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ライティング・ジャパン2013(1月16〜18日)


ライティング・ジャパン2013 次世代照明デバイスとして有機ELが存在感をアップ
CNTフィールドエミッションランプも次々世代照明デバイスに名乗り

 1月16〜18日、東京ビッグサイトで開催されている「ライティング・ジャパン2013」。次世代照明デバイスとしてオーソライズされてきた有機ELを中心にトピックスをレポートする。


写真1 和室用有機EL照明ユニット(パナソニック出光OLED)

 まず有機EL照明デバイスでは、デバイス専業メーカーのパナソニック出光OLEDが存在感を誇示。100×100o、150×50o、200×50oサイズの有機EL照明デバイスを展示、いずれも色温度4000Kと5000Kを用意するなど豊富なラインアップを揃えていることをアピールした。デバイス構造は青色蛍光ユニット、赤色燐光ユニット、緑色燐光ユニットをスタックしたRGB3波長のマルチユニットタイプで、発光効率は30lm/W、寿命(初期輝度比70%)は1万時間以上を確保した。ブースでは写真1のように100×100oデバイスを48枚使った和室用照明ユニットも提案。今後、用途開拓を本格化する姿勢を示した。

新たな有機EL照明デバイスメーカーが

 一方、新興メーカーのイー・エル・テクノもプレゼンスを誇示。同社は2010年4月に設立されたベンチャー企業で、昭和電工や平田機工などが株主として名を連ねる。母体は世界で初めてアクティブマトリクス駆動有機ELディスプレイを量産した三洋電機の有機EL部隊で、熊本県合志市に有機ELデバイス専用工場(熊本事業所)を建設。昨年3月に320×320oマザーガラス対応の試作ラインを立ち上げた。ITOアノードの成膜から封止までデバイスを一貫生産できるのが特徴で、スパッタリング装置や各種ウェット装置は投資額を抑えるため中古装置を導入。新規購入した蒸着装置はガラス基板をインライン搬送しながら下部に設置した面型蒸着源から面状で材料を蒸着するニューシステムで、蒸着源〜基板間のディスタンスを300o程度に縮小。このため、蒸着材料の利用率は30〜50%に達するという。


写真2 有機ELで光るグラスコースター(イー・エル・テクノ)

 デバイスはRGB3波長ながらシングルユニット構造を採用。つまり、青色発光層と赤色&緑色の共蒸着発光層をスタックしたもので、マルチユニット構造に比べローコストで製造できる点を強調。封止方法も薄型の固体乾燥剤を貼り付けたフラットガラスで封止するなどコスト競争力が高いことをアピールしていた。

 現在サンプル出荷しているのは50×150oと100×100oデバイスで、輝度は3000cd/m2、発光効率は30〜40lm/W、演色性はRa=80、寿命(初期比70%輝度)は1万時間以上(@1000cd/m2)と実用的なスペックを確保。ブースでは写真2のようにグラスコースターを有機ELで点灯させるなど有機ELならではというデモを敢行していた。

次々世代照明デバイスとしてCNT-FELが登場

 ここにきて有機ELが次世代照明デバイスとして認知されつつあるなか、次々世代照明デバイスとして登場してきたのがフィールドエミッションランプ(FEL)。FEL自体はこれまで学会でも何度か報告されてきたデバイスだが、今回、東北大学とDOWAホールディングスはカーボンナノチューブ(CNT)エミッタを用いたFELを初めて公開した。

 デバイスはカソードライン上にCNTエミッタを設け、1oのギャップを介してエミッタから電子をアノード基板上に引き出して蛍光体を励起して発光させる仕組みで、加速電圧は3〜4kVということから中電圧型FELといえる。最大の特徴は、高品位なシングルウォールCNT(SWCNT)エミッタがユニフォミティよく形成できる点にある。ここでいう高品位とは欠陥が少なく結晶性が高く、かつピュリティが高いことを指す。さらに、このバルクSWCNTをペースト化し、基板上にスクリーン印刷して焼成することによってユニフォミティの高いエミッタを実現した。周知のように、CNTエミッタは基板上に印刷後、レーザー照射やサンドブラスト処理によって起毛させるのが一般的だが、今回の試作デバイスはこうした起毛・配向処理が不要で、簡単な活性化処理を行っただけだという。詳細はノウハウらしく明らかにしなかったが、ライトエッチング処理などによって膜表面を削り、CNTの“頭”を出すようだ。つまり、配向処理レスだが、それでもしきい値電界1V/μmと高いエミッション特性が得られる。


写真3 真空チャンバ内で発光させたCNT-FEL(東北大学、DOWAホールディングス)

 気になる発光効率は現時点では40lm/W程度。このレベルではとても次々世代照明デバイスといえないのではと質問したところ、説明員は「今回はすべて手作りといっていいので、このレベル。今後、機械処理によるプロセス条件を最適化すれば190lm/Wも見込める」と回答。一方、寿命特性は500時間後の輝度低下が9%と実用レベルに近いという。

 ところで、今回ブースで公開したのは写真3のように真空チャンバ内で発光させたデバイスで、スタンドアローンの40×40oデバイスの発光デモはなかった。この点について説明員は「今回は電源の不具合いによりスタンドアローンデバイスの発光デモができなかっただけで、試作ではスタンドアローンデバイスでも発光を確認済み」とのこと。さらに、写真3からわかるように、小型サンプルでもやはり発光ユニフォミティは低く、いわゆる“ミジンコ現象”がみられた。こちらもプロセスの最適化により改善のメドがついているという。

 そして、何より気になるのはそのアプリケーションだが、配布された資料ではフラット照明器具、絵画やポスターのバックライトと一般的な表現にとどまる。当然、面光源なので有機ELと正面からバッティングするため、スペックや技術の成熟度から考えるとこれら本丸の舞台で競争するのは難しいように感じた。このため、超高輝度照明などFELの特徴が活かせる用途を新たに開拓する必要がありそうだ。

 ちなみに、事業化形態については照明デバイスメーカーとタイアップしたい考え。つまり、東北大学とDOWAホールディングスが要素技術を照明デバイスメーカーに供与するスタイルを想定している。

日本電気硝子が有機EL向けでトピックスを連発


写真5 極薄ガラス基板を用いたフレキシブル有機EL照明デバイス

写真4 ITO膜付き極薄フレキシブルガラスロール

 部材関連では、日本電気硝子がレーザー封止用ガラスペーストを紹介した。鉛フリーガラスペーストをデバイスの周囲にディスペンス塗布し両面ガラス基板を貼り合わせた後、半導体レーザービームをシール部に局所的に照射してガラスペーストを溶融・固化させるプロセスで、ガラスペーストはガラス基板とマッチするよう熱膨張係数を調整。20o/secクラスと高速で処理可能だ。ただ、メインターゲットは有機EL照明デバイスではなくモバイル機器用有機ELディスプレイだという。

 同社はいまや各種展示会でお馴染みになった超薄板フレキシブルガラスロールも展示。今回は成膜メーカーと協業して作製したITO膜付きフレキシブルガラスロールを披露、ITO膜もRoll to Roll方式で成膜できることを示した。さらに、写真5のように板厚50μmのフレキシブルガラスを用いた有機EL照明デバイス(LG Chemical製)も披露するなど、その量産採用も時間の問題となっていることを印象づけた。

 

 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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