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CEATEC JAPAN 2011(10月4〜8日)


CEATEC JAPAN 2011
ディスプレイは3Dブームが一段落し4K2Kの超高精細テレビが主役に
赤色レーザーを用いたレーザーバックライトテレビも登場

10月4〜8日、幕張メッセで開かれた「CEATEC JAPAN 2011」。近年はスマートフォンやタブレット端末、そして3Dディスプレイが主役だったが、今年はエネルギー関連プロダクトが主役の一角を奪うなど世相を反映した印象を強く受けた。ディスプレイでは3Dブームが一段落した格好で、新たに4K2Kに代表される超高精細テレビが一大ムーブメントに。また、照明デバイスでは“量産元年”となっている有機ELデバイスの台頭が感じられた。おもなエキジビションをレポートする。

 冒頭のように、ディスプレイ関連でのムーブメントは主役が3D対応ディスプレイから超高精細ディスプレイに代わったこと。3Dディスプレイはモバイル機器向けでグラスフリータイプの採用が進んでいる一方、テレビ向けではグラスタイプ・グラスフリータイプとも需要が伸び悩んでいるためと考えられ、こうしたムードを反映してか、今回、グラスタイプ・グラスフリータイプとも新たな3D技術はなかった。


写真2 85型8K4K TFT-LCD(シャープ)

写真1 グラスフリー3D対応55型4K2K液晶テレビ(東芝)

 こうしたなか、東芝は世界で唯一製品化しているグラスフリー3D液晶テレビのラインアップを拡充。すでに製品化している12.1型/20.1型から今回は一気に55型にサイズアップした「レグザ55X3」を披露した。サイズアップにともない、アクティブマトリクス素子も低温Poly-Si TFTからa-Si TFTに変更。さらに、解像度も4K2K(3840×2160画素)にスケールアップした。

 一方、シャープはI3(アイキューブド)研究所と共同開発した60型4K2Kテレビ、さらにブース内の特設コーナーでNHKと共同開発した85型8K4K(7680×4320画素)を公開した。どちらもコンベンショナルなa-Si TFT駆動で、このサイズ・レゾリューションでもa-Si TFTでドライブできる。なお、注目されるIGZO酸化物TFTは当面、ハイエンドな中小型パネルに特化するという。

 両社ともそのレゾリューションは申し分ないが、果たして4K2Kの対応コンテンツがあるのだろうかという疑問も強く残る。この点に関して、東芝はNTTぷららのひかりTVを表示した4K2Kテレビを展示。懸念されるコンテンツ不足も時間の経過とともに解消されるという方向性を示した。


写真3 レーザーバックライト液晶テレビ(三菱電機)

圧巻だった赤色レーザーバックライト液晶テレビ

 これら超高精細液晶テレビに対抗する形で独自の液晶テレビをアピールしたのが三菱電機。What's NEWはレーザーバックライト液晶テレビで、バックライトにシアンLEDと赤色レーザーを使用。これらをパネルの両サイドに配置することにより、エリアコントロールながらサイドライト方式を実現した。波長640nmの赤色レーザーの配置方式について説明員は「パネルのサイドに固定する」とだけコメント。気になる製造コストもコンベンショナルな白色LEDバックライトとほぼ同等だという。容易に想像できるように、コンベンショナルな白色LEDバックライトテレビに比べ色再現性は1.3倍に向上。ブースでは50型クラスのテレビを展示。赤色系の画像を中心に表示し、赤色がよりピュアに見えるデモを敢行していた。

双葉電子が固体封止のフレキシブル有機ELDを披露

 TFT-LCD以外のFPDはPDP、電子ペーパーともほとんど出展がなく、直視型の有機ELディスプレイも双葉電子工業がパッシブマトリクス駆動パネルを展示したのみだった。その双葉電子は先頃、TDKから有機ELD事業会社を取得。得意の車載機器分野を中心に有機ELD事業に本格進出することを表明した。


写真4 曲面形状の有機ELD(双葉電子工業)

 テクノロジー的なWhat's NEWは曲面形状の3.4型フレキシブルカラーパネル(256×64画素)。サブストレートにはプラスチックフィルムを使用。有機EL素子を設けた後、ガスバリア膜を成膜し、最後にプラスチックフィルムで封止した固体封止パネルで、気になる水蒸気透過性は10-5g/m2/dayクラス。このため、輝度半減寿命は5000時間程度とガラス製パネルの1/2〜1/3と低く、製品化計画は未定とのこと。輝度は100cd/m2で、パッシブ駆動のためかコントラストが不十分に感じた。自動車のインストルメントパネルや計器メーターなど曲面部に設置できる特徴が活かせる用途を想定している。

128×128画素パネルをタイリングし曲面型の超大型インフォメーションボードを


写真6 マイクロ有機ELD(ローム)

写真5 オーロラビジョンOLED(三菱電機)

 パッシブ有機ELDをタイリングして超大型化する有機ELマルチビジョンディスプレイでは、今年も三菱電機がポストLEDを目指し超大型インフォメーションボードを展示した。What's NEWは、写真5のように曲面形状にした“3次曲面オーロラビジョンOLED”で、ピクセルピッチ3oの128×128画素パネルをタイリングして曲面化した。筆者は5mほど離れた場所から見たこともあり、パネル間のつなぎ目がかなりはっきりと見え、そのタイリングもスムーズとはいえず、近くでみるとコンベンショナルなLEDインフォメーションボードとさして変わらないように感じた。

