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このコーナーではステラ・コーポレーションオリジナルCD-ROMシリーズをベースに業界用語を解説しています。さらに詳細をお知りになりたい方には以下のCD-ROMをお勧めしています。
a-Si TFT-LCD製造プロセスCD-ROM 低温poly-Si TFT-LCD製造プロセスCD-ROM  有機ELディスプレイ製造プロセスCD-ROM
電子ペーパーの構造と製造プロセスCD-ROM  ZnO酸化物TFT製造プロセスCD-ROM  有機トランジスタ製造プロセスCD-ROM  CNT-TFT製造プロセスCD-ROM


Nd:YAGレーザー

 YAG結晶を製造する過程でイットリウム(Y)を数%のネオジム(Nd)でドープした結晶を用いるYAGレーザー。基本波(第一高調波)は1064nm、第二高調波は532nm(グリーンレーザー)、第三高調波は355nm(UVレーザー)。デバイスの研究開発、リペア、産業機器や医療用機器に広く用いられる。


FET(Field effect transistor)

 電界効果トランジスタはゲート電極に電圧を印加してチャネルの電界により電子またはホールの流れに関門(ゲート)を設けるもので、これによりソース〜ドレイン間の電流を制御する。有機トランジスタもFET原理に基づいているため、FETと称されることもある。


LDD構造(Lightly Doped Drain)

 低温poly-Si TFTにおける代表的なデバイス構造。図のようにイオンドーピングに濃度勾配を設け、チャネルとn+の間に濃度の1桁低いn-の領域(LDD領域)を形成してドレイン電界を小さくする。

 リーク電流の抑制に効果的だが、n-を強固に作りすぎると寄生抵抗となり、トランジスタ特性が低下する。また、2回目のイオンドーピング(高濃度イオン)をセルフアラインで行うことができないため、位置合わせが難しく、ソース/ドレインを同じ幅に形成するにはかなりのテクニックを要する。

 その一方、高速性、信頼性を確保しながらチャネルを細くできるため、画素の開口率を高めることができる。具体的にはシンプル構造であるSD(Single Drain)のチャネル長が4μmであるのに対し、LDDでは1.5〜2μmにシュリンクできる。


オーミックコンタクト

 抵抗性の接触のことで、電流の方向と電圧の大きさによらず、抵抗値が一定の場合を指す。 完全なオーミック接触では、接触界面は純粋な抵抗(R)分だけを持つ。これはオームの法則、つまり電圧Vが係数Rで電流Iに比例するV=RIに従うことを意味するため、こうした界面はオーミックと名づけられている。


ON/OFF電流レシオ

 トランジスタにおける通電状態と遮断状態における電流値の比で、大きいほどスイッチとして優れる。ディスプレイデバイスの場合、106以上が求められ、この値が小さいと多階調における正確な中間色表示ができなくなる。


ON電流
 
  トランジスタをスイッチとして用いる場合に重要な特性値。ON電流は通電時の電流値で、一定値以上でないと実用的なスイッチとしては使えない。


加速試験

 製品を過酷な条件下に置き、意図的に劣化を進めて寿命を検証する試験。TFTでは電圧を長時間連続的に印加してVthシフトなどの特性変化を評価するバイアスストレステスト、有機ELデバイスでは大気環境において高温多湿下で発光特性の変化を評価する寿命評価試験が知られる。


価電子帯

 絶縁体や半導体で価電子によって満たされたエネルギーバンドのことを指す。


関環重合

 環状化合物の環構造を解き、環の解かれた化合物の端同士を結合させることにより重合体とする反応。環状化合物の立体的な歪みをドライビングフォースとして進行するため、原料となる環状化合物は三員環、四員環、七員環以上であることが多く、歪みの小さい五員環化合物や六員環化合物は重合しにくい。


寄生容量

 別名浮遊容量またはストレーキャパシティ(stray capacity)。電子部品や電子回路で物理的な構造に起因する意図しない容量成分を指す。デバイスは回路図上では目的の機能のみを持つ理想的な素子として扱われるが、現実には本来の機能だけではなく、抵抗成分、容量成分、誘導成分などが現れる。また、PCBでは複数の導線パターンが近接していると、それぞれの導線を電極とする微少な容量成分が寄生容量となる。単位はfF/μmで、いうまでもなくこの値が小さいほどいい。


キャリアトラップ

 半導体中で原子や分子が規則正しく並んでいるとキャリアは動きやすく、規則性を乱す欠陥や不純物があるとキャリアが捕えられて動きが妨げられる。こうした欠陥や不純物をキャリアトラップと呼ぶ。


