STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。

イノベーション・ジャパン2015(8月27〜28日)


イノベーション・ジャパン2015 新たな酸化物半導体や液体Siが脚光

 8月27〜28日、東京ビッグサイトで開かれた「イノベーション・ジャパン2015-大学見本市」。大学が主役という性格から従来の発想にとらわれない斬新なデモが相次いだように感じた。エレクトロニクス関連のWhat's NEWをピックアップする。

 新たな酸化物半導体In-Si-Oを紹介したのが工学院大学。コンベンショナルなDCスパッタリング法によりアモルファス膜が成膜可能で、成膜温度もRT〜300℃と比較的低い。もちろん、ITO用エッチャントでウェットエッチング、また塩素系ガスでドライエッチングすることができ、アモルファス構造のためファインエッチングが可能だ。


図1 スパッタ成膜時の酸素分圧と電気伝導率の関係


写真1 In-Si-OとAuソース/ドレインを成膜・パターニングしたPETフィルム

 SiO2膜付きシリコンウェハー基板上にメタルマスクスルースパッタリング法で成膜&パターニングした後、Au膜をメタルマスクスルー蒸着してソース/ドレインを形成したテスト素子を作製。その特性を評価したところ、キャリアモビリティは32cm2/V・sが得られた。いうまでもなく、これは代表的な酸化物半導体であるIGZO-TFTの3倍に当たる。また、ON/OFF電流レシオは5×109、Vthは0V、SSファクターも0.29V/decと高い特性が得られた。つまり、ファンメンタルズでコンベンショナルな酸化物半導体に匹敵する特性が得られる。

 しかし、最大の特徴はスパッタリング成膜時の酸素分圧に鈍感なこと。これは、添加剤であるSiは本来酸素保持力が高いためである。図1は酸素分圧と電気伝導率の関係を比較したもので、IGZOは酸素分圧に敏感でシビアにプロセス条件を管理する必要があるのに対し、In-Si-Oは酸素分圧に鈍感で電気伝導率の変化が小さいことがわかる。これは、とくに大型マザーガラス基板でユニフォミティの高いTFTアレイが容易に作製できることを意味する。また、膜表面もノンセンシティブな傾向にあるため、エッチング保護膜レスのシンプルなバックチャネル構造が適用できるという。

 まだトランジスタ素子を作製した段階に過ぎないが、初期のバイアスストレステストではIGZO-TFT並みの安定性があることを確認。今後、ロングタームスタビリティ評価を経て、上部に載せる駆動デバイスも作製する予定だ。ちなみに、写真1はPETフィルム上に作製したサンプルで、フィルムの耐熱温度でも良好なアモルファス成膜が成膜できることをアピールしていた。

CVD膜とほぼ同等の特性を誇る液体Si膜が

 他方、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は独自開発した液体Si材料をアピールした。ベース組成は図2の通りで、Si膜を成膜する場合、シクロペンタシラン(CPS)にデカボランと白燐をドープした材料を出発材料にして光関環重合によってポリシランを合成。これにバインダ、可塑剤、溶剤などを加えてインク化した。そして、この液体Siインクをスピンコート法やインクジェットプリンティング(IJ)法で基板上に塗布し、焼成した。この際、焼成温度と焼成時間によってアモルファス膜、多結晶膜、単結晶膜と用途に応じてグレイン状態を選択することができる。さらに、焼成時においてレーザーを局所照射することによって基板温度を400℃程度に抑制することに成功した。

項目
液体Si膜
CVD膜
屈折率(@589nm)
4.57
〜4.6
膜密度(g/cm3)
2.22
2.2〜2.3
バンドギャップ(eV)
1.62
1.6〜1.7
スピン密度(cm-3)
5×1015
〜1×1015
酸素濃度(cm-3)
2×1018
<1019
炭素濃度(cm-3)
2×1018
<1019
光導電率(S/cm)
1.1×10-5
>1×10-5
暗導電率(S/cm)
5.3×10-12
<1×10-11

表1 a-Si膜の特性比較


図2 液体Siのベース組成と材料群

 表1はアモルファス膜の特性で、コンベンショナルなプラズマCVD成膜した膜とほぼ同等の特性が得られることがわかる。気になるキャリアモビリティは多結晶膜で100cm2/V・s強、単結晶膜で800cm2/V・sクラスが得られた。

 このため、スピンコート法で液体Si活性層を成膜した薄膜太陽電池と、IJ法で活性層をダイレクト成膜&パターニングした低温poly-Si TFTを作製。これらのデバイスも正常に動作することを確認した。なお、液体Siインク自体は本来粘性が高くゲル状に近いため、IJ法でもノズル目詰まりは発生せず、40μmラインと比較的ファインラインが問題なく描画できる。

室温&大気中で燐光発光を示す有機蛍光体を発光インクに


写真2 長寿命発光インクの色変化
    左がUV照射時、右がUV照射を停止し数秒経過した状態

 東京農工大学は、まったく新しいコンセプトに基づく長寿命発光インクを紹介した。主材料は室温かつ大気中で燐光発光を示す単一系ポリマー。つまり、有機ELで用いられるIr系を用いた有機金属錯体ではなく、メタルフリーの共重合体ポリマーである。分子構造は公開していないが、メインチェーンに色素などのサイドチェーンをつけることによりさまざまな色を発光させることができる。発光の励起源は365nmなどのUV光。すなわち、燐光発光を示すポリマー蛍光体というとイメージしやすいかもしれない。

 周知のように、燐光有機ELではmsecオーダーという短寿命の燐光を用いるが、この発光インクは数秒と発光持続時間が長いため、別の付加価値をつけることができる。つまり、複数の色のインクを混合すると、時間の経過とともに色を変化させることができる。写真2はそのデモで、UV光を照射すると青色で発光し、UV光を切っても発光が数秒間持続。この後、無励起状態では本来の黄色が観測される仕組み。無機化合物を用いた蓄光材料をリプレースする狙いで、発光印刷ポスター、偽造防止印刷物・カード、玩具、調光といった用途を想定している。

発光層をIJ法で塗り分けた塗布型調色/調光型有機ELデバイスが登場


写真3 塗布型調色/調光有機EL照明デバイス

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のブースでは、パイオニアと三菱化学が直前にプレス発表した塗布型調色/調光型有機EL照明デバイスを披露した。調色/調光型有機ELはマトリクスディスプレイのようにピクセル(画素)概念に基づいたデバイスで、ピクセルをRGBサブピクセルに分割して調色・調光(明度、彩度)する。ここでいう調色とは、駆動制御によってデバイス面全体が任意の色に変化することを指す。つまり、白色からオレンジ、ピンク、ブルーなど表示したい色を任意に変化させることができる。ただし、パッシブマトリクスディスプレイのように場所によって色を制御できるわけではないため、一方の電極(通常はカソード)はパターニングする必要がなく、さらにそれぞれの色のサブピクセルは一括でグレースケールを制御する。

 今回のデバイスはRGB発光層をインクジェットプリンティング法でパターニング。RとGは高効率な燐光材料、Bは蛍光材料を用いたとみられる。発光効率は30〜40lm/Wと量産中の塗布型白色固定デバイスとほぼ同等。2016年初めから量産出荷を開始する予定だ。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。ステラ・コーポレーション 電子メディア部が撮影して掲載した写真の著作権はステラ・コーポレーションに帰属します。

ステラ・コーポレーションでは測長&外観検査装置のローコストモデル「LSTシリーズ」もラインアップしています。