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ライティング・フェア2009(3月3〜6日)


ライティング・フェア2009 有機EL面光源が次世代照明デバイスとしてオーソライズ

 3月3〜6日、東京ビッグサイトで開かれている「ライティング・フェア2009」。次世代照明デバイスとしてLED、そして有機EL面光源が会場を席捲。有機EL面光源のトピックスをピックアップする。


写真1 有機エレ研のブース

 照明用有機EL面光源を展示したのは有機エレクトロニクス研究所、ルミオテック、ローム、パナソニック電工、NECライティングの5者。有機エレ研とルミオテックは直接的な関係こそないものの、山形大学 城戸淳二教授と旧アイメス(現在はロームに技術移転)が共同開発したマルチフォトンエミッション(MPE)技術をベースにしているため、ロームを含め同じグループに系統化できる。さらに、NECライティングは有機エレ研の試作デバイスを照明機器としてアッセンブリーしているため、こちらも同じ系列に属する。このため、純粋にみると有機エレ研&ルミオテックグループとパナソニック電工が競演した格好だ。ただし、パナソニック電工も複数の発光ユニットを直列でつなぐマルチユニット構造をベースにしている。つまり、大型化、高輝度、長寿命が要求される照明用途ではマルチユニット構造が唯一の選択肢に近いことを改めて印象づけた。

カソードをAlからITOに変更し透明デバイスに

 まずは有機エレ研から。驚かされたのは展示デバイスの多さ。写真1のように、ブース自体を「OLED CAFE」と名づけ、計456枚の140×140oデバイスを展示した。青緑色発光ユニットと橙色発光ユニットをCGL(Charge Generation Layer)で直列接続したMPEデバイスがメインサンプルで、天吊り型から床組み込み型、スタンド据置型まで多彩なサンプルを展示。さらに、写真3のように黒色のアクリルボートの背面に有機EL面光源を配置したサインボードも公開。その応用可能性が多彩であることをアピールした。


写真3 サインボード

写真4 発光する窓ガラス

写真2 照明機器への応用例(有機エレ研)

 メインデバイスの輝度は5000cd/m2、輝度半減寿命は1万時間以上。つまり、一般的な照明用途ならすでに実用レベルにある。もちろん欠陥もフリーだ。高輝度化で問題になる輝度ムラも背面に放熱板を実装することにより面内で±5%程度を実現。見た目にもムラは認識できない。

 テクノロジー面でのWhat's NEWは、背面が透けて見える発光ウィンドウ。写真4のように窓枠に140×140oデバイスを多数設置して面光源自体を窓ガラスにするというアイデアで、いうまでもなくアイキャッチ効果は抜群だった。そのテクノロジーだが、カソードに従来のAlメタルに代わってITOを用いたことによって透明化した。もちろん、カソードには電子を注入するという主要機能があるため、有機EL層との界面に電子注入障壁を下げるバッファ層を挿入し、電子インジェクション性を確保した。また、ITOカソードだけでは抵抗が高すぎるため、ITOカソード上にストライプ状のAl補助電極を幅0.5o程度で設けた。もちろん、このディメンジョンならコンベンショナルなマスクスルー蒸着法でも十分ダイレクトパターニングできる。ちなみに、ITOは有機層へのローダメージ成膜性が求められるため、2枚のスパッタリングターゲットを対向配置し基板への負イオンなどの入射をレス化する対向ターゲットスパッタリング法で成膜した。いうまでもなくメタル補助電極は容易に目視できるが、窓ガラスのデザインと考えれば気になるというレベルではない。ちなみに、このアプリケーションでは背面に放熱板が配置できないため、放熱対策についてはデバイス内で工夫しているようで、背面に手を近づけても熱くなかった。

 ところで、展示した試作デバイスはすべてクラスターツール型アップデポジション蒸着装置で作製。歩留まりも90%以上とかなり高く、プロセス条件さえ最適化できれば有機EL面光源は高歩留まりで作製できることを示した。

ルミオテックは厚さ1.9oの薄型デバイスも公開


写真5 照明機器への応用例(ルミオテック)

写真7 高演色性デバイス(ルミオテック)

写真6 高演色性デバイス(ルミオテック)

