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JST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)A新技術説明会(2月25日)


JST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)A新技術説明会
ナノ薄膜向けのシンプル製造プロセスの報告が相次ぐ

2月25日、科学技術振興機構(JST)主催による「JST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)A新技術説明会」がオンライン形式で開催された。ここでは、ナノテクノロジー向けの新たな製造プロセスの発表2件をピックアップする。

焼成不要な無機ナノ材料で高透過率&低抵抗透明導電膜を

 化学研究所物質創製化学研究系准教授の坂本雅典氏は、「ナノ粒子を用いたフレキシブル透明導電膜の作成」と題して講演。独自開発した無機ナノ材料を透明導電膜に用いることを提案した。


写真1 プラスチックフィルムへの塗布例(online講演中に表示された資料を“スクリーンショット”して撮像しトリミング)
 組成は明らかにしていないが、この無機ナノ材料は溶媒に対する溶解性が高く、溶液状態では白濁化せず、膜化しても透明状態を維持する。その可視光透過率は85%(@550nm)、比抵抗は40〜80/□である。つまり、導電性はフレキシブル透明導電膜として競合する導電性ポリマーやカーボンナノチューブ(CNT)よりも高く、ナノAgワイヤーに匹敵する。また、膜状態では可視光を選択的に透過するため厚膜化しやすく、この場合、さらなる低抵抗化が期待できる。もちろん、フレキシブル性にも優れており、実際、折り曲げ試験を1000回行った後でも比抵抗の上昇は10%以内にとどまる。

 しかし、最大の特徴は各種ウェットコーティング法で塗布するだけで膜化できること。つまり、焼成が不要である。このため、ガラスやプラスチックフィルムといった基板や下地との接着強度が気になるが、一般的な剥離テストでも膜がはがれることはないという。さらに、インクジェットプリンティング法でダイレクトパターニングできるため、透明電極をはじめとするパターニングニーズにも対応できる。

2次元物質を極薄膜でシンプル成膜

 一方、未来材料・システム研究所材料創製部門部門長&教授の長田実氏は「2次元物質を利用した高速・液相ナノコーティング」と題してグラフェンや酸化物シートなどの2次元シート物質"ナノシート"を形成する製造プロセスを報告した。

 ここでいう2次元物質とは、元の層状結晶を剥離してバラバラにした原子1〜5個分の厚さに過ぎない単結晶シートを指す。そのディメンジョンは厚さ1nm、縦横数十μmである。こうした2次元物質化によってバルクにはない機能、例えば高速電子伝導、高誘電性、触媒活性を発現することが期待できる。

 最大の特徴は、濃度0.01〜0.05mg/mLと希薄なコロイド水溶液を基板上に一滴滴下し、表面吸引するだけでナノシートが得られるというシンプルプロセス。その処理時間はわずか30秒に過ぎない。ポイントはコロイド水溶液にエタノールや界面活性剤を添加すること、そして100℃程度で加熱しながら吸引することである。

 これまでグラフェン、TiO2、Ru2O、CaNb3、フォトクロミック材料Cs4W11O16などのセラミックスシートが成膜できることを確認。容易に想像できるようにソフトランディングプロセスなので、サブストレートもガラス、シリコンウェハー、プラスチックフィルムなど制約はない。また、膜の耐熱性も80℃までは安定なことを確認。基板や下地との接合強度も一般的な剥離テストでは剥がれない。さらに、成膜プロセスを繰り返し多層化すれば、3次元膜やヘテロ膜にすることも可能だという。

REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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