CEATEC 2025 有機TFT駆動LEDディスプレイや透明光発電ガラスに脚光
10月14〜17日、幕張メッセで開催された「CEATEC 2025」。有機ELや有機TFTを中心に興味深いデモが繰り広げられた。独断と偏見でトピックスを列挙する。
中国のDKEがE-Ink方式電子ペーパーモジュールを大量出展

写真1 28型カラー電子ペーパーモジュール |
まずディスプレイモジュールでは、中国のDKEがE-Ink方式電子ペーパー(マイクロカプセル型電気泳動ディスプレイ)モジュールを大量展示し、そのラインアップを誇示した。同社は2005年に設立された電子ペーパーモジュール専業メーカーで、中国とベトナムに四つの工場を保有。その製品ラインアップは0.97型の小型から42型の超大型まで、モノクロからフルカラー、そしてフレキシブルタイプまでも網羅。写真1はワイドアスペクトの28型カラーモジュールで、LCD並みに鮮やかに見えた。日本では丸文が代理店としてサイネージ向けを中心に販売している。
高移動度有機TFTでフルカラーLEDディスプレイを駆動

写真2 有機TFT駆動LEDディスプレイ |
一方、東京大学発のベンチャー企業「オルガノサーキット」は有機TFT駆動のフルカラーLEDディスプレイを展示、高移動度有機TFTの応用ポテンシャルを示した。用いた有機半導体材料はC10-DNBDTで、独自開発した塗布結晶化法によって1cmレベルにまでグレインをを成長。このため、10cm2/V・s以上というハイモビリティが得られる。
今回披露したのは300×300mm1万画素のフレキシブルパネルで、ガラス基板上にボトムゲート・ボトムコンタクト型有機TFTを形成した後、PENフィルムに転写してフレキシブル化した。LEDディスプレイなのでその輝度は高く、遠目に見る分にはレゾリューションも十分で、軽量サイネージ向けには十分実用可能にみえた。ただ、明欠陥、暗欠陥とも複数みられた。この点について説明員は「欠陥の原因は有機TFTに由来するもので、現在、その発生メカニズムを解明中」だという。
山形大学は簡便な有機EL作製法をアピール

写真3 スプレー塗布法で発光層を形成した有機EL |
毎年、有機デバイスでオリジナルプロポーザルを連発する山形大学は今回、より簡便に有機ELデバイスを作製するテクノロジーをメインにデモした。まずは発光層をスプレー法で塗布成膜する提案で、スプレー塗布によって大面積基板に対応しながら材料利用率を従来のスピンコート方に比べ大幅に削減。写真3のように、ユニフォミティの高い高輝度有機ELが容易に得られる。気になる特性もI-V特性、L-I特性、寿命特性ともスピンコート素子と同等であることを確認。説明員は、「スピンコート法よりも材料コストが安く、しかも手軽に扱うことができる」と強調していた。
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図1 IJ法による絶縁膜のオンデマンドパターン形成イメージ
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一方、手軽に少量のモノカラー有機ELを作製するプロセスとして"オンデマンド有機ELパターニング"を提案。図1のように、透明電極が形成された基板上にUV硬化型絶縁材料をインクジェットプリンティング法で塗布印刷して絶縁層パターンを形成。この後、有機層を蒸着することによって簡易素子を作製する仕組み。絶縁層がある部分は非発光部となるため、これによって文字や図などをモノクロ表示することができる。いわゆるデスクトップマニュファクチャリングツールで、オンリーワンデザインの有機ELが手軽に作製できるとしている。

写真4 透明光発電ガラス |
色素増感太陽電池をベースにした透明光発電ガラスが登場
東京都がベイエリアを舞台に50年・100年先を見据えたまちづくりを推進する「東京ベイeSGプロジェクト」のブースでは、今年度に新たに採択されたプロジェクト3件を紹介。そのひとつとして、inQs(インクス)が独自開発した透明光発電ガラスを披露した。詳細はノウハウのため明らかにしなかったが、ポーラスTiO2層をレス化するとともに増感色素をできるだけ無色化した色素増感太陽電池で、可視光透過率70%以上を達成。見た目にもほぼ透明に見えた。両面受光で発電するため、窓ガラスとして用いれば太陽光と室内光で発電可能。ただ、光電変換効率は1%以下とかなり低いため、リアルタイムでのセンシングなど用途が限られるようだ。
液体金属を用いた超柔軟ガスバリアフィルムを提案

写真5 液体金属を用いたガスバリアフィルム |
横浜国立大学は、液体金属を用いた超柔軟ガスバリアフィルムと伝熱フィルムを提案した。前者はGa-In-Sn液体金属を極薄のTPUフィルムでサンドイッチ封止した構造で、液体金属によってガスバリア性とストレッチャブル性を両立。一般的に測定装置の測定下限未満の高い酸素ガスバリア性と従来の伸縮性材料よりも高い水蒸気バリア性(WVTR:10-2g/m2/day)を確保した。50%伸ばしても初期抵抗はほぼ変化せず、フィルムで保護することにより腐食する懸念もないという。
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