キャリアモビリティ

 トランジスタ特性の代表的な指標。半導体で電気伝導を担う荷電粒子をキャリアと呼び、n型半導体では電子、p型半導体では正孔(ホール)を指す。キャリアが移動する速度をキャリアモビリティという。

 ディスプレイ用TFTのキャリアモビリティは低温poly-Si TFTが100〜400cm2/V・s、酸化物TFTが10cm2/V・s程度、有機TFTが0.1〜20cm2/V・s、a-Si TFTが0.5〜1cm2/V・s程度である。


共重合体ポリマー

 2種類以上の低分子化合物(モノマー)を同時に重合させることで生成するポリマーで、コポリマー(copolymer)とも呼ばれる。


グレインバウンダリー

 日本語では結晶粒界。多結晶体において二つ以上の小さな結晶の間に存在する界面。結晶と別の結晶の間に残された不連続な境界であり、ここに欠陥が発生するとキャリア伝導が阻害される。このため、グレインバウンダリーは少ないほどいい、言い換えるとSiはグレインサイズが大きいほどいい。


黒欠陥(ショート欠陥)

 デバイス上のパターン欠陥で、本来はライン間にスペースがあるべきはずなのに、機能膜そのものの残存や異物などの付着によってライン間がつながってしまっている現象を指す。電極パターンではショート欠陥と呼ばれることが多く、これがひとつでもあると基本的にNG製品となる。このため、レーザービームを局所的に照射して除去するのが一般的である。

※ステラ・コーポレーションではリベア装置「Repair Vision」を製品化しています。


クロストーク

 直訳すると漏話。回路や回線に浮遊容量、寄生容量、アースの共通インピーダンスなどの影響により、不必要な信号が漏れることを指す。ディスプレイデバイスでは隣接画素への光漏れ、混色によるコントラストの低下、3D表示時において一方の眼(例えば左眼)に映すべき画像がもう一方の眼(右眼)にも認識されてしまう現象なども、広義でクロストークといわれる。


結晶性

▲Siの結晶性イメージ

 Si膜をはじめ半導体膜はその結晶性がデバイス特性に大きな影響を及ぼす。例えばa-Siは図のように不規則に配列しており、電子・ホールのポテンシャルエネルギーも不規則に分布している。キャリアはこの不規則なポテンシャル中を進まなければならないため、キャリアモビリティは遅くる。これに対し、poly-Siは結晶粒のなかでは単結晶と同じ立方晶状であるため、キャリアは規則的な周期ポテンシャルのなかを自由に動き回ることができ、結果的にモビリティが向上する。


結晶方位

 多結晶材料中に存在する各結晶粒の結晶格子の向き。


固相結晶化(SPC:Solid Phase Crystallization)

 非晶質を結晶化する方法で、固体のまま溶かさずに結晶化する。結晶化した膜の結晶性は対峙する溶融結晶化に比べ劣る。高温poly-Si TFTの結晶化プロセスで用いられる。


サブスレッショルドスロープ

 電流量が1桁増えるのに必要なゲート電圧。サブスレッショルド係数、サブスレッショルドファクター、SSファクターとも呼ばれる。単位はV/decadeで、この値が低いほど電流の立ち上がりが鋭くスイッチング特性が高い。キャリアモビリティ、ON/OFF電流レシオ、Vthと並ぶトランジスタの重要特性のひとつ。


SAM(Self-Assembled Monolayer)

▲ODS ▲OTS ▲HMDS

 有機TFTでは有機半導体の結晶性・配向性を高めるため、有機半導体膜を成膜する前にSAMによって配向処理するのが一般的である。SAM材料としてはフッ素化アルキルシラン、OTS(オクタデシルトリクロロシラン)、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、ODS(オクタデシルトリメトキシシラン)などが知られ、これらをゲート絶縁膜をはじめとする下地上に減圧成膜もしくは塗布する。


酸素欠損

 金属酸化物において酸素が抜けた結晶の欠陥を指す。IGZO-TFTをはじめとする酸化物TFTでは酸素欠損の発生を抑制するため、不活性ガスであるArに加え、O2ガスをパージして酸化物半導体膜を成膜する。また、IGZO半導体膜はO2ガス流量(5〜10sccm程度)によって電気導電性を制御する。


酸素分圧

 大気中に含まれる酸素の圧力。エレクトロニクスデバイス製造プロセスでは酸化物などのスパッタリング成膜条件のひとつで、とくに酸化物半導体では酸素分圧によって電気伝導率などの特性が変化しやすいため、シビアに管理する必要があるとされる。


