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工学院大学新技術説明会(12月4日)


工学院大学新技術説明会 ITOよりも透過性に優れる透明酸化物導電膜を発掘

12月4日、科学技術振興機構(JST)の主催より開催された「工学院大学新技術説明会」。ここでは、工学部電気電子工学科准教授の相川慎也氏の講演「ITO代替新透明導電酸化物」をダイジェストする。

ドーパントイオン
イオン半径(nm)
ルイス酸強度
 酸素結合解離エネルギー(kJ/mol)
B3+
0.027
10.709
 809
W6+
0.06
3.158
 720
Si4+
0.04
8.096
 799
Sn4+
0.069
1.617
 528
Zn2+
0.074
0.656
 250

表1 ドーパントイオンの特性1)

 同氏の研究グループは元来、TFT用半導体としてイオン半径の異なる材料を添加する研究で知られる。今回のポストITO導電膜もこうした研究の過程で発掘された。そのバックグラウンドテクノロジーはIn2O3ホストにドープするドーパント材料のイオン半径とルイス酸強度で、イオン半径の小さいドーパントをドープすると散乱断面積が小さくなりキャリアモビリティが向上。一方、ルイス酸強度が強いと遮蔽効果が強くなりモビリティが向上する。

 そこで、表1のように各種ドーパント候補のイオン半径、ルイス酸強度、酸素結合解離エネルギーを評価した。その結果、ボロンB3+がイオン半径、ルイス酸強度特性に優れることがわかった。さらに、耐薬品性に直結する酸素結合解離エネルギー特性も高く、膜化した後の安定性も優れることが確認された。

 図1は光透過率特性の比較で、今回のBドープIn2O3膜はコンベンショナルなITO膜よりも10%以上高い透過率特性を示す。一方、RFスパッタリング成膜後のアズデポ状態では比抵抗が1.7×10-3Ω・cmとITO(7×10-4Ω・cm)よりも2倍程度高かった。ただし、成膜後アニールすればさらなる低抵抗化が期待できるという。

 また、既存のITO用エッチャントでウェットエッチングしたところエッチングレートは30nm/minとITO膜とほぼ同等で、残渣もみられなかった。これは、BがIn2O3内に固溶しているためと考えられる。

図1 光透過率の比較1)
 容易に想像できるように、今回のポストITO膜は成膜・ウェットエッチングプロセスともITOと完全なコンパチブル性があるため、今後、基本特性が広く認知されれば、その実用化速度はかなり早いといえそうだ。

参考文献
1)相川:ITO代替新透明導電酸化物、工学院大学新技術説明会資料、pp.17-20(2018.12)

REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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