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スマートテクノロジー新技術説明会(3月2日)


スマートテクノロジー新技術説明会
レアメタルフリーのGTO酸化物TFTにIGZO-TFTを上回るポテンシャルが

3月2日、科学技術振興機構(JST)で「スマートテクノロジー新技術説明会」が開催された。ここでは、龍谷大学 木村睦教授が講演した「レアメタルフリー酸化物半導体薄膜トランジスタ」のサマリーをピックアップする。


図1 GTO膜の外観と透過・反射・吸収スペクトル1)

 周知のように、酸化物半導体はIGZO(In-Ga-Zn-O)がTFT-LCDや有機ELディスプレイのバックプレーンとして実用化されているが、将来的な資源枯渇問題を考えるとレアメタルであるInをレス化するのが望ましい。そこで、同研究グループはIn、さらにZnをレス化したGa-Sn-O(GTO)を新たな酸化物半導体として発掘することに成功した。InをリプレースするSnはInの10倍の地殻埋蔵量があり、その単価もさほど高くない。さらに、IGZOやa-Siと同様、コンベンショナルなスパッタリング法で成膜できる。

 図1の写真ようにGTO膜はほぼ透明で、波長400nm以上では吸収がほぼゼロである。さらに、X線回折ではピークがなく、アモルファスであることが確認された。

 そこで、熱酸化SiO2膜付きシリコンウェハー基板上にGTO-TFTを作製した。デバイス構造は基板/熱酸化SiO2膜/GTO半導体層/Ti:Auソース・ドレインというボトムゲート構造である。図2は初期に作製したデバイスのトランジスタ特性で、キャリアモビリティ11.3cm2/V・sが得られた。さらに、最近試作した最新デバイスではモビリティが25.1cm22/V・sと大幅に向上。いうまでもなく、これは一般的なIGZO-TFTに比べ2倍程度に当たる。また、Vthも−1.49Vと良好な値が得られた。


図2 初期に作製したGTO-TFTのトランジスタ特性1)

 周知のように、IGZO-TFTをはじめ酸化物TFTではPBS(Positive Bias Stress)、PBTS(Positive Bias Temperature Stress)、PBTS(Positive Bias Illumination Stress)、NBS(Negative Bias Stress)、NBTS(Negative Bias Temperature Stress)、NBIS(Negative Bias Illumination Stress)といったバイアスストレス耐性が課題とされる。とくにディスプレイ用TFTではNBIS安定性を高める必要がある。そこで、試作デバイスでこれらバイアスストレス耐性を評価したところ、もっとも問題となるNBISは電圧印加3600秒後でVthが0.4Vシフトした。一見これは実用上問題に映るが、同じく封止レスのIGZO-TFTでは−10Vシフトした。つまり、バイアスストレス安定性でも既存のIGZO-TFTよりも高いポテンシャルを示したわけである。

 以上はスパッタ成膜後、350℃でポストアニールしたデバイスの特性だが、さらなる可能性を探るため、ポストアニールレスの室温成膜デバイス、そしてミストデポジション成膜デバイスも作製し特性を評価した。その結果、モビリティは前者が0.83cm2/V・s、後者が0.3cm2/V・sだった。もちろん、ポストアニールデバイスに比べスペックは低いが、今後、デバイス構造やプロセス条件を最適化すればさらなるエンハンスメントが期待できるとしている。

参考文献
1)木村:レアメタルフリー酸化物半導体薄膜トランジスタ、スマートテクノロジー新技術説明会予稿集、pp.31-35(2017.3)


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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