CAAC(C-Axis Aligned Crystal)

 既存のアモルファスIGZO(In-Ga-Zn-O)に代わる新たな酸化物半導体。その名の通り、C軸配向に結晶化させた単結晶ライクなIGZOで、動作信頼性は低温poly-Si TFTレベルといわれる。その結晶性から膜構造がアモルファスに比べ強靭で、この結果、エッチング保護膜をレス化することもできる。ソース/ドレインメタルのエッチング時にもダメージが少ないためで、TFTをよりシンプルストラクチャーのバックチャネル構造にすることができる。したがって、チャネル長が数μmと短く、よりスモールなTFTが実現する。これは、いうまでもなくTFT-LCDやボトムエミッション型有機ELDの開口率が向上することを意味し、性能面でも優位性があるといえる。


仕事関数

 物質表面において1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギー。この時、表面上の空間は真空とする。有機ELデバイスなどの無機金属電極ではこれがキャリアの注入特性、フィールドエミッションデバイスのエミッタではエミッション特性を決める。


▲CGSの結晶構造

CGS(Continuous Grain Silicon)

 CGS(Continuous Grain Silicon)は半導体エネルギー研究所とシャープが共同開発した多結晶シリコンで、図のように結晶方位がそろっているため、一般的な低温poly-Si TFTに比べキャリアモビリティが高いのが特徴。CGS-TFTの構造は基本的に低温poly-Si TFTと同じだが、a-Siプリカーサ膜の結晶化法としてはNi触媒を用いて結晶化する通称MILC(Metal-Induced Lateral Crystallization)法が用いられるようだ。


CW(Continuous Wave)発振

 レーザーの発振動作で、一定の出力を連続して発振する方法。


白欠陥(オープン欠陥)

 デバイス上のパターン欠陥で、本来はつながっているべきラインにスペースが発生してしまっている現象を指す。電極パターンではオープン欠陥と呼ばれる。電極パターンではこれがあると即NGとなるが、絶縁層や電極間のチャネルなどでは致命的欠陥にはならない場合もある。リペア方法はピンやディスペンサによるリペア材料のスポット照射、またCVD(Chemical Vapor Deposition)方式による局所成膜法などが知られるが、いずれにしてもこれらオープン欠陥をリペアした後、その周囲をレーザー照射によって正確にカットするトリミング処理を行う場合が多い。

※ステラ・コーポレーションではリベア装置「Repair Vision」を製品化しています。


ZnO系酸化物半導体

 酸化物半導体材料はIn-Ga-Zn-O(IGZO)、ZnO、ZnON、In-Sn-Zn-O(ITZO)、ZnO-SnO2(ZTO)、Al2O3-ZnO-SnO2(AZTO)、HfInZnO(HIZO)などが知られる。先行したのは東京工業大学の細野秀雄教授が発掘したIGZOで、その後、相次いでZnO系酸化物半導体が発表され、近年の酸化物半導体ブームにつながっている。

▲酸化物TFTの構造例(エッチングストッパー型)

 また、2011年には新たな酸化物半導体としてIGZOからZnを外したIGO(In-Ga-O)が登場。そのイニシャル特性・安定性はIGZO以上といわれ、ポストIGZOとして注目を集めている。さらに、2012年にはIn2O3にWOxをドープしたIWOが透明なアモルファス酸化物半導体として機能することがわかり、高価なGaレスの酸化物半導体として注目を集めつつある。

 これらZnO系酸化物半導体を用いた酸化物TFTはキャリアモビリティをはじめとする基本特性はa-Si TFTと低温poly-Si TFTの中間に位置する。そのキャリアモビリティは10cm2/V・sec以上で、ON/OFF電流レシオも106以上が得られる。このため、ゲートドライバ回路、データドライバ回路をガラス基板上にビルトインすることも可能で、この結果、外付けのドライバICが不要になりコストダウンできるほか、狭額縁化も容易になる。また、総じてVthシフトも少ない。つまり、この時点ですでにディスプレイデバイスに適用可能なポテンシャルを備えている。

 さらに他のアクティブ素子にない特徴が二つある。ひとつは、ほとんどの酸化物半導体がアモルファス構造で低温成膜できること。これらは、トランジスタバラつきが少なく大型基板に適していること、また柔軟性と低温プロセスが要求されるフレキシブル基板製ディスプレイ、つまりフレキシブルディスプレイに適していることを意味する。さらに、サブストレートにガラス基板を用いる場合も安価なソーダライムガラスが使用できるというメリットがある。

