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SID 09


SID 09レポート〜第2回 電子ペーパー編 電子ペーパーがフレキシブル化で一番乗り
エレクトロウェッティングディスプレイにカラー化の可能性が

 SID 09レポート第2回は、ここにきて続々と最終製品に採用されてきた電子ペーパーに特化。やはりネックストジェネレーションデバイスはフレキシブルパネルとカラーパネルで、関連トピックスをクローズアップする。

PENフィルムを支持基板にラミネートして有機TFTを作製


図12 1500回曲げを繰り返した際の表示特性5)

写真10 有機TFT駆動フレキシブル電子ペーパー5)

 フレキシブル電子ペーパーでは、この分野のオーソリティである蘭Polymer Visionが有機TFT駆動のマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイについて発表した5)

 開発したモノクロフレキシブル電子ペーパーは解像度254ppiの4.7型QVGAパネル。パネル自体の厚さは0.1oで、もちろん曲げることができる。また、反射型パネルであるため開口率は97%に達する。

 サブストレートには厚さ0.025oのPENフィルムを使用。再利用可能なリジッド支持基板にラミネートした後、有機TFTを形成。続いて、黒色トナーと白色トナーを封入したマイクロカプセルを充填したITO透明電極付き前面エレクトロラミネートフィルム(E Ink製)をラミネートし、最後に支持基板からリリースした。

 有機TFTはコンベンショナルなボトムゲート・ボトムコンタクト型を採用。ゲート絶縁膜と有機半導体層は塗布型材料を用いてスピンコート法などで形成。ゲート、ソース/ドレイン電極は延性メタル材料を使用し、コンベンショナルなフォトリソ法でパターニングした。チャネル長はミニマム5μmで、モビリティは0.2〜1cm2/V・sec、ON/OFF電流レシオは107、Vthは2V強と電子ペーパーをドライブするのは十分な値が得られた。


写真11 Readius5)

写真12 フレキシブルカラー電子ペーパーの表示例5)

 写真10は試作パネルで、曲げ半径7.5oというフレキシブル性を実現。図12は半径7.5oのシリンダーにパネルを1500回巻きつけて反射率を評価した結果で、1500回後も初期と特性が変化せず、白色反射率(40%)、応答速度(0.25sec)を維持していることがわかる。また、使用温度範囲についても−40〜85℃までの加速試験をしたところ表示品位が低下しなかった。

 上記のパネルを用いて開発したプロダクトがe-book「Readius」。重さはわずか115gで、写真11のようにディスプレイを折り畳んで収納することができ、見るときは4.7型画面を見ることができる。

 また、次世代パネルとして解像度154ppiの4.1型フレキシブルカラー電子ペーパー(892×536ドット)を開発。前面基板上にRGBWの4ドットマイクロカラーフィルターを設けたもので、アクティブ素子にはモノクロパネルと同じ有機TFTを用いた。フレキシブル性は曲げ半径6oを実現。コントラストは8:1で、6万5536色が表示できる。

ポリイミドをガラス基板に塗布し、a-Si TFT作製後にリリース

 一方、ガラス製モノクロ電子ペーパーを量産中のPrime View Internationalは同じフレキシブル電子ペーパーでもまったく異なるプロセス技術を発表した6)。既存のa-Si TFT設備を用いて試作したもので、製造プロセスもガラス製パネルとほとんど同じであるため量産性に優れるのが特徴だ。


図13 リリース前(左)とリリース後(右)の特性6)

写真13 リリース前(左)とリリース後(右)のa-Si TFT6)

 EPLaRと名づけたプロセス技術は、既存のa-Si TFT製造技術・インフラをそのまま流用することができる。唯一の違いはプロセスの最初と最後の2工程だけである。具体的には、まず支持基板であるガラス基板上に膜厚10μmでポリイミドを塗布し硬化させる。ガラス基板とポリイミド膜の密着性は十分高いため、その後のa-Si TFTプロセスでもポリイミド膜が剥離することはない。いうまでもなくポリイミドは耐熱性が高いため、a-Si TFTならプロセス温度にも制約がなく、既存のガラス製a-Si TFTプロセスが適用できる。さらに、ポリイミド膜自体は厚さがガラスのわずか1.4%、重さも1%以下に過ぎず、フレキシブル電子ペーパーのサブストレートして理想的といえる。

 容易に想像できるように、もうひとつの違いはa-Si TFT作製後にガラス基板からリリースすること。そもそもEPLaRの名はElectronics on Plastic by Laser Releaseという意味からきている。肝心のメソッドだが、ノウハウのためかレーザーを照射するとしか記載されていないのが残念に感じた。


写真14 1.9型EPLaRディスプレイ6)

