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ライティング・フェア2013(3月5〜8日)


ライティング・フェア2013 日立製作所が有機EL照明デバイス市場に名乗り
有機ELを外観検査装置の光源に提案するアイデアも


写真1 フルフレキシブル有機EL照明デバイス(コニカミノルタ)

 3月5〜8日、東京ビッグサイトで開かれた「ライティング・フェア2013」。次世代照明デバイスとして認知されつつある有機EL照明デバイスはパナソニック出光OLED照明、カネカ、コニカミノルタ、NECライティング、日立グループ、山形大学が展示。このなかからWhat's NEWと思われるトピックスをレポートする。

 まず、すでにコマーシャル段階に入っている先行メーカーではコニカミノルタが30×150oのフルフレキシブルデバイスを展示した。ここでいうフルフレキシブルとは自在に曲げられることを指しており、ブースでは鳥が羽を広げるかのように一定時間毎にパネルを曲げるデモを演出。発光色もピンク系からブルー系へ変化するデモを敢行した。同社独自の低分子発光材料を用いたオール燐光デバイスだが、デバイス構造はもちろんのこと、発光効率をはじめとするスペックも一切公表せず。このため、実用化間近のテクノロジーなのかどうかについては不透明に感じた。

100×100oサイズで効率を75lm/Wに


写真2 透明有機ELパネル(NECライティング)

 前回の「ライティング・フェア2011」で自前の有機EL照明デバイスを披露し新市場へ進出することを表明したNECライティング。今回は透明パネルと高効率パネルを中心にデモを敢行した。

 前者は光透過性カソードにITOを用いたもので、デバイスの可視光透過率は70%以上を確保。写真2のように、もちろん背面が透けて見える。RGB3色とも燐光にした3波長デバイスで、発光効率は35lm/W。他方、後者は100×100oサイズで75lm/Wという高効率を実現。ただ、発光ユニットをスタックしたマルチフォトンタイプなのかどうかは明らかにしなかった。ちなみに、同社も参画しているNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトでは2×2oデバイスで156lm/Wと世界最高効率を達成したという。

1回の塗布プロセスで疑似的なRGB3層を形成

 一方、後発メーカーとして名乗りを挙げたのが日立製作所で、グループ企業の日立アプライアンスのブースで初めて有機EL照明デバイスを披露した。有機ELディスプレイの開発で実績があるとはいえ、有機EL照明デバイスでは後発に属するだけに、安価な塗布型デバイスに特化。写真3のように、100×100oの白色デバイスを公開した。デバイスはITOアノード/PEDOT:PSSホール注入層/RGB燐光発光層/電子輸送層/バッファ層/Alカソードという構成で、発光効率は70lm/W、輝度半減寿命は1万時間。


図1 疑似的RGBマルチレイヤー化の仕組み


写真3 RGB3波長の白色有機EL照明デバイス(日立)

 最大の特徴は、自発多層化発光層形成技術と名づけたオリジナルプロセスにある。具体的には、RGBそれぞれの発光ドーパントの存在領域をコントロールすることにより、単層ながら疑似的なRGB3層のマルチレイヤー構造にする。つまり、1回の塗布プロセスによってRGB3層の発光層を形成する。これは、発光層の表面エネルギーをコントロールすることによって実現する。すなわち、赤色燐光ドーパントに表面エネルギーを低下させる機能基をつける。この結果、赤色発光ドーパントは疑似的マルチレイヤーの最上部にローカライズされる。また、その下部にローカライズされる緑色燐光ドーパントには別の機能基をつける。一方、最下部にローカライズさせる青色燐光ドーパントはこうした機能基レスの燐光材料を用いる。これらの結果、コンベンショナルな積層型デバイスでみられる青色ドーパントから赤色ドーパントへのエネルギー移動が小さくなり効率も向上。わずか1回の塗布プロセスで高効率なRGB3波長デバイスが実現するという。

有機ELを検査装置の光源に

 山形大学は山形県の研究機関や県内企業とともに有機EL照明デバイスを大々的にピーアール。What's NEWは山形県産業技術振興機構が紹介した有機ELメッシュパネルで、外観検査装置の光源に用いることを提案した。写真4のようにCCDカメラと検査対象ワーク間に有機ELメッシュパネルを配置し検査光源として用いる仕組みで、有機ELメッシュパネルはその名のとおりAlカソードをハニカムメッシュ状にパターニング。カソードがある部分だけが発光し、下部に配置されているワークを高輝度で照らす。もちろん、電源をOFFにすれば消灯する。


写真4 有機ELメッシュ光源を用いた外観検査例

写真4 有機ELメッシュ光源

 外観検査装置で一般的な斜光方式に比べ、カメラで撮像した画像がワークの表面形状に起因するシャドーに影響されにくく、とくに光沢のあるメタル表面の観察・検査に適する。実際にブースでは10円玉の表面形状を観察するデモを敢行。撮像した画像をみせてもらったところ、斜光方式は銅の光沢によってシャドーの影響が出ていたのに対し、この方式ではそうした影響がみられず、微細な凹凸形状が正確に表現できていた。一方、LED光源とハーフミラーを用いる同軸落射方式に比べると、写真4のように装置構成がシンプルかつコンパクトにできる。もちろん、面光源ならではという照度均一性も魅力だ。気になる有機ELメッシュパネルの価格も100×100oクラスの小型サイズなら5000〜8000円とリーズナブルだ。

 検査装置メーカーにとって特許関係が気になるが、説明員は「そうした特許権利はなく、このアイデアは誰でも自由に使うことができる」と回答。ただ、県のプロジェクトで開発した経緯もあり、「まずは県内企業に使ってもらうのがベスト」と正直にコメント。もちろん、有機ELメッシュパネルはアノードと有機層はベタで、カソードだけをメッシュ状にパターニングすればいいため、県外企業は既存のパッシブ有機ELDメーカーや有機EL照明デバイスメーカーからサンプル品を調達することができるといえそうだ。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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