 もうひとつは、半導体層が透明であること。したがって、電極など他の構造物を透明な材料にすれば比較的容易に透明TFTが実現する。このため、電子ペーパーではフロントドライブ型デバイスが実現。また、LCDに用いればパネルの開口率が向上しバックライト光の取り出し効率がアップしたり、トランジスタサイズをさほど微細化しなくてもいいといったメリットが出てくる。

 そのほか、既存のTFT材料・プロセス技術が流用できることもアドバンテージだ。これは、とくに各レイヤーがセンシティブなため新たなプロセス技術開発が必要となる有機TFTに対して大きな優位点といえる。ZnO系半導体材料もここにきてターゲットやタブレットが製品化され、コンベンショナルなスパッタリング法で成膜できることが実証されている。

 いずれにしてもその前途は極めて有望で、当面の最有力用途として@有機ELディスプレイ、A超大型高速駆動TFT-LCD、Bフレキシブルディスプレイ、C狭額縁の高精細中小型TFT-LCD、の四つが挙げられる。@とAはコンベンショナルなa-Si TFTではキャリアモビリティの限界からこれらをドライブするのが難しいためである。とくに、Aを時分割グラスフリー方式で3D化すると480Hz駆動クラスの高速駆動が求められ、モビリティは5cm2/V・sクラスが必要になる。いうまでもなく、a-Si TFTのモビリティは0.5〜1cm2/V・sに過ぎない。また、@では現在低温poly-Si TFTが用いられているが、大型マザーガラスで均一なpoly-Si膜を得るのは難しく、結果的にVthがばらついてしまう。このため、輝度ムラが大きくなり、パネルを大型化するのが難しい。これに対し、IGZO-TFTはモビリティが10cm2/V・s前後と高く、さらにアモルファス構造の場合は大型基板でもユニフォミティが高いという利点があり、これら@とAの最新ディスプレイのTFTに適しているといえる。


シングルウォールCNT

 文字通り、単層のCNT(カーボンナノチューブ)。径は10nm以下である。先端が微細なため、フィールドエミッション特性に優れる。その一方、耐熱性が低く400℃前後で熱分解がはじまることが弱点となっている。 また、カイラリティによって金属性CNTと半導体CNTがあり、前者は透明電極、後者はトランジスタの活性層に使用することができる。


ステップ・テラス構造

 分子長に対応した段差構造(ステップ)と分子層からなるテラス状の構造。結晶薄膜の場合、分子スケールで膜が平坦であることを示す。有機半導体膜ではこの構造が観察されると、単結晶または単結晶ライクとみなされる。


SGS(Super Grain Silicon):別名MILC(Metal-Induced Lateral Crystallization)法

 a-Siプリカーサ膜を結晶化する方法のひとつで、とくにアクティブマトリクス有機ELディスプレイのTFT向けに適するとされる。

 一般的に、低温poly-Si TFTはpoly-Siの作製にエキシマレーザーアニール(ELA)を用いるが、a-Siをpoly-Si化する際のレーザービーム強度バラつきがトランジスタのバラつきに直結し、有機ELDでは輝度ユニフォミティに影響する。また、poly-Si膜の表面平滑性が低いため、上部に形成されるゲート絶縁膜の絶縁破壊をもたらす危険がある。そこで、ポストELAとしてMetal-Induced Lateral Crystallization(MILC)、別名SGS(Super Grain Silicon)が開発された。

 プロセスフローは、図のようにまずプラズマCVD法などでa-Siプリカーサ膜をガラス基板上に成膜する。次に、a-Si上にSiNx、SiO2、SiONといったキャップレイヤーを形成する。続いて、Ni粒子やNi-Siをスパッタ成膜する。この際、粒子状でNi原子が入射するが、キャップレイヤーがブロッキングするため、成膜後もNiはシリサイド化しない。その後、400〜590℃でアニール処理をするとNi原子はキャップレイヤーを通過してa-Si膜に到達する。この際、Ni原子は複数が集合してシリサイド化し、グレインサイズが大きくなりa-Siのシードとなる。最後に、再度熱処理またはELA処理するとシリサイド化したNiグレインは他のNiグレインと衝突するまで成長し、a-Siがpoly-Si化する仕組み。poly-Siのグレインサイズは10〜200μmにまで成長させることができる。また、表面平滑性も約1nmと高い。

