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FPD International 2012(10月31日〜11月2日)


FPD International 2012 高精細パネルでジャパンディスプレイが存在感を誇示
半導体エネルギー研究所は独自の結晶性IGZO-TFTをアピール

 10月31日〜11月2日、パシフィコ横浜で開かれた「FPD International 2012」。自他ともに認める日本で最大のFPD展示会だが、今年は出展社数が激減。Samsung、LG Display、AU Optronics、Chimei Innoluxといった韓国・台湾メーカーの出展がなく、日本メーカーも1か月前に開かれたCEATEC出展組を中心に出展を見合わせるFPDメーカーが相次いだ。こうした情勢を受けてか、製造装置メーカーや部材メーカーといったインフラメーカーの出展も激減。果たして来年開催できるのだろうかという疑問すら感じた。

 冒頭のように、FPDメーカーは韓国、台湾メーカーがすべて出展をとりやめるという異常事態に。日本メーカーもパナソニック、ジャパンディスプレイ、NLTテクノロジー(旧NEC液晶テクノロジー)が出展しただけ。さらに、種類別でもE-Inkをはじめとする電子ペーパーメーカーも出展せず、ここにきて市場拡大機運が盛り上がっている電子ペーパーが展示会場では見られないという事態。このため、パネルメーカーのブースは数えるほどだった。


写真2 110型4K2K TFT-LCD(CSOT)

写真1 55型4K2K TFT-LCD(CSOT)

 そうした情勢もあって、まずとりあげるのが中国のShenzhen China Star Optoelectronics Technology(CSOT)。2011年12月に第8世代生産ラインでTFT-LCDの量産を開始した新興メーカーで、28型以上のテレビ用パネルに特化。もちろん今回が日本初出展で、28型、32型、37型、46型、48型フルHDパネル、そして4K2K(3840×2160画素)の55型、110型パネルを展示した。55型4K2KパネルはエッジライトLEDを用いた薄型設計で、中国メーカーとしてはかなりの出来栄え。一方、“World's Largest 4K2K”と銘打った110型パネルは直下型LEDバックライトを使用。ローカルディミングとスキャンバックライトを用いることによりコントラスト4000:1を実現したが、見た目の印象は色純度が低くコントラストもスペック以下に感じた。

 CSOT以外では、パナソニックがテレビ用大型パネルを展示。こちらはCEATEC出展時の延長線上で、103型PDPと4K2K対応TFT-LCDを披露。とくに目ぼしいテクノロジートピックスはないように感じた。

ジャパンディスプレイは高精細パネルをPR


写真4 2.3型フルHD低温Poly-Si TFT-LCD


写真5 4.5型有機ELD


写真3 5型フルHD低温Poly-Si TFT-LCD

 スマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及によってここにきてFPDの主役に躍り出てきた中小型パネルでは、今年4月にソニー、東芝、日立製作所の統合会社としてスタートしたジャパンディスプレイが存在を誇示。とくに目立ったのが低温Poly-Si TFT-LCDによるハイレゾリューション性で、スマートフォン用5型フルHDパネルを披露。その解像度は443ppiで、もちろんスマートフォン用では世界最高解像度に当たる。さすがにこの解像度だけに画質もパーフェクト。厚さ1.4o、額縁1oとスリム&コンパクト設計なのも魅力だ。茂原工場に低温Poly-Si TFT-LCDでは世界最大の第6世代対応ラインを導入中で、2013年から量産するとのこと。

 同社は解像度651ppiの2.3型ワイドXGAパネルも公開。もちろんすべてのパネルのなかで世界最高解像度で、文字を表示してもドットによるシャギーのない活版印刷並みの表示クオリティが得られる。ただ、こちらはまだ製品化計画は未定だという。

 さらに、同社は4.5型326ppiのアクティブマトリクス駆動低分子有機ELディスプレイも披露。白色EL発光+カラーフィルター(CF)方式のフルカラーパネルで、RGBにホワイトを加えたRGBWドット構成によってローパワー化。コントラストも1万:1以上を確保した。ただ、見た目の印象は色純度、コントラストとも不足気味に感じた。同社のテクノロジーベースは前記の3社だけに、これまでの開発経緯を考えると白色EL+CF方式には違和感を感じるが、説明員は「今回はハイレゾリューション性をアピールするため、高精細化に有利な白色EL+CF方式にした。もちろん、従来のRGB独立発光方式パネルも製造可能」とコメント。要求される仕様によってカラー化方式を使い分けることを示唆した。