Near to Eye用途にマイクロ有機ELDを

 前記のように直視型ではアテクィブ有機ELDの出展がなかったなか、ロームは独自の有機ELマイクロディスプレイを披露。デジタルスチルカメラのビューファインダーやヘッドマウントディスプレイといったいわゆる“Near to Eye”用途で、覗き込むことにより0.47型と超小型サイズながらSVGAという高精細画像が得られる。デザインルール0.13μmで製造したCMOS LSI基板上に有機EL層とマイクロカラーフィルターを積層したトップエミッション構造で、もちろんドライバ回路もCMOS LSI上にビルトイン。消費電力はわずか175mWに過ぎず、コントラストも30000:1とハイスペックで、超小型で超高精細な画像は圧巻にさえ感じた。なお、製品化計画については未定とのこと。

オール燐光化で発光効率を45lm/Wに向上


写真8 塗布型白色有機EL(コニカミノルタ)

写真7 蒸着型白色有機EL(コニカミノルタ)

 ここにきて製品化ラッシュとなっている照明用有機ELデバイスはコニカミノルタ、ローム、カネカ、パナソニック出光OLEDが展示。冒頭のように、こうしたエキジビションでも量産化元年を強く感じさせた。

 そうしたなか、コニカミノルタは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースでオール燐光の白色デバイスを披露。独自の青色燐光ドーパント材料を用いたRGB3波長デバイスで、サンプル出荷を開始した蒸着型(74×74o)は光取り出し改善フィルムありで45lm/Wという高効率を実現。輝度は1000cd/m2、色温度は2800K、輝度半減寿命は8000時間(@1000cd/m2)と実用スペックを確保した。蘭Philipsに生産を委託し量産化する。他方、同社は有機EL層をすべてウェットプロセスで成膜した塗布型も展示。ホスト材料にRGBそれぞれの低分子燐光ドーパントを混合し発光層を1レイヤーにしたデバイスで、製造コストでは蒸着型に比べ圧倒的に有利だという。ただ、デバイス構造やスペックは一切明らかにせず、色度もややオレンジがかっているなど製品化には時間がかかるように感じられた。

縦型メタルベース有機トランジスタで大電流&低電圧動作


写真9 MBOT(左右)で点灯させた有機EL(中央)


図1 MBOTの構造(山形大学)

 他方、展示会場内のあちこちに設けられたアカデミックコーナーでは山形大学 中山研究室が独自の縦型メタルベース有機トランジスタ(Metal Base Organic Transistor:MBOT)を紹介した。デバイス構造は図1の通りで、N型有機半導体層間(Me-PTC〜C60間)に膜厚10nmの面状Alゲート電極を挿入したのが特徴で、有機半導体層の膜厚がチャネル長になるため、チャネル長の微細化に有利となる。この結果、コンベンショナルな横型有機トランジスタに比べ出力電流が大幅に増加するとともに、駆動電圧も低下する。また、デバイス上に有機ELを積層すればトランジスタ自体が発光する有機発光トランジスタが実現する。

 今回はその大電流特性をアピールするため、バイポーラトランジスタ用回路として二つのMBOTをたすき掛けでつないで緑色有機ELを点灯させる無安定マルチバイブレータ回路システムを展示。写真9のように、中央にある二つの緑色有機ELを点滅させるデモを敢行し、1A/cm2クラスの大電流出力と数V駆動の低電圧動作をピーアールしていた。


写真10 20型液晶テレビの表示比較
 上:ITO電極パネル、下:GZO電極パネル

GZOを透明電極に用いてIn使用量を削減

 製造インフラ関連では、高知工科大学を中心とするNEDOの“希少金属代替材料開発プロジェクト”がポストITO透明電極としてGZO(ZnO:Ga)をアピール。TFT-LCDの対向共通電極としてGZOを反応性プラズマ蒸着法(イオンプレーティング法)によって成膜したもので、コンベンショナルなITO透明電極を使用する場合に比べレアメタルであるInの使用量が50%以上削減できる。What's NEWは20型液晶テレビを試作したことで、ブースでは写真10のように市販のITO対向電極テレビも展示。その画質もまったく変わらなかった。気になる信頼性についても50℃、95%RH環境で1000時間連続駆動しても不良が発生せず、実用面でも問題ないことを示した。

0.2o厚の第8世代ガラス基板が出現


写真11 厚さ2oの第8世代ガラス基板(日本電気硝子)

 マテリアル関連では、日本電気硝子が2200×2500oの第8世代ガラス基板でさらなる薄型化を推進。従来の0.3o厚から0.2o厚に薄型化することに成功した。ダウンドロー法によって直接超薄型ガラスを成型したもので、写真11のようにこのサイズになるとかなりたわむ。このため、TFT-LCDの量産に用いるには輸送や製造ラインにおけるハンドリングを工夫する必要がある。実際、説明員は「ハンドリングなどの問題からすぐにTFT-LCD量産ラインで使われるとは思っていない。むしろタッチパネルの方が実用に近い」とコメント。第8世代ガラスの展示はデモ的な意味合いが大きいことを認めていた。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。