 ポイントはNi粒子のスパッタリング成膜方法で、このプロセスでpoly-Siのグレインサイズと密度が決まる。通常は基板を移動させながらスパッタリング成膜するため、基板移動速度とNiターゲットへの投入パワー密度が二大プロセスパラメータとなる。つまり、基板移動速度に比例してグレインサイズが大きくなる一方、投入パワー密度に反比例する形でグレインサイズが小さくなる。例えば移動速度を高速化すると基板へのプラズマ照射時間が短くなり、a-Siプリカーサ膜上に達するNiが減る。この結果、核生成のシードが減り、結果的にグレイサイズが大きくなる。一方、投入パワー密度を高めると、スパッタリングされるNi量が増える結果、グレインサイズが小さくなる。このため、グレインサイズを3〜130μmに制御することができる。

 なお、コンベンショナルなELA法に比べグレインの質が落ち総じてモビリティも低下するため、ドライバ回路などの周辺回路をガラス基板上にビルトインする場合はその部分だけにグリーンレーザーなどを選択的に照射するなどの工夫が求められる。

▲プロセスイメージ

スレッショルド(threshold)

 日本語では閾値で、境界となる値。この値を境に上下で意味、条件、判定などが異なるような値を指す。電子回路の高電圧と低電圧の区別、プログラミングの条件判定などでしばしば用いられる概念。例えば、TFTでは動作電圧、ディスプレイでは発光開始電圧などでスレッショルドがよく用いられる。


スレッショドスロープ

 トランジスタにおける電流の傾き(急峻性)の指標。


セルフアライン構造

 自己整合的に性質の異なるエリアが作製される構造・プロセス。低温poly-Si TFTや酸化物TFTなどで工程数を削減したり、アライメントレスのためパターニング精度を高めるためによく用いられる。


セルフアライン構造トップゲート型IGZO-TFT

 周知のように、コンベンショナルなトップゲート構造TFTは寄生容量が大きく、TFTサイズをシュリンクすることが難しいほか、応答性も低下するといった弱点がある。そこで、考案されたのがセルフアライン構造のトップゲート型TFT。あらかじめパターニングした酸化物半導体エリア内にセルフアライン処理によりソ−ス/ドレイン領域を設けるもので、ソース/ドレイン電極とゲート電極の重なりがないため寄生容量がミニマム化でき、結果的に高速動作が容易になる。


セルフアライン構造ボトムゲート型IGZO-TFT

 セルフアライン構造のボトムゲート型IGZO-TFTは、a-IGZO酸化物半導体エリアにソース/ドレイン領域を設ける。つまり、チャネル領域だけを酸化物半導体層に、それ以外を導電層として機能するソース/ドレイン領域にする。

 そのメリットは、まずゲート電極とソース/ドレイン電極の重なり領域がないため寄生容量が少なくなること。もうひとつは、エッチングストッパー層とソース/ドレイン電極のアライメントマージンが不要になるためチャネル長が短くなり、サイズシュリンク効果が大きくなるとともに高速動作が容易になることである。


縦型SIT

 縦型SIT(静電誘導トランジスタ:Static Induction Transistor)はソースとドレインを縦方向に配置し、ソース〜ドレイン間にゲート電極を埋め込んだ有機半導体層を用いるのが特徴。ソース〜ドレイン間に流れる電流をゲート電極に印加する電圧によってコントロールするもので、有機半導体層の膜厚が電流経路になるため、チャネル長を100nm以下に微細化することが容易である。この結果、低電圧動作と高速応答が容易になる。その反面、ON/OFF電流レシオは他の有機トランジスタに比べ大幅に低い。


ダングリングボンド

 Si膜における欠陥。Si原子の未結合手、つまり結合に関与しない部分が残ってしまう現象。対策としては、未結合手にHなど他の元素をくっつけて終端(ターミネート)させるのが一般的である。


TIPSペンタセン

 代表的なp型有機半導体であるペンタセンの分子短軸方向に嵩高いトリイソプロピルシリルエチニル(TIPS)基を導入した有機半導体。溶媒に可溶であるため、各種ウェットプロセスで成膜することができる。ただし、キャリアモビリティはペンタセンに比べ劣る。


DAHC(Drain Avalanche Hot Carrier)

 おもに低温poly-Si TFTにおいて、高電界がかかると電子が加速されてゲート絶縁膜を破壊してしまう現象。DAHCの中にはAC劣化とよばれる別の劣化モードも含まれ、低温poly-Si TFT特有の問題として指摘されている。