 昨年、三菱重工業、ローム、凸版印刷、三井物産、城戸教授らによって設立された有機EL面光源事業化準備会社「ルミオテック」は、50×176oの白色デバイスを中心に展示。RGBの蛍光発光ユニットを設けた3段構造のMPEで、輝度は5000cd/m2、電力効率は20lm/W、輝度半減寿命は7000時間以上とハイスペックをマーク。現在、山形県米沢市に工場を建設中のため、今回のデバイスは主要メンバーのロームが本社の研究開発ラインで試作した。ブースでは、バーなどの店舗の照明用など使用形態をおもにアピール。有機ELの演色性の高さを誇示していた。その演色性はRaで85をマーク。高演色モデルでは効率こそ若干低下するものの、Raを90にまで高めた。写真6は高演色性デバイスで、クレヨンと色紙を照らし、その演色性が高いことを示していた。

 また、完成度はまだ低いものの、厚さ1.9oの薄型デバイスも披露。上記の既存デバイスはガラス基板+ジェル状吸湿剤付きガラスキャップ構造のため3.9o厚だが、薄型デバイスは有機EL素子をパッシベーション膜で封止した後、薄型フラットガラスでファイナル封止した。つまり、吸湿剤はレスだ。このため、ライフはまだ実用レベルに達していないという。

 なお、工場は今夏に完成するため、10月から140×140oデバイスのサンプル出荷を開始する予定だ。

ロームはフレキシブルデバイスでオリジナル性をPR


写真9 フレキシブルライト(ローム)

写真8 照明機器への応用例(ローム)

 ロームは自社ブースで写真8のようにファッショナブルな照明デバイスを披露。こちらは150×150oデバイスで、同じ白色ベースでもオレンジ系、ブルー系、グリーン系など発光材料の種類によって多用なニーズに対応できることを示した。輝度は4000〜5000cd/m2で、輝度半減寿命は1万時間以上とのこと。また、100万cd/m2という超高輝度デバイス「B・LIGHT-TILE」も展示。デジタルカメラなどのフラッシュ光源に最適なことをアピールした。

 What's NEWは「フレキシブルライト」と名づけた超薄型フレキシブルデバイス。サイズは50×250oで、厚さはわずか0.3o、重さも1gに過ぎない。詳細は明らかにしなかったが、プラスチックフィルムをサブストレートに用いたもので、有機EL素子を薄膜で封止し、その上にフィルムを貼り付けた。いわゆる固体封止デバイスで、吸湿剤もレス化した。輝度は3000〜5000cd/m2で、輝度半減寿命も5000時間以上を確保した。ユニークだったのは前面に和紙を貼り付けたサンプルで、写真9のように女性が身につけるファッショナブルな腕輪を想定して作製したとのこと。低電圧かつ低消費電力で動作し、さらにフレキシブル化も容易という有機EL面光源の特徴を身近に感じさせるサンプルで、有機EL面光源は従来光源にない新たなアプリケーションを開拓できるということを改めて実感させた。ちなみに、今回のサンプルはMPEではなくシングルユニット構造とのこと。

メタルフォイルで封止し厚さを1oに薄型化


写真10 90×100oデバイス(パナソニック電工)

 冒頭のように、単独で有機EL面光源を事業化する予定のパナソニック電工はRGBそれぞれの発光ユニットを2個、つまり計6ユニットのマルチユニットデバイスを披露した。サンプルは60×70oと90×100oの2種類で、青色はコンベンショナルな蛍光材料、赤色と緑色はIr系燐光材料を用いた。ただ、電力効率は燐光デバイスにしては20lm/Wと低い。輝度半減寿命は1万時間以上で、2013年までに4万時間に高めることを目指している。4万時間という数字は1日10時間使用すると仮定すると、10年というロングライフに当たる。また、演色性はRa=94と業界最高レベルを実現。ただ、色ムラが認識できるなど完成度は有機エレ研&ルミオテックグループに比べ低いという印象は拭えなかった。

 オリジナルテクノロジーとしてアピールしていたのがメタルフォイル封止技術。従来のガラスに代わってマル秘のメタルフォイルで固体封止したもので、デバイス厚を2o強から1o以下と1/2に薄型化した。メタルフォイルによって放熱性も大幅に高まるため、高輝度面光源で必須とされる放熱機構をレス化。よりシンプルかつ薄型機器が実現する。

 焦点となっている量産時期は2011年を想定。まずは自社の照明機器にラインアップする考えだが、デバイスを外販することも否定しなかった。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。