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CEATEC JAPAN 2009(10月6〜10日)


CEATEC JAPAN 2009 3D液晶テレビが人気を独り占め
有機ELデバイスはフレキシブル化やタイリング化で新たな用途を開拓

10月6〜10日、幕張メッセで開かれた「CEATEC JAPAN 2009」。ディスプレイ関連のムーブメントはなんといっても3D液晶テレビで、テレビメーカー各社がこぞって展示。小型アプリケーション分野では3Dディスプレイは長らく停滞していたが、今回のデモを見る限り、臨場感が要求される大型テレビでは普及が期待できるという印象を強く残した。


写真1 3D液晶テレビ(東芝)

 冒頭のように、今回の目玉はなんといっても3D液晶テレビだった。パナソニック、ソニー、東芝、シャープ、三菱電機とも40型以上のフルHDテレビをデモ。各社とも特殊メガネを装着して3D画像を見るスタイルと技術的にはとくに目新しくなかったが、どのブースも3Dテレビコーナーには長蛇の列が。実際、各社とも3D画像の完成度はきわめて高く、“画像は2D”というテレビのイメージを一新したといってもいい。

 そんななか存在感を際立たせていたのが55型フルHDテレビを展示した東芝。3D専用ソフトウェアの映像だけでなく、従来録画していた2D画像もIBM、ソニーと共同開発したプロセッサー「CELL」によって3Dへ変換。臨場感を高め、新しいコンテンツに進化させることができる。こうした提案こそ3Dテレビを普及させる起爆剤だと強く感じた。

 なお、3D映像は人間工学的に違和感があり気持ち悪くなる傾向は否めないが、今回はこうした違和感もかなり解消されていた。ただし、長時間の視聴にも向いているかどうかはパナソニック、シャープ、ソニーが製品化する2010年以降に製品化されてから結論が出ることになる。

白色LED-BLが液晶テレビのメインストリームに

 液晶テレビにおけるもうひとつのムーブメントはLEDバックライト(LED-BL)の搭載だった。LED-BL搭載テレビ自体は数年前から製品化されているものの、高価なこともあり、普及にはほど遠いのが実情。しかし、今回はパナソニック、日立製作所、シャープがLED-BL搭載テレビを展示。今後、液晶テレビのメインモデルにしようという姿勢を強く打ち出した。


写真4 103V型PDP(パナソニック)

写真3 白色LED-BL(シャープ)

写真2 LED-BL搭載液晶テレビ(パナソニック)

 テクノロジートレンドは白色LEDを用いていること。従来、LED-BL搭載テレビというとRGBそれぞれのLEDを用いるのが一般的だったが、今回は各社とも白色LEDを搭載していたとみられる。RGB-LEDは色再現性・コントラストが高いのがメリットだが、今回出展された白色LED-BL搭載テレビはいずれもコントラストが大幅に向上。いわゆる100万:1以上というメガコントラストが実現できていた。もちろん、これは表示する画像に合わせて1個1個の白色LEDを点灯・消灯するエリアコントロール技術による。また、エリアコントロールによって消費電力も30〜50%削減。近年、購買意欲をかきたてるキーワードになっているエコロジーという意味でも存在感が高まりそうだ。

 ちなみに、LEDの使用個数、つまり分割エリア数は各社とも明らかにしなかったが、シャープは写真3のように白色LED-BLのサンプルを展示。このサンプルを見る限り、LEDの使用個数は1000個以上とされるRGB-LEDほど多くないのではと感じた。

 液晶テレビが会場を席捲するなか、PDPはパナソニックのみが展示。その注目度も総じて低く、いわゆる4K2K(3840×1920画素)の103V型PDPだけが存在感を放っていた印象だった。


写真5 有機EL方式スケーラブルディスプレイ(三菱電機)

パッシブ有機ELDをタイリングして超大型ディスプレイに

 有機ELディスプレイでは、三菱電機の超大型インフォメーションディスプレイ「有機EL方式スケーラブルディスプレイ」が注目の的に。同社はブースの正面に96o角の小型パネルを720枚タイリングした155型ディスプレイ(640×1152画素)を設置。LCDをはじめとする他のFPDに比べ薄型軽量なのが特徴で、10mほど先から見た感じではパネルのつなぎ目は認識できず、同社も目地フリーとアピールしていた。もちろん、タイリング方式なので画面サイズには制約がなく、画素ピッチも約3oとインフォメーションディスプレイとしてはハイレゾリューションといえる。

 興味深かったのは、パネルはアクティブマトリクス駆動ではなくパッシブマトリクス駆動である点。小型パネルをタイリングすることによってパッシブパネルでも輝度と寿命を両立したもので、輝度は1200cd/m2、階調は4096を確保した。周知のように超大型フルカラーディスプレイはLEDが主流だが、今回のデモはこのカテゴリーで高精細モデルとして有機ELDのポテンシャルを引き出したといえそうだ。

フレキシブル有機TFT駆動有機ELDでモバイル機器を大画面化


写真8 モバイル機器への応用イメージ(ソニー)

写真7 ノートPCへの応用イメージ(ソニー)