DNTT

▲DNTT ▲C10-DNTT

 ジナフトチオノチオフェンの略で、ペンタセンなどと並ぶ代表的な有機半導体。キャリアモビリティはペンタセンと同等で、大気中でも安定動作するのが特徴。

 また、DNTTの両端にアルキル基を導入した誘導体C10-DNTTは各種ウェット法で塗布することが可能で、プリンタブル有機TFT用有機半導体材料の有力候補のひとつとされる。


電子ドナー、電子アクセプター

 半導体デバイスにおける電子移動現象のうち、電子を与えるものを電子供与体(電子ドナー)、電子を受け取るものを電子受容体(電子アクセプター)と呼ぶ。


突起欠陥

 周辺に比べ極端に膜厚が厚くなり、突起物のようにみえる欠陥を指す。とくに問題となるのは平滑性が要求される膜で、絶縁膜、Si膜、マイクロカラーフィルターのRGB着色層などではリペアが必須となる。リペア方法はテープ研磨やレーザー照射が一般的である。

※ステラ・コーポレーションではリベア装置「Repair Vision」を製品化しています。


2T1C

▲AM駆動有機ELDの断面構造(TFTはIGZO-TFTの例)

 有機ELディスプレイ用TFTの構成例のひとつ。有機ELDをドライブするには最低でもスイッチングTFT(SW-TFT)、ドライブTFT(Dr-TFT)、ストレージキャパシタの2T1Cが必要で、アノードまたはカソードを兼ねる画素電極とDr-TFTを接合する。従来はTFTばらつきが大きいため、このほかに補償用のTFTを複数設ける場合もあったが、いうまでもなくこうしたケースでは開口率が低下するため、最近ではシンプルな2T1Cを採用するケースが多くなっている。


バイアスストレステスト(Bias Stress Test)

 トランジスタの信頼性を評価する試験のひとつ。ポシティブ電圧またはネガティブ電圧を印加しながら長時間連続動作させ、Vthなどの特性がどう変化するかどうかをテストする。いうまでもなく、Vthシフトが少なければ信頼性の高いトランジスタということになる。ディスプレイ用TFTでは一般的に低温poly-Si TFT>酸化物TFT>a-Si TFT>有機TFTという順とされる。


バックチャネル型TFT(BCE-TFT)

▲a-Si TFTでの構造例

 TFTのチャネル部にエッチング保護膜を設けず、ソース/ドレインを形成する際にチャネル部をエッチングすることにより作製したTFT。従来のエッチングストッパー型に比べPEP(Photo Engraving Process)数を1回削減できる。反面、活性層の途中でエッチングを止める必要があり、プロセス難易度は高くなる。このため、a-Si-TFTでは活性層を厚めに成膜する。

 a-Si TFTが量産化された当時はエッチングストッパー型が主流だったが、コストダウンのため、今日ではすべてバックチャネル型となっている。一方、IGZO-TFTをはじめとする酸化物TFTでは酸化物半導体層がよりセンシティブのため、いまだエッチングストッパー型が主流になっているようだ。


パルス発振

 レーザーの発振動作で、パルス状の出力を一定の繰り返し周波数で発振する方法。


バンドギャップ

 結晶のバンド構造において電子が存在できない領域全般を指す。ただし、半導体や絶縁体では、バンド構造における電子に占有された最も高いエネルギーバンド(価電子帯)の頂上から、最も低い空のバンド(伝導帯)の底までの間のエネルギー準位を指す。


ヒステリシス(Hysteresis)

 加える力を最初の状態のときと同じに戻しても状態が完全には戻らないことを指す。例えば、弾性変形の限界を超えて伸縮したため塑性変形が加わったバネが代表的である。

 エレクトロニクスデバイスでは、とくに酸化物TFTや有機TFTでヒステリシスが問題になることが多い。このカテゴリーでは、電圧を上げていった際と下げていった際の挙動が異なる現象を指す。この場合、TFT駆動ディスプレイでは階調(グレースケール)が正確にコントロールできなくなる。


P3HT

 poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)の略。代表的なp型半導体ポリマーで、溶剤に溶解するため、塗布型有機TFTや塗布型有機薄膜太陽電池の半導体層に用いられる。バルクヘテロ接合型ではn型半導体であるPCBMと混合して塗布されることが多い。


ppi

 pixel per inchの略で、ディスプレイや描画装置などの解像度を表す。1インチ当たりの画素数を400ppiなどと表す。現在もっとも高精細なアプリケーションはスマートフォンで、400〜500ppi解像度のディスプレイが用いられている。