 EPLaRの最大のアドバンテージはポリイミド膜がガラス基板に密着しているため、温湿度変化による寸法変動が予測でき、結果的にガラス製パネルと同じデザインルール、解像度が適用可能なこと。参考として写真13にリリース前のa-Si TFT(左)とリリース後のa-Si TFT(右)の顕微鏡写真を示す。

 図13はTFT特性で、リリース前に比べon電流、off電流、Vthといったトランジスタ特性はほとんど変化しない。いうまでもなく、これは駆動電圧などを変更する必要がなく、既存のドライバICチップが流用できることを意味する。もちろん、駆動安定性をはじめとする信頼性もガラス製パネルと変わらない。

 同社は既存の370×470oマザーガラス対応ラインで1.9型、6型、8型、9.7型パネル(825×1200ドット)を試作。このラインでは6型が9面取り、9.7型が4面取りでき、量産性も高い。EPLaRパネルはe-book、e-Newspaperのほか、写真14のようなスマートカード(1.9型パネル搭載)や電子棚札にも有効と結論づけている。

カラーオイルを用いてエレクトロウェッティングディスプレイをカラー化

 帯電トナーを用いる電気泳動型、メモリー性液晶を用いるコレステリック液晶型に次ぐ第3の電子ペーパー方式として急浮上してきたエレクトロウェッティングディスプレイ(EWD)では、Industrial Technology Research Institute(ITRI)がカラー化方法について報告した6)


写真15 カラーオイル6)
    左からblue、red、yellow R、yellow、black

図14 EWDの表示原理6)

 EWDは表示媒体に水と着色オイルを用いたシンプル構造が特長で、図14のように反射基板の疎水性・親水性を電気的に制御して着色と白色を表現する。水が着色オイルを画素コーナーに押しのけることで二値表示する仕組みで、疎水性絶縁層が疎水性を示すときは着色オイルが表面に安定した層を形成してオイルの色を表示する一方、親水性を示すときは上にある水が着色オイルを押しのけ下にある反射層が現れて白表示となる。容易に想像できるように応答スピードが1.5msecと高く、動画表示にも対応可能なポテンシャルを秘めている。


写真16 モノカラーEWD6)

図15 カラーオイルのスペクトル6)

 ITRIは着色層を1レイヤーでマルチカラー化する方法として@ブラックオイルと前面マイクロカラーフィルター(CF)を組み合わせる方法、ACFレスで複数の着色オイルを塗り分ける方法、の二つを検討した。

 パネル作製フローだが、アクティブマトリクス駆動の場合はTFT基板上に、パッシブマトリクス駆動の場合はITO透明電極上に、まず絶縁層としてSiNx膜を膜厚100nmでプラズマCVD成膜する。次に、フッ素ポリマーを膜厚100nmでスピンコートした後、フォトレジストとの密着性を確保するとともに濡れ性を高めるため、プラズマ処理によって表面改質する。続いて、親水性ポリマーを塗布、フォトリソでパターニングしてリブを形成する。高さは10μmである。その後、カラーオイルをIJ法でリブ内に充填する。最後に、水を全面に充填した後、ITO透明電極付き基板と貼り合わせて封止する。

 さまざまな色素をテトラデカン溶剤に

溶解することにより、写真15のようにブラック、ブルー、イエロー、レッドなどの着色オイルが得られる。色素の選定に当たって重要なのは極性を有していないこと。極性があるとアルカン溶剤に溶解しにくくなり濃度を高められなくなったり、高電圧を印加しないとオイルが移動しなくなり移動速度が遅くなったりするためである。図15に各色の波長を示す。なお、ブラックオイルはブルー、レッド、イエロー色素2種類(yellow R、yellow 5G)を混合して作製した。

 これらのカラーオイルを@駆動電圧50〜70V、A周波数500Hz、Bパルス幅6〜10μsec、Cノズル温度20〜40℃といったプロセス条件でIJ滴下した。写真16はブルー、レッド、ブラックパネルで、IJプロセス条件をオプティマイズすることにより色素本来の色が得られた。

 写真17はブラックオイルとCFを用いた6型マルチカラーパネルで、ブラックオイルの移動量を制御することによってさまざまな色が表示できることがわかる。ただ、外光の反射特性はまだ十分ではない。写真


写真18 CFレスのデュアルカラーパネル6)

写真17 6型マルチカラーパネル6)

18はレッドオイルとブラックオイルを用いたCFレスデュアルカラーパネルで、CFレスによって色純度が改善された。このため、反射率が高く明るいカラーEWDを作製するにはIJ法によってカラーオイルを塗り分けるのがベターと考えられる。

参考文献
5)E.Huitema, et al.:Rollable Displays, SID 09 DIGEST, pp.104-107(2009.5-6)
6)I.French, et al.:Flexible E-Books, SID 09 DIGEST, pp.100-103(2009.5-6)
7)S.-W.Kuo, et al.:Novel Development of Multi-color Electrowetting Display, SID 09 DIGEST, pp.483-486(2009.5-6)


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。