STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。

SEMICON Japan 2018 (12月12〜14日)


SEMICON Japan 2018 新たなスクリーン印刷で段差や曲面印刷を可能に

12月12〜14日、東京ビッグサイトで開かれた「SEMICON Japan 2018」。メインテーマではないが、ディスプレイ関係のトピックスをピックアップする。

半エネ研が独自の有機ELDで存在感


写真1 フォルダブル8.6型有機ELD(半導体エネルギー研究所)
 今回初披露というわけではないものの、半導体エネルギー研究所は独自開発した有機ELディスプレイで存在感を示した。公開したのは8.6型フォルダブルパネル(1200×1920画素)と8.3型8Kパネル。

 前者はRGB独立発光方式パネルで、プラスチックフィルムを両面サブストレートに用いることによりフルフレキシブル化した。曲率半径3oまで曲げることができ、折り畳み動作を繰り返しても表示の劣化はないという。

 他方、後者は1058ppiと超高精細だけに白色EL発光+カラーフィルター方式によってフルカラー化した。具体的には青色蛍光ユニットと緑色・赤色燐光ユニットを組み合わせたタンデム構造を採用した。ちなみに、どちらも独自開発の有機材料を使用しBT.2020規格に対応。また、こちらもオリジナルのCAAC-IGZO(C-Axis Aligned Crystal-In-Ga-Zn-O)-TFTでドライブしている。そのキャリアモビリティは10cm2/Vs程度に過ぎないが、説明員によると「オフ電流が桁違いに少ないので、有機ELDにはコンベンショナルな低温poly-Si TFTよりも酸化物TFTの方が適している」とのこと。

新たなスクリーン印刷で段差や曲面も連続印刷

 製造プロセス関連では産業技術総合研究所(産総研)が独自開発したスクリーンオフセット印刷法をピーアール、この方法で形成したダイボンド配線サンプルを披露した。


写真2 オフセットスクリーン印刷のデモ
(上がビデオ映像、下が展示サンプル)
 オフセットスクリーン印刷法はその名の通り、コンベンショナルなスクリーン印刷法を改良したメソッド。いうまでもなく、通常のスクリーン印刷は基板上に直接ペーストを印刷する。これに対し、オフセットスクリーン印刷ではPDMS(ジメチルポリシロキサン)ブランケット上にペーストを印刷した後、このPDMSブランケットを基板に接触させて転写する。この際、PDMSブランケットがペーストに含まれる溶剤を吸収するため、粘度が向上し基板への転写時にペーストのにじみが少なくなり、印刷解像度が向上する。一般的に通常のスクリーン印刷はマスプロダクションでは線幅50μm程度が限界とされるが、オフセットスクリーン印刷では20μmクラスのハイレゾリューション印刷が可能になる。さらに、PDMSブランケットの存在によって基板上にスクリーンマスクのメッシュ痕もほとんど残らない。もちろん、厚膜化が容易というスクリーン印刷の特徴は兼ね備える。

 今回とくに強調したのが、立体構造物や曲面にも容易に印刷できること。写真2のように、ICチップのダイボンド配線を模してAgペーストを線幅約50μmで印刷。高さ数百μmという段差にも容易に対応し、チップの側面もほぼ同じ膜厚で印刷できることを実証した。これは転写時、印圧によってPDMSブランケットが変形し印刷構造物の形状に追従するためで、インク自体は変形せず100%転写が可能だという。なお、そのメカニズムから想像できるようにPDMSブランケットには溶媒吸収飽和性があるため、量産時には一定の頻度で溶媒を除去する乾燥処理が必要となる。

新たな透明耐熱フィルムが登場


写真4 EXPEEKを用いた有機EL(クラボウ)

写真3 EXPEEK(クラボウ)
 マテリアル関連では、クラボウが新たな透明・高耐熱PEELフィルム「EXPEEK」を紹介した。PEEK樹脂のみを主成分にした二軸延伸フィルムで、全光線透過率は83%、ヘイズ4%を誇る。最大の特徴はTg=320℃という耐熱性で、a-Si TFTや有機TFTならば既存のガラス製デバイスの熱処理プロセスがそのまま適用できる。なお、熱膨張係数は数十ppm/℃で、ガスバリア性自体は高くない。ブースでは520o幅のロールサンプル、そしてこのフィルムをサブストレートに用いて山形大学が試作した緑色有機ELデバイスを展示。他の用途ではすでに量産採用レベルに入っているという。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。