 同義語としては印刷の解像度を示すdpi(dot per inch)があり、ディスプレイ分野では解像度をdpiという場合もある。


比誘電率

 誘電率は極板間に詰められた媒質の誘電分極のしやすさを表す尺度。誘電分極しやすい物質はコンデンサー性能が高い、つまり電荷を多く貯められることになる。誘電の度合いを示す際は真空の誘電率との比(媒質の誘電率と真空の誘電率)で表し、この比を比誘電率という。


ピンホール欠陥

 膜中に針でつついたような穴ができた現象を指す。広義では白欠陥に分類される。電極パターンでは完全に断線していない限り問題にならない場合が多い。一方、ディスプレイの画素電極やマイクロカラーフィルターでは大きさによってはリペアが必要になったり、NGになったりするケースもある。


Vth

 しきい値電圧。トランジスタで代表的な特性のひとつ。この値以上の電圧をゲート電極に印加すると、電子の反転層が形成されてソース〜ドレイン間が導通する。


Vthシフト

 TFTを駆動し続けていると、Vthが変化してしまう現象。これが大きいと、トランジスタを正確に制御できなくなる。


フォトレスポンス性

 IGZO(In-Ga-Zn-O)-TFTをはじめとする酸化物TFTで問題となる特性。具体的には、酸化物半導体は430nm以下の短波長光に対しレスポンス性があり、これによってTFTのOFF電流が増加してON/OFF電流レシオが低下する。この結果、Vthもシフトする。このため、バックライト光が当たるLCDや青色発光が発生する有機ELDに適用するにはこの問題を解決する必要がある。

 これに対してIGZO-TFTでは、@Ga濃度を高めると光学バンドギャップが大きくなり、フォトレスポンス性が低下してVth、モビリティとも変化しにくくなる、Aゲート絶縁膜材料に色素や顔料をドープする、つまり、ゲート絶縁膜を色付きにして光照射によるVthシフトをミニマム化する、Bバックチャネル安定性を改善するため、IGZO活性層の上部にGaO層を設ける、C短波長光を吸収する一方、可視光を透過するTiOx膜をパッシベートする、D酸化物半導体層をN2OまたはArプラズマ処理してSファクターを改善しVthシフトを抑制する、などが知られる。


プリンタブルエレクトロニクス(別名プリンテッドエレクトロニクス)

 インクジェットプリンティング(IJ)法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、凸版印刷法などの各種印刷法でエレクトロニクスデバイスを作製することをいう。別名プリンテッドエレクトロニクスともいう。

 従来の真空成膜+フォトリソ法に比べ、@常圧プロセス、A必要な量の材料だけを使用する(エッチングレス)、B比較的低温プロセス、C工程数が材料印刷〜硬化だけと少ない、D省スペース、といったコストメリットがあり、さらに少量多品種生産にも対応しやすい。とくに有効とされるのは有機TFT、有機ELディスプレイ、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、電子ペーパーデバイス、FPCなどで、これらをプリンタブルエレクロニクス技術で生産できれば劇的なコストダウンが図れるとされる。

※ステラ・コーポレーションではプリンタブルエレクトロニクス向けとしてCAD/CAMソフトウェア「Stella Vision」測長&外観検査装置「STシリーズ/LSTシリーズ」リベア装置「Repair Vision」を製品化しています。


ペンタセン

 五つのベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族炭化水素で、もっともポピュラーなp型有機半導体。有機トランジスタの研究開発を活発化した立役者ともいっていい。そのキャリアモビリティは0.1〜1cm2/V・sと有機半導体としてはかなり高い。基本的に有機溶媒に不溶なため真空蒸着法で成膜されるが、トリクロロゼンゼンには溶解するため各種ウェット法で成膜することも可能である。

 ただ、近年はDNTTやC8-BTBTなどペンタセン並みのキャリアモビリティがあり、かつ大気安定性にも優れる有機半導体が相次いで登場しており、従来の絶対的地位は脅かされつつある。


ホッピング伝導

 結晶構造が不規則な非晶質固体中における電子伝導のモデルで、外部電界を駆動力としてキャリアが準位間、つまり個々の分子間をホッピング(hopping)移動することによって起こること。原子・分子が整然と配列した無機半導体ではキャリアが結晶格子の特定方向に流れるバンド伝導であるのに対し、有機半導体は上記のメカニズムによる伝導であることからホッピング伝導といわれる。容易に想像できるように、キャリアはバンド伝導の方が流れやすく、結果的にキャリアモビリティにも差が出る。