CAAC-IGZO-TFT駆動有機ELDを披露

 今回、FPDメーカーに代わって俄然主役ともいえるプレゼンスをみせつけたのが半導体エネルギー研究所。シャープと共同開発した新たな酸化物半導体CAAC-IGZO(C-Axis Aligned Crystal-In-Ga-Zn-O)を大々的にアピールしたもので、CAAC-IGZO-TFT駆動の有機ELDとLCDを公開した。


写真7 3.7型フレキシブル有機ELD

写真6 13.5型4K2K有機ELD

 有機ELDは13.5型4K2Kパネルと3.4型326ppiフレキシブルパネル(540×960画素)を展示。どちらも白色EL+CF方式によるトップエミッションパネルで、前者は326ppiというハイレゾリューションとNTSC比90%以上という色再現によってLCDを凌駕するハイクオリティを実現した。有機ELDで問われる動作信頼性は単結晶ライクなCAAC-IGZOにより低温Poly-Si TFTレベルだという。

 後者はプラスチックフィルムをサブストレートにしたフレキシブルパネルで、厚さを0.05oに薄型化して曲率半径10oを実現した。What's NEWはその製造方法で、まずキャリアガラス上に剥離層としてメタル膜をスパッタリング成膜。この後、CAAC-IGZO-TFTを通常プロセスで作製した後、レーザー照射ではないある方法でキャリアガラスからデバイスをリリースし、最後に接着剤によってプラスチックフィルムにラミネートする。剥離層にメタルを用いたのは耐熱性が高いため。ただ、上記のようにプロセスの詳細が不明なため、優れたメソッドかどうかは判断がつかなかった。

CAAC-IGZO-TFTの特徴を活かした目にやさしいディスプレイを


写真8 6.05型TFT-LCD

 一方、TFT-LCDはCAAC-IGZO-TFTの特徴を活かした“目にやさしいディスプレイ”を提案した。周知のように、通常のディスプレイは1秒間に60枚の画像を書き換えて表示し、これを一つの絵として認識する。このため、長時間見ると目が疲れやすくなる。いうまでもなく、目にやさしいのは紙の情報や静止画である。そこで、静止画を表示する際は書き換え回数を減らして目への負担を減らそうという趣旨である。つまり、静止画表示時は例えば書き換え頻度を5秒に1回といった具合いにする。これを通常のa-Si TFTや低温Poly-Si TFTで行うとOFF電流が大きいために画素リークが発生し、輝度が維持できずにフリッカーが生じやすくなる。これに対し、IGZO-TFTは元来OFF電流が10-22A/μmと桁違いに小さいため、こうした書き換え・表示周期を長くすることができるわけである。

 今回披露したサンプルは6.05型XGA TFT-LCDで、写真8のようにゲートドライバの消費電力をリアルタイムで表示。画像書き換え時以外はゼロパワーで表示を維持できるデモを敢行した。さらに、このサンプルでは目に有害な波長である420nmの青色成分をカットしたバックライトを使用。より目にやさしいe-bookやタブレット端末が実現するとしている。

  ちなみに、注目されるCAAC-IGZO膜の成膜方法について説明員は「一般的な成膜法」と回答。コンベンショナルなDCスパッタリング法であることを示唆した。ではC軸配向に結晶化させるにはという問いに対してはノーコメントだったが、「成膜前のプリトリートメント工程や成膜後のアニール工程を工夫しているのか」と質問したところ、「詳細はいえないが、そういうイメージです」とのことだった。

日本精機が有機EL照明デバイス市場に名乗り


写真10 インテリア栽培プラント(日本精機)

写真9 有機EL照明デバイス(日本精機)