写真6 フレキシブル有機TFT駆動有機ELD(ソニー)

 一方、有機ELテレビを製品化しているソニーは次世代のフレキシブル有機ELDをデモ。有機TFT駆動によるトップエミッションパネルで、写真6のように2.5型160×120画素パネルを曲げた状態で展示。厚さ0.2oとペーパーライクで、曲率半径40oまで曲げても問題ない。有機TFT回路はスイッチングTFT、ドライブTFT、ストレージキャパシタの2TFT&1Cで、有機半導体にはコンベンショナルなペンタセンを用いた。有機TFTで問題となる駆動電圧は10V程度だという。写真7、8はプロダクトへの応用例で、とくにノートPCのパネルに用いると筐体の2倍に大型表示できる点が魅力的に映った。いまさらいうまでもないが、フレキシブルディスプレイの差別化ポイントは従来のガラス製ディスプレイでは不可能なアプリケーションを実現することにある。つまり、“薄くて、軽くて、割れない”だけでは差別化ポイントとして不十分と考えられる。これに対し、今回のプロポーザルは従来ないプロダクトを実現できるという意味で画期的に感じた。なお、ノートPCに用いた場合、ヒンジの折り曲げ繰り返しに対する耐久性が懸念されるが、1万回以上折り曲げても表示特性に影響がないという。

ロームはフレキシブル有機EL面光源をPR


写真9 フレキシブル有機ELデバイス(ローム)

図1 フレ キシブル有機ELデバイスの構造(ローム)

 フレキシブル有機ELではロームも照明用デバイスを披露した。デバイス構造は図1の通りで、ベースサブストレートに日本電気硝子の0.05o厚ガラス基板を使用。このガラス基板上に有機ELを設けた後、ガスバリア膜付きフィルムを接着して固体封止するとともに、ベースガラス基板にフィルムを接着して曲率半径25oというフレキシブル性をもたせた。この結果、コンベンショナルな有機ELに比べ重さを1/8、厚さを1/6(0.3o)に薄型軽量化することにも成功した。ブースでは、写真1のようにフレキシブルなインテリア照明が実現することをアピール。こちらもフレキシブル化によって新たなアプリケーションが開拓できるという自信をみせていた。

 ロームは140×140oのガラス製有機EL照明デバイスも展示。効率と演色性を両立したのがセールスポイントで、RGBそれぞれの発光ユニットを設けた3段マルチフォトンエミッション構造を採用。R発光ユニットとG発光ユニットは高効率な燐光発光材料、B発光ユニットは従来の蛍光材料を使用し、高効率と高演色性(Ra=80)を確保した。

電子ペーパーではシャープと富士通が液晶型で競演


写真11 病院向けコレステリック液晶型電子ペーパー(富士通)

写真10 メモリーLCD(シャープ)

 電子ペーパーでは、シャープがポリマーネットワーク型メモリー液晶をアピール。すでにソフトバンクの携帯電話のサブディスプレイとして採用されており、この携帯電話に加え、2.7型と3型ワイドQVGAパネルを参考出展した。駆動電圧が5V以下と低いほか、表示書き換え速度が10枚/秒と速い点が電気泳動方式をはじめとする他の電子ペーパーに比べ優位だという。

 他方、富士通はコレステリック液晶型電子ペーパーの新たなアプリケーションとして病院で使用する患者案内用電子カードホルダー(写真11)を提案した。画素数は240×400で、4096色のカラー表示が可能。ただ、サンプルはグレースケール表示がほとんどなく、カラー化が容易というコレステリック液晶の優位性を十分アピールできていたとはいえなかった。

写真12 マイクロプロジェクタで投影した画像(日立製作所)

マイクロプロジェクタであらゆる構造物に投影

 アプリケーションでユニークだったのは、日立製作所のマイクロプロジェクタ。MEMSミラーを用いたもので、片手で持てるコンパクトさがセールスポイント。機器内に投影光学系がないため、表示するスクリーンとの距離に関係なくピントが合う。つまり、どんな形状、構造物にも投射可能で、ブースでは曲面構造物に故意に画像を投影してこうしたメリットをアピールしていた。

グラビア印刷でL&S=6μmクラスのハイレゾリューションが

 エレクトロニクスデバイス用インフラでは、今年もグラビアロール版メーカーのシンク・ラボラトリーが新たなトピックスを提供した。What's NEWは、グラビア製版を製造する際、シリンダーロールに塗布されたフォトレジストを描画するマシンとして超高精細レーザー描画装置を新開発し導入したこと。その解像度は従来マシンの4倍に当たる25600dpi。これは


写真13 超高精細グラビア版(シンク・ラボラトリー)

L&S=6μm/6μmに相当する。このため、これまで高精細画像における円弧や斜線も滑らかに表現できる。ブースではPCB用として作製したグラビア版を実機展示したほか、グラビア版の拡大サンプル画像をパネル展示。さらに、このグラビア版を用いてAgペーストをガラス基板上にグラビアオフセット印刷したサンプルを作製。PCBやFPDに加え、太陽電池にも応用できることを示した。

 



REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。