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JPCA Show 2013(6月5〜7日)


JPCA Show 2013 プリンテッドエレクトロニクス用材料・装置に脚光
基板〜ITO間にウェットコート層を挿入するだけで有機ELの光取り出し効率を改善

 6月5〜7日、東京ビッグサイトで開かれた「JPCA Show 2013」。ここでは、おもにプリンテッドエレクトロニクス関連の話題をピックアップする。


写真1 光取り出し向上層を設けたガラス基板(厚木ミクロ)
サンプル
高屈折率タイプ
散乱タイプT
散乱タイプU
膜厚
1.5μm
2μm
2μm
屈折率
1.8
1.7
1.6
ヘイズ
60
40

表1 展示サンプルの仕様(厚木ミクロ)

 まず有機EL関連では、パターニング専業メーカーの厚木ミクロが光取り出し効率向上技術をアピールした。ガラス基板とITOアノード間に光取り出し向上層を設けてその屈折率差をミニマム化するもので、今回は代表的なサンプルとして表1のように高屈折率タイプと散乱タイプを展示。材料メーカーの有機・無機ハイブリッド材料をウェットコートするだけで光取り出し向上層が形成できる。膜厚は1.5〜2μmで、最大で光取り出し効率が65%も向上するという。光取り出し向上層の上部にはITOアノードが成膜されるため、その平滑性が気になるが、説明員は「光取り出し向上層の平滑性改善技術、そしてフラットITO膜成膜技術も開発済み」と回答。光取り出し向上層+ITO膜という構成の加工ニーズにも対応できるとしている。


写真3 超薄板ガラスロール(日本特殊硝子)

写真2 有機EL照明デバイス(熊本県産業技術センター)

植物プラントの光源に有機ELを

 有機EL照明デバイスでは、熊本県産業技術センターもユニークなデモを敢行。“くまもと有機エレクトロニクス連携エリア”の研究開発プロジェクトで研究した成果を紹介した。具体的には植物プラントの光源に有機EL照明デバイスを使用しようというプロジェクトで、地元企業のエヌエスコーポーレションが30×100oの白色有機EL(イー・エル・テクノ製)を50枚使用した植物栽培実験装置を作製。この実験装置でベビーリーフを栽培することに成功した。光源になぜ有機ELなのかという初歩的な質問に対し説明員は「蛍光灯など他の光源に比べ発熱が少ないため、栽培物に対してより近く配置できる。その結果、栽培容積効率が向上する」と回答。実際、この実験装置では接射距離を30cmに抑制。蛍光灯では栽培物が焦げたりするのに対し、有機ELではそうした問題がなかったという。また、栽培物に適したさまざまな波長が設定できるのも魅力で、ブースでは白色デバイスに加え、赤色、橙色、緑色、青色デバイスも展示。有機EL照明デバイスの多様性をアピールしていた。

極薄ガラスロールは厚さ35μmにまで進化

 近年、各種展示会で厚さ0.1o以下の極薄ガラスロールを展示している日本電気硝子は今回もデモを敢行、厚さ35μmのガラスロール(500o(W)×400m(L))を展示した。従来の最薄は50μmで、さらに薄型化してフレキシブル性を高めた。基本的にはRoll to Rollプロセス対応になるが、あらかじめカットしたシート状で供給することも可能だ。

パルス光を照射して高速硬化するAgナノワイヤーが登場


写真4 焼成前(左)と焼成後(右)の顕微鏡写真(昭和電工)


図13 VDS-IDS特性1)

 マテリアル関連で目立ったのが低温焼成可能な導電性インク・ペースト。まずは昭和電工の「Ag Nano Wire」で、基板上に印刷・塗布した後、パルス光焼成技術を用いて焼成・硬化する。ユニークなのはそのメカニズムで、パルス光をわずか数百μsecで照射するとAgナノワイヤーがパルス光を吸収して溶解した後、硬化する仕組み。とくに有効なのはPETフィルムをはじめとするプラスチックフィルム基板への適用で、この場合、パルス光照射によってフィルムの表面も一部溶解するため、高い密着性が得られる。気になる特性も厚膜の場合、可視光透過率87%、シート抵抗値30Ω/□とコンベンショナルなスパッタリングITO膜を上回る。このため、まずはITOをリプレースする透明導電材料として提案している。

四国化成はナノ粒子フリーのCuペーストを提案

 一方、四国化成はナノメタル粒子フリーのCu錯体ペーストを紹介した。周知のようにCuは酸化しやすいため、あらかじめ酸化させたCu錯体を使用。このため、ペーストの安定性が高いのが特徴。このペーストを基板上に塗布・印刷した後、N2雰囲気で焼成するとCu錯体が還元されてピュアCu膜となる仕組み。図1は焼成温度と比抵抗の関係で、160℃以上で焼成すると10μΩ・cm以下という低抵抗が得られる。各種デバイスの配線材料に加え、PETフィルム上にベタコートすれば銅箔層にもなるなど、その汎用性が高いのも特徴といえる。

大日本スクリーンがエレクトロニクス用印刷機市場へ進出


写真3 超薄板ガラスロール(日本特殊硝子)

 製造装置では大日本スクリーン製造がWhat's NEWを提供。プリンテッドエレクトロニクス分野へ進出するため、まずグラビアオフセット印刷機をリリースすることを表明した。実機の展示はなかったが、アクリル板、PETフィルム、SUSに黒色インクをダイレクト印刷したサンプルを披露。さまざまな基板に対応できることを強調した。最小線幅は10μmで、マックス300m/minで印刷可能だ。グラビアオフセット印刷のキーコンポーネントであるグラビアシリンダーもグループ企業で内製。8月に300o幅対応の実験装置をリリースする予定となっている。

 

 

 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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