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第28回ファインテックジャパン(12月5〜7日)


第28回ファインテックジャパン やはりフレキシブルデバイス用インフラが主役に
ディスプレイメーカーはジャパンディスプレイ/JOLEDとシャープが参戦

12月5〜7日、幕張メッセで開かれた「第28回ファインテックジャパン/第9回高機能フィルム展/第7回高機能プラスチック展/第5回高機能金属展/第3回高機能セラミックス展/第2回接着・接合EXPO」。従来は4月に東京国際展示場で開かれていたが、今年から12月に幕張メッセで開催に。ディスプレイ業界は中国・台湾・韓国勢に押されている感が否めないが、今回の展示会は例年以上に活気があり、ニューテクノロジーのデモも相次いだ。

JOLEDが完成度の高い有機ELDを披露


写真2 54.6型4K有機ELD(JOLED)

写真1 21.6型有機ELD(JOLED)
 ディスプレイメーカーはジャパンディスプレイ/JOLEDとシャープが参加。前者の日の丸連合はJOLEDの有機ELディスプレイが主役を演じた。メインプロダクトは昨年末から製品化している21.6型パネルで、4KパネルとフルHDパネルをラインアップ。とくに、高速応答性が求められるe-sports用モニターは応答速度が0.1ms以下と高速だけに、競合するTFT-LCDに対し優位性があるように感じた。

 一方、プロトタイプは54.6型4Kパネル、27型4Kパネル、円筒型フレキシブル21.6型パネル、車載用12.3型/12.2型パネルを披露。54.6型パネルは唯一の酸化物TFT駆動(その他は低温poly-Si TFT駆動)で、トップエミッション&マイクロキャビティ構造により高透過率&広色域表示を実現。sRGB比130%と広い色再現性が得られる。見た目の印象もパーフェクトで、これだけの色再現性なら競合するTFT-LCDに対してもハイエンドモデルとして十分勝算があるように見えた。


写真3 車載ディスプレイボード(JOLED)
 他方、車載ディスプレイは写真3のようにメインコックピットエリアにリジッドな12.3型HDパネルを3枚、アンダーエリアにフレキシブル12.2型HDパネル(1920×720画素)をビルトイン。既存のインパネシステムに比べ圧倒的な高級感をみせつけた格好。ちなみに、いずれのパネルともRGB独立発光方式によるトップエミッション構造で、RGBピクセルは独自の印刷法、平たく言えばインクジェットプリンティング法でダイレクトパターニングした。

シャープは超低反射TFT-LCDを初披露


写真4 通常パネル(左)と超低反射パネル(右)の比較(シャープ)
 これに対し、シャープは10月に開かれた「CEATEC JAPAN 2018」の延長線といったデモ内容で、What's Newとして超低反射3型TFT-LCDを披露した。しかしながら、「液晶セル内の反射を極限まで抑制した」と説明するのみでどこがニューテクノロジーかは明らかにせず、写真4のように通常パネルと比較展示したのみ。気になる反射率は反射防止フィルムなどの表面処理フィルムを設けた段階で1%以下。通常パネルも1%強だが、説明員によると「このコンマ数%が大きく、見た目の印象はかなり違ってくる」とのこと。

CdフリーQDを有機ELDに用いてCFをレス化する提案が


写真5 CdフリーQDを使用した疑似白色パネル(DIC)


図1 CdフリーQDを使用した疑似白色パネルの構造(DIC)

 ディスプレイ用マテリアルでは、DICがWhat's Newにふさわしいデモを連発した。まずはCdフリー量子ドット(QD)を主成分としたインクジェット(IJ)用インクで、熱硬化タイプとUV硬化タイプを開発。IJ法によってサブピクセルをダイレクト形成する。TFT-LCD、有機ELD、μ-LEDに有望で、とくに有機ELDでは現在大型テレビ用パネルとして製品化されている白色EL発光+RGBマイクロカラーフィルター(CF)方式をリプレースするポテンシャルを秘める。つまり、QD色変換層をサブピクセル毎に設ければCFがレス化でき、CFによる透過率ロスがないため発光効率が向上する。ブースでは図1の構造の白色発光サンプルを展示。このQDインクを用いれば白色発光デバイスやRGBフルカラーデバイスが容易に製造できることを示した。

 DICは有機TFT向けでもハイクオリティなp型有機半導体「DOSCシリーズ」を紹介。組成は明らかにしていないが、共通の基本骨格で高溶解タイプと高移動度タイプをラインアップ。前者は芳香族系溶媒や塩素系溶媒に対し高い溶解性を備えており、スピンコート法やIJ法といった一般的な塗布方法でもキャリアモビリティ2cm2/Vsが得られる。一方、後者は溶媒溶解性が低いため真空蒸着法で成膜するが、そのモビリティは10cm2/Vsと酸化物半導体並み。なお、どちらも大気安定性に優れており、大気下で1年放置しても変質するようなことはないという。