ボトムゲート/ボトムコンタクト構造有機TFT

 有機TFTでもっとも一般的な構造。トップコンタクト型と違い、ソース/ドレインを形成した後に有機半導体層を形成するため比較的作製しやすい。ただし、ペンタセンなどの有機半導体材料はモビリティを高めるため、配向処理が必要となる場合がある。


ポリシラン

 ケイ素-ケイ素結合を有する化合物の総称で、一つのケイ素-ケイ素結合から百万単位の結合まで多数の化合物が知られる。最大の特徴はケイ素-ケイ素σ結合間に共役多重結合に似たσ共役が観測されること。つまり、ポリシランはSi-Si主鎖による紫外吸収および発光性を示し、ポリシランの鎖長が長くなるにつれて吸収波長および発光波長が長波長側へシフトする。


マイグレーション

 電子部品のおもな故障原因とさえいえる現象で、配線や電極である金属が絶縁膜上を移動することにより(マイグレーション現象)、電極間の絶縁抵抗値が低下したり、最終的には絶縁不良によって短絡する。マイグレーション自体は、電界の影響によって金属成分が非金属媒体の上や中を横切って移動する現象を指す。

 マイグレーションは、移動現象の違いによりエレクトロマイグレーションとイオンマイグレーションに大別される。前者は電子運動によって、後者は電解現象によって発生する。エレクトロニクスデバイスでもっとも問題になるのは後者で、とくに湿度が高いと発生しやすくなる。Ag、Cu、Sn、Pb、Ni、Auなど多くの金属材料で発生するが、とくにAgはもっとも発生しやすいため、導電性がもっとも高いものの、配線材料として敬遠される傾向は否定できない。


有機発光トランジスタ

▲代表的な有機発光トランジスタの構造例(機能一体型有機発光トランジスタ)

 有機発光トランジスタは有機ELと有機トランジスタを組み合わせたデバイスで、理想的なドットマトリクス有機発光デバイスが実現する。ただし、実際にはマトリクスディスプレイにする場合、有機ELと同様、ドライブトランジスタに加えスイッチングトランジスタ、ストレージキャパシタが必要になる。ドライブTFTが発光機能を有している分、パネルの開口率を高めることができる。もちろん、有機ELのようにアクティブ素子と有機EL素子を別々に作製する必要がなく、製造プロセスコスト面でも有利となる。


溶融結晶化(LPC:Liquid Phase Crystallization)

 非晶質を結晶化する方法で、a-Siプリカーサ膜を一旦溶かしてから固めて結晶化する。低温poly-Si TFT-LCDで用いられるエキシマレーザーアニール法が代表的。結晶の質が高く、かつ粒径の大きなpoly-Si膜を得ることができる。


ラテラル成長法

▲結晶化方法の違い

 ラテラル成長法(Lateral Crystallization)は文字どおり横方向に結晶を成長させる手法で、低温poly-Si TFT製造プロセスにおいてa-Siプリカーサ膜を結晶化する際に用いられる。コンベンショナルなエキシマレーザーアニール(ELA)の場合、図のように熱の吸収が表面から始まり、表面から下に向けて溶け出し、下側から冷却が始まって下から上に向かって凝固していく。このため、横方向に成長する時間がなく、グレインサイズは膜厚に律則される。パルスレーザーの冷却スピードは10億℃/秒と、非常に速いため横方向に成長する時間はほとんどない。急激な冷却は結晶の核をあちこちに発生させてしまうため、結果として大きな粒径が得られない。

 上記したELAのウィークポイントをカバーすべく提案されているのがCW(Continuous Wave)レーザーによる再結晶化技術。結晶核から横方向にレーザーを引っぱることにより大粒径化させるコンセプトで、数十μmのグレインが得られる。レーザーの変動幅がELAに比べ小さく安定しているため、制御しやすく、横方向に温度勾配をつけた照射が可能になる。


リーク電流

 電子回路上において本来絶縁状態にあり流れないはずの場所・経路で漏れ出す電流。集積回路など微細化された半導体の回路内での漏れ出しを指すことが多い。単位はnA。


両極性半導体

 p型およびn型として動作する半導体。つまり、電子およびホールともトランスポートする。こうしたAmbipolar有機半導体を用いた両極性有機トランジスタを発展させたのが有機発光トランジスタで、有機半導体層は有機EL発光機能とトランジスタスイッチング機能の双方を担う。

 

※今後も随時用語集を追加していく予定です。

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