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イノベーション・ジャパン2010-大学見本市(9月29日〜10月1日)


イノベーション・ジャパン2010 第3のナノインプリント法のポテンシャルが明らかに
分子を配向させながら塗布する直接印刷法も報告

 9月29日から10月1日の3日間、東京国際フォーラムで開かれた「イノベーション・ジャパン2010-大学見本市」。大学や研究機関の技術シーズを披露するエキジビションで、昨年に比べ展示スペースが減少したものの、会場は初日からかなりの混雑ぶりを呈した。エレクトロニクスデバイス製造プロセス関連のデモをピックアップする。


写真1 室温ナノインプリントのパターニング例
写真2 4インチウェハーに転写されたHSQパターン

図1 HSQの分子構造

 兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所は熱硬化式ナノインプリント、光硬化式ナノインプリントに次ぐ第3のナノインプリント技術として独自の室温ナノインプリント法を紹介した。

 周知のように熱硬化式ナノインプリントは熱可塑性樹脂を加熱して硬化、光硬化式ナノインプリントは光硬化性樹脂をUV照射によって硬化する。これに対し、室温ナノインプリントは材料塗布〜モールド加圧〜モールドリリースという3ステップでプロセスが完了する。つまり、その名の通り室温で硬化させるため、加熱処理や光硬化処理が不要である。ただし、材料は室温で硬化するゾル-ゲル系材料を用いる必要があり、図1のようなHSQ(Hydrogen Silsesquioxane)を用いることが多い。無機材料であるHSQは耐熱性や可視光透過率が高く、誘電率も低いといった特徴がある。

 研究グループはHSQを用いたパターニングプロセスとしてまずスピンコート法にトライ。HSQをスピンコートした後、圧力40MPaでモールドをプレスしてナノインプリント処理する仕組みだが、高圧が必要で残渣が発生しやすいという問題が判明した。そこで、溶媒に溶解させたHSQを液滴法によって塗布することにした。具体的には、HSQ溶液を滴下しナノインプリント処理する仕組み。特徴は圧力が1MPa程度と低圧でよく、残渣もほとんど発生しない点にある。ただ、モールド加圧中に溶媒を揮発させる必要があるため、コンベンショナルなSiO2/Siモールドを使うと溶媒がモールドの端からしか蒸発せず、基板中心部にはパターン不良が発生しやすくなる。

 そこで、Poly dimethylsiloxane(PDMS)モールドを用いることにした。周知のように、PDMSはナノポーラス構造であるため、ナノポーラスを経由して溶媒を蒸発させるコンセプトだ。もちろん、PDMSはマスターモールドから加工する際の再現性も高く、離型性にも優れる。さらに、従来の液滴法では硬化に90℃程度の熱処理が必要だったが、PDMSモールドを使用すればほぼ室温で溶媒が揮発する。モールド加圧条件も圧力0.2MPa、処理時間2minと低圧かつ高速である。実際、写真1のように残渣もなく、写真2のように4インチウェハー上でも100μm、10μm、150nmとさまざまなディメンジョンのパターンが一括形成できることが確認できた。

液晶材料を分子配向させながら印刷し配向膜をレス化

 一方、長岡技術科学大学は分子配向直接印刷法と名づけたユニークなポリマー材料塗布技術を紹介した。その名のとおり、材料を塗布しながら分子配向させるコンセプトで、まずグラビア印刷法を報告。コンベンショナルなグラビア印刷と異なるのは印刷直後に印刷機の下部スリットからUV光を照射して重合する点にある。この結果、配向したポリマー膜が得られる。


写真3 20×20o対応印刷機

 その応用例としてLCDへの適用を提案。ポリマーを添加した液晶材料をグラビア印刷し配向させる仕組みで、この結果、液晶材料を配向させるためのポリイミド塗布〜配向工程が不要になる。気になるプレチルト角もグラビアロール表面にパターニングしたくし歯電極の深さ、ピッチ、印加電圧などによってある程度制御できる。研究グループではポリマーネットワークLCDを試作、その動作も確認済みだ。ちなみに、写真3は20×20o基板対応のプロトタイプで、ブースでは実際に動作させたデモを敢行していた。

 研究グループはスリットコート法による分子配向直接印刷法も紹介。基板を水平方向に移動させながらスリットヘッドから材料を滴下し、滴下直後にUV光を照射して分子配向させる仕組みで、スリット〜基板間という狭い空間に分子が存在することから発生するフロー効果を利用する。いわゆる、ずり配向させるイメージらしい。まだ明確なメカニズムは不明だが、UV照射すると液晶材料や有機半導体材料は垂直配向する一方、UV照射レスだと配向しないという。こちらはLCDと有機トランジスタへの応用を想定。後者ではTIPSペンタセンをはじめとする塗布型有機半導体材料を分子配向させながら塗布・パターニングする仕組みで、配向によってキャリアモビリティが5〜10倍アップすることを期待している。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。