安価なガラスペーストを用いたフレキシブルサブストレートが登場


写真6 ガラス金属積層板
 フレキシブルデバイス用サブストレートとしてユニークだったのが東洋鋼鈑のフレキシブル金属板。屈曲性を備えるステンレス箔上に密着性確保のための樹脂製表面改質層、その上部に薄膜ガラス層を設けた3層構成で、薄膜ガラス層は表面平滑性、絶縁性、さらにガスバリア性を備える。ユニークなのはその成膜法で、低融点ガラスペーストを各種コーティング法またはスクリーン印刷法で塗布し、400〜500℃で焼成する。この結果、Ra=0.4nm、Rz=4.8nmという平滑なサーフェースが得られる。もちろんフレキシブル性も高く、細いものに巻いてもガラス層の界面から剥離やクラックが発生することはない。容易に想像できるように最大の武器はそのコストで、ポリイミドフィルム+有機・無機の真空成膜平滑化&ガスバリア層といった標準構成に比べ大幅にコストダウンできるとみられる。このため、フレキシブル有機ELDやフレキシブル有機太陽電池のサブストレートに有効と感じた。

フレキシブルガラスロールが存在感を誇示


写真7 G-Leaf基板上に作製した透明電極&補助電極サンプル(NEG)
 一方、日本電気硝子(NEG)は今回もロール状のフレキシブルガラス「G-Leaf」を大々的にデモ。山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンターがG-Leafをサブストレートに用いて試作した緑色有機EL照明デバイスを公開した。このデバイスは封止基板にもG-Leafを用いており、封止にも有効なことを示した。

 さらに、G-Leaf上にIZO透明アノード、絶縁層、補助メタル配線を形成した800o幅サンプルロールも披露。補助配線はスクリーン印刷法でダイレクト形成したもので、大型デバイスでも補助配線を設ければ輝度ムラが生じないことを実証した。

ジオマテックがモスアイフィルムをリリース


写真8 g.mothありとレスの比較(ジオマテック)
 成膜メーカーのジオマテックはg.mothと名付けた表面処理フィルムを開発、これまでの成膜ビジネスとは異なる新たなフィールドに参戦することを表明した。TACベースフィルムをナノインプリント処理して表面に蛾の目ライクなモアアイ構造を設けたもので、この結果、反射率がミニマム化し透過性が大幅にアップ。さらに、その凹凸ストラクチャーによって撥水性が付与され、150度前後という水の接触角が得られる。ブースでは内部に造花を設置した透明パネル、写真フレームなどをレスサンプルと比較展示し、その有効性をアピールしていた。

常温接合が進化し透明常温接合に
 
 製造装置関連では、常温接合技術で知られるランテクニカルサービスが新たなテクノロジー成果を示した。従来から独自のイオンビームスパッタリング法によって各種サブストレートの常温接合に成功してきたが、今回は透明接合を実現。双方の基板に同一の材料を数nm成膜し、貼り合わせて自然接合するというメカニズムは変わらないものの、接合材料を従来のシリコンからマル秘材料に変更。この結果、プロセス自体を変更せず、透明接合を実現した。ガラス、シリコンウェハー、セラミックス、PET、PENといった各種サブストレートに対応でき、接合強度もスパッタ成膜プロセスやその後の減圧接合プロセスによって制御できるとのこと。


写真9 透明接合サンプル(ランテクニカルサービス)
対向ターゲットスパッタの弱点を解消した成膜方法が

 今回製造装置関連でインパクト抜群だったのが京浜ラムテックのRAMカソード。低ダメージスパッタリング成膜法として知られる対向ターゲットスパッタ法をさらに進化させた成膜法・カソードユニットで、結論からいうと従来の低ダメージ性を維持しながら、2.5倍というハイデポジションレートが得られる。

 そのメカニズムだが、従来の対向ターゲットスパッタ法が基板に直交する形で2枚のターゲットを対向配置するのに対し、RAMカソード方式ではさらに上下に2枚のターゲットを設ける。この結果、ターゲットの表面近くにプラズマが生成され、Arイオンの加速力が増大し、ターゲットから叩き出されるスパッタ粒子が増加して成膜レートが向上する。つまり、イオンソースを狭くすることによって成膜レートを高める。実際にITO膜を成膜したところ3倍というハイレートが得られた。ターゲット利用率は従来のカソード揺動式と同等の40%程度。もちろん、基板に対しArイオンの入射がきわめて少ないため、従来方式に比べ1/3以下というローダメージが実現する。


写真10 RAMカソード(京浜ラムテック)
 同社はこのRAMカソードユニットをスパッタリング装置メーカーへ納入する格好だが、将来的にはテスト用スパッタ装置のリリースにもトライ。さらに、ターゲット利用率を高めるため、左右のターゲットを円筒形にして円回転させながら成膜するロータリースパッタ装置も開発中だという。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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