 有機EL照明デバイスでは、車載用パッシブ有機ELDを量産している日本精機がニューフェースとして名乗りを挙げ、300×400oマザーガラス対応ラインを導入し量産体制を整えたことを表明した。標準モデルとして90×90o(発光エリア77×77o)、140×38o(126×25o)、280×37o(272.2×24.1o)をラインアップ。いずれも輝度はマックス3000cd/m2、演色性はRa=80で、輝度半減寿命は3万時間以上だという。他社製品に比べ目新しい技術やスペックはないが、説明員は「パッシブ有機ELD量産技術を活かして量産体制を築いた点が強み」とコメント。コスト競争力が高いことを強調していた。

 ユニークだったのは、植物プラントに有機EL照明デバイスを採用するという提案。その名のとおり有機EL照明によって植物を育成する仕組みで、同社の有機EL照明デバイスを試験採用しているNASコーポレーション(熊本県合志市)とクニミヒューマンECO(宮崎県日向市)のインテリア栽培サンプルを展示。鑑賞しながら食べられる野菜が栽培できる家庭用鑑賞ユニットと、業務用の栽培プラントユニットを紹介した。数ある照明デバイスのなかでなぜ有機ELなのかという疑問に対しては、@薄型のため省スペース、A面光源のため近接照明でも輝度ユニフォミティが高い、B照射波長、形状、サイズの選択自由度が高い、という特徴があるためだという。とくに、栽培する植物に最適な波長を選択できることは業務用プラントに有効で、展示サンプルでは白色デバイスに加え、R、G、B、オレンジに色を固定したデバイスも設置。有機ELならではという特徴を効果的に演出していた。

世界最大のシームレス偏光板が登場


写真12 超薄板積層マザーガラス基板(AGC)

写真11 世界最大の偏光板(日東電工)

 部材関連では日東電工がWhat's NEWを演出。最大130型の超大型偏光板を披露した。つまり正真正銘のシームレス偏光板で、TFT-LCDのサイズ限界を排除した点をアピール。ただ、ここにきて液晶テレビの大型化は沈静化しているだけに、用途はインフォメーションディスプレイやアミューズメントディスプレイなどを想定しているという。

既存ラインでフレキシブルディスプレイが生産可能に

 フレキシブルディスプレイ関連では、AGC(旭硝子)が厚さ0.1/0.2oのフレキシブルガラスを板厚0.5oのキャリアガラス上に積層した超薄板シートガラスをアピールした。いうまでもなく、ロール状ではなくシート状のため、FPDメーカーは既存の0.6/0.7o厚マザーガラス対応ラインでハンドリングすることができる。もちろん、キャリアガラス〜フレキシブルガラス間にある吸着層によってパネル完成後は容易にフレキシブルディスプレイをリリースできる。ちなみに、この吸着層の材料、そしてリリース方法についてはコンフィデンシャルとのこと。

フィルム同志の常温接合に成功


写真13 常温接合した2枚のPENフィルム(ランテクニカルサービス)

 FPDとは直結しないかもしれないが、テクノロジートピックスを提供したのが封止装置メーカーのランテクニカルサービスで、独自のイオンビーム(IB)スパッタリング技術を用いてプラスチックフィルムの常温接合に成功したことを報告した。その作製フローだが、まずプラスチックフィルムをIBスパッタでライトエッチングして表面を活性化した後、Siターゲットを用いてSiOx膜をIBスパッタ成膜する。膜厚は8〜10nmである。続いて、FeをIBスパッタ成膜する。この後、上記プロセスで処理した2枚のプラスチックフィルムを真空チャンバ内で貼り合わせる。この結果、わずか数秒でFe原子がSiOx膜内に拡散するとともに、2枚のフィルム上のFe同志が原子間接合する仕組み。まだ明確なメカニズムは解明できていないが、PET-PETフィルム、PEN-PENフィルム、ガラス-PENフィルムで常温接合を確認したという。

 ブースでは常温接合装置を紹介。デモ機は16インチ対応で、チャンバ内圧力は1×10-5Pa、加圧力は2kg/cm2。まだ出荷実績はないが、接着剤レスが求められる宇宙関連機器、航空関連機器、医療機器向けで引き合いがあるという。FPD関連では今後、フレキシブル有機ELDの剥離層としてIBスパッタを用いた常温接合にトライする考えだ。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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