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Polymer Expo 2012(5月28〜30日)


Polymer Expo 2012 有機系太陽電池の実用化機運がさらに高まる


写真2 色素増感太陽電池で発電した電力で表示するツイストボール型電子ペーパー(RATO、大日本印刷)

写真1 色素増感太陽電池を用いた行灯型パネル(RATO、ソニー)

 5月28〜30日、パシフィコ横浜で開かれた「Polymer Expo 2012-高分子学会設立60周年記念展示会-」。メインエキビジションは大学や研究機関によるポスター発表だったが、企業はブースを設けて高分子関連プロダクトを展示。そのなかから有機系太陽電池を中心にトピックスをレポートする。

 有機系太陽電池で存在感を示したのが有機系太陽電池技術研究組合(Research Association Technological Innovation of Organic Photovoltaics:略称RATO)。東京大学、大阪大学、産業技術総合研究所、ソニー、アイシン精機、JX日鉱日石エネルギー、東レら産学官18団体でつくる技術研究組合で、色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池の実用化を推進中。今回のメインエキジビションは色素増感太陽電池で、ソニーが試作した行灯型コンセプトパネル「Hana-Akari」を披露した。300×300oサイズの太陽電池パネルを側面に配置したもので、日中に発電した電力を使って夜間に行灯として灯す仕組み。写真1のようにデバイス自体は透明なためデザイン性の高い行灯が実現でき、室内光のような弱い光でも発電する。もちろん、その透明性を活かせば窓ガラスにも容易にインストールすることができる。

 RATOのブースでは太陽誘電が試作したプラスチックフィルム基板製色素増感太陽電池も展示。このデバイスで大日本印刷が試作したツイストボール型電気泳動ディスプレイを表示させるデモも敢行していた。

有機薄膜太陽電池で世界最高効率を達成


写真3 有機薄膜太陽電池(住友化学)

写真5 調色型有機EL照明デバイス(住友化学)


写真4 有機EL照明デバイス(住友化学)

 一方、住友化学は同じ有機系でも有機薄膜太陽電池を披露した。P3HT:PCBMバルクへテロ混合層を光電変換層に用いた高分子デバイスで、透明電極、メタル電極以外はウェットプロセスで成膜した。ブースでは200×200oサイズのガラス製デバイスを展示し、写真3のように室内光でもLEDを発光できることをアピールした。また、パネル紹介ではタンデムユニット化した高効率デバイスも紹介。詳細は明らかにしなかったが、上記のP3HT:PCBMシングルセルに、短波長光を吸収する米University of California, Los Angelesの短波長光吸収光電変換層をスタックした。その結果、広い波長領域で光が吸収できるようになり、10.6%と世界最高という光電変換効率が得られた。

 同社は高分子有機エレクトロニクスデバイスとして高分子有機EL照明デバイスも紹介。展示したのは100×100oサイズのライトグリーン、ピンク、スカイブルーデバイスで、高分子発光材料の種類によって60色ものデバイスが作製できる。発光効率は蛍光材料、燐光材料を含め用いる発光材料によって異なるが20〜30lm/Wで、輝度半減寿命も1万時間を確保。また、写真5のように小型サイズながらホルダー型の調色デバイスも披露。こちらは隔壁を設けてピクセルをインクジェットプリンティング法によってRGBにパターニングしたもので、発光色をリアルタイムで変更することができる。なお、これら有機EL照明デバイスの事業化スタンスについて説明員は「自らデバイスとして製品化したい意向はあるものの、現時点では未定」とのことだった。

ゼロ位相差偏光板で視野角&コントラストをさらに改善


写真6 偏光板によるIPS-TFT-LCDの表示比較(日東電工)

 光学関連では、日東電工がIPS(In-Plane Switching)モードTFT-LCD向けのゼロ位相差偏光板をアピールした。偏光板の保護フィルムの一方をゼロ位相差フィルムにしたもので、視野角、そしてコントラストが向上するのが特徴。実際、通常の偏光板を用いたパネルに比べコントラスト100:1以上のエリアが3倍程度広くなるという。写真6のように、ブースでは通常の偏光板付きTFT-LCD、PETフィルム型偏光板付きTFT-LCDとの比較展示を敢行。これらのリファレンスはとくに暗い映像だと斜め方向から見ると画面が白っぽく見えたの対し、ゼロ位相差偏光板付きパネルではそうした現象がみられず、コントラストが高く引き締まった画像が再現できていた。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。