に微細構造膜を印刷し、その微細構造物によって抗菌・抗ウイルス効果をもたせるという提案で、微細構造物の突起によって菌やウイルスが突き破れて破壊されるというメカニズムに基づく。微細構造物のディメンジョンは数μmクラスから数十μmクラスまで除去対象物のサイズによって自在に設定可能で、ガラス、プラスチックフィルム、紙、繊維など各種サブストレートにダイレクト印刷することができる。実際に第三者機関が調査した結果、黄色ブドウ球菌、インフルエンザウイルスとも99.9%以上の死滅率を示した。

 ブースでは応用例としてマスク、ABS樹脂、スマートフォンという応用サンプルを展示。2023年までに技術供与を含め何らかの形で事業化したい考えだ。なお、サブストレートに対する密着性・耐久性はこれから評価する段階だという。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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