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イノベーション・ジャパン2014(9月11〜12日)


イノベ−ション・ジャパン2014 フレキシブル&ウェアラブルデバイス向け技術の提案が相次ぐ

9月11〜12日、東京ビッグサイトで開かれた「イノベ−ション・ジャパン2014〜大学見本市&ビジネスマッチング〜」。近年注目のフレキシブル&ウェアラブル&プリンタブルデバイス向けテクノロジーのトピックスをレポートする。

ゲル状の酸化物材料をナノインプリンティング法でファインパターニング

 ここにきて実用化機運が高まっているプリンタブルエレクトロニクス関連では、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)がナノレオロジープリンティング(n-RP)法と名づけた新たなパターニング法を報告した。最大の狙いはウェットプロセスの適用が難しい酸化物材料をファインパターニングすることで、金属酸化物プリカーサゲルが塑性変形能(レオロジー特性)を有することを利用することによりミニマム数十nmというファインパターニングが可能だという。

 そのプロセスフローだが、まず準備としてITOなどの酸化物プリカーサを主材料にした酸化物ゲルインクを作製する。そして、この酸化物ゲルを基板上にベタコートし乾燥させた後、熱ナノインプリンティング法によってダイレクトパターニングする。最後に、450〜500℃で焼成して酸化物パターンが完成する仕組み。まずトライしたのはITOで、焼成によって多結晶化することを確認。また、a-Si TFT、低温Poly-Si TFTに次ぐ第3のFPD用TFTとして注目されているアモルファスIGZO(In-Ga-ZnO)もファインパターニングすることに成功。これを活性層に用いた酸化物TFTも正常に動作することを確認した。ただし、酸化物半導体膜に有機物が残留しているためか、キャリアモビリティは1cm2/V・s前後とコンベンショナルなスパッタリング成膜デバイスに比べ大幅に低いレベルにとどまっている。


図1 CNT-TFTの機械的信頼性(大阪府立大学)


写真1 フレキシブルCNT-TFT(大阪府立大学)

CNT-TFTでフレキシブル&ウェアラブルデバイスを

 フレキシブル&ウェアラブルデバイス向けでは、大阪府立大学がポリイミドフィルム上に作製したCNT-TFTアレイ(16×16アレイ)を披露した。市販のシングルウォールCNT溶液を塗布しリフトオフ法でパターニングしたボトムゲート・ボトムコンタクトデバイスで、チャネル長を10μmに短チャネル化。この結果、キャリアモビリティは40cm2/V・sが得られた。また、あらかじめ分離した半導体性CNTをほぼ100%使用することにより、CNT-TFTで問題となるON/OFF電流レシオも105〜6を確保。さらに、TFT毎のVthばらつきも10%に抑えた。いうまでもなく最大の特徴はフレキシブル性で、図1のように曲率半径2.5o、引っ張り応力10%で曲げてもトランジスタ特性はほとんど変化せず、フレキシブル&ウェアラブルデバイスに最適だという。


写真2 フレキシブル縦型有機トランジスタの応用例(諏訪東京理科大学)

高速動作する縦型有機トランジスタが出現

 一方、フレキシブルデバイス向けで先行する有機トランジスタでは、諏訪東京理科大学がバンド伝導機構を利用した縦型有機トランジスタを紹介した。従来、研究グループは有機半導体にペンタセンを用いた縦型デバイスを研究してきたが、ペンタセン分子はドレイン電極に対して分子配列が水平になるため、コンベンショナルなホッピング伝導になってしまいキャリアモビリティや動作速度が低いという問題があった。そこで、ドレイン電極に対し垂直方向に分子配向するBTQBT有機半導体を用いたところ、バンド伝導が発現することを確認。モビリティは1cm2/V・s以上、縦型構造にともなう短チャネル化により1MHz以上という高速動作を実現。さらに、3V以下で動作し、ON/OFF電流レシオも106が得られた。

紙抄き技術を応用した新たな導電膜形成技術が

 ディスプレイやタッチパネル向けで需要が急増している透明電極関連では、大阪大学がトピックスを連発した。まずは独自のセルロースナノファイバーを用いた透明ペーパーで、塗布型透明導電膜を形成した透明導電膜付きペーパーの特性をアピールした。


図2 光透過性とシート抵抗値の関係比較(大阪大学)

 具体的には、濾過塗布(抄紙)法によってCNT懸濁液またはAgナノワイヤー懸濁液を濾過しペーパー上に浸透させた後、加圧状態(1.1MPa)でホットプレスすることにより透明導電膜を成膜する。この際、CNTまたはAgナノワイヤーはポーラスなペーパーの垂直方向に脱水分散状態を保ったままが担持されるため、均一な導電ネットワークが形成される。これに対し、コンベンショナルなプラスチックフィルム上に各種ウェットコート法でこれらの透明導電溶液を塗布すると、乾燥時の溶媒流れに影響されてCNTやAgナノワイヤーが偏在し不均一に分散しやすい。このため、図2のようにCNT膜、Agナノワイヤー膜とも導電性および光透過率が大幅に向上し、同じ光透過率の場合、シート抵抗値はコンベンショナルなPETフィルムベース透明導電膜に比べ最大1/75にまで低下する。

 もうひとつは紙抄きと光還元技術で作製したペーパー電極。作製方法は図3の通りで、ペーパーの原料となるパルプ水懸濁液に市販の酸化グラフェンを添加し、抄紙成形して電極複合化ペーパーを作製する。この後、光照射すると酸化グラフェンが還元によってピュアグラフェンに変化し電極として機能する仕組み。つまり、紙と鉛筆の原料だけで軽量かつフレキシブルな電極一体型ペーパーができるわけである。


図3 紙抄きと光還元技術で作製した還元型酸化グラフェン複合化電極の作製方法と特性(大阪大学)


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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