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材料 新技術説明会(10月30日)


JST材料新技術説明会 150℃低温プロセスで高品位IGZOトランジスタを作製

 10月30日、科学技術振興機構(JST)の主催より開催された「材料 新技術説明会」。ここでは、高知工科大学 環境理工学群教授 古田守氏の講演「フレキシブルデバイスに向けた高品質酸化物半導体の新たな低温形成技術」をピックアップする。


図1 150℃プロセスで作製したIGZOダイオードの特性1)

 研究の狙いはタイトル通り、フレキシブルデバイスに容易に適用できるよう、代表的な酸化物半導体であるIGZO(In-Ga-Zn-O)トランジスタを低温プロセスで作製することにある。いうまでもなく、現在のプロセス温度はIGZO成膜後のアニール工程で300〜400℃に達する。このため、サブストレートにはガラスまたはポリイミドフィルムのような高耐熱プラスチックフィルムを用いる必要がある。今回は比較的安価なPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムが使用できるよう、最高プロセス温度を150℃に低温化することにトライした。

 その手法だが、IGZO膜は一般的なスパッタリング法で成膜。O2ガス(流量1%)に加え、添加ガスをドープすることにより、成膜後のアニール温度を低温化する。おもな欠陥である酸素欠損を抑制するためであり、添加ガスを8%ドープするとキャリア濃度はレスプロセスの1.8×1018cm-3から7.2×1016cm-3と二桁以上も低減した。この結果、欠陥を回復するアニール温度を150℃に低温化できるようになった。

 図1は最高プロセス温度を150℃に抑制したデバイスのトランスファー特性で、PENフィルム製デバイスでもコンベンショナルなガラス製デバイスと同等の特性が得られた。表1は従来の300℃プロセスデバイスとの特性比較で、キャリアモビリティとヒステリシスは若干リファレンスに比べ低いものの、サブスレッショルド特性は0.1V/decとリファレンスを上回る特性が得られた。つまり、150℃という低温プロセスでも高品位酸化物TFTが作製可能で、PENフィルムをサブストレートに用いることが可能になったわけである。

項目
モビリティ(cm2/Vs)
サブスレッショルド特性(V/dec.)
 ヒステリシス(V)
従来技術(300℃)
14.5
0.4
 0.5
新技術(150℃)
13.4
0.1
 0.6

表1 トランジスタ特性の比較1)

 以上が講演の骨子だが、キーポイントである添加ガスの種類や導入方法などは一切明らかにせず、さらに低温アニールでも欠陥が少なくなるメカニズムを示さないなど、聴講者にとっては消化不良の感が残った。

参考文献
1)古田:フレキシブルデバイスに向けた高品質酸化物半導体の新たな低温形成技術、材料 新技術説明会資料、pp.3-6(2018.10)


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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