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イノベーション・ジャパン2020〜大学見本市Online (9月28日〜11月30日)


イノベーション・ジャパン2020〜大学見本市Online
エレクトロニクス製造プロセスでWhat's Newが相次ぐ

9月28日、オンライン開催による「イノベーション・ジャパン2020〜大学見本市Online」がスタートした。特設ホームページで出展各者のデモンストレーションが11月30日まで公開される。オンライン開催という形式からあくまでも発表内容をコピーしたに過ぎずオリジナルレポートではないが、エレクトロニクス製造プロセス関連のトピックスをレポートする。


浸漬処理するだけで高仕事関数Cu電極を

 まず製造プロセス関連では、九州工業大学・永松秀一准教授の研究グループが「銅電極を用いたローコスト有機デバイス」を提案した。


図1 プロセス進行のイメージ

 各種成膜・パターニング法によってCu電極を形成した後、チオシアン酸ナトリウム水溶液に室温で数分間浸漬する。すると、図1のようにCuと溶液中のチオシアン酸イオンが反応し、Cu表面から内部に向けてCuSCN(チオシアン酸銅)が生成される。この結果、その表面が改質されて仕事関数が高くなり、高仕事関数電極として機能する。もちろん、Cuのパターニング形状は初期のままで、高仕事関数パターンは自己整合的に形成される。

 最有力用途はボトムゲート・ボトムコンタクト型有機トランジスタで、この技術を用いてゲート絶縁膜上にL&S=100μm/20μmのソース/ドレインを形成した有機トランジスタを試作。ローコストでコンタクト抵抗が低いデバイスを作製することに成功した。そのほか、有機ELや有機太陽電池のアノードおよびホール輸送層にも効果的だという。

レーザー照射により超微細Agパターンをダイレクト形成

 一方、静岡大学 小野篤史准教授の研究グループは、「レーザー照射による超微細金属構造作製技術」を発表した。フレキシブルポリマー上に金属微細配線を形成するレーザーパターニング技術で、数十nmオーダーのファインラインが形成できる。


図3 作製したサンプルパターン


図2 レーザー照射法によるプロセスイメージ

 図2のように、銀イオンを溶解したポリマーフィルムにフェムト秒パルスレーザーを集光照射する。この際、ポリマー中のカルボキシル基が光を吸収して電子を放出。放出電子を銀イオンが受け取って還元析出する仕組み。光還元反応のため、レーザーが照射された領域のみに金属が析出する。つまり、レーザー走査により任意のパターンが形成できる。図3は線幅200nmの銀細線や線幅65nmの銀ナノリングの作製結果で、数十nmクラスの微細パターンが容易に得られる。

フラッシュ光照射によりナノシリコンを室温環境で結晶化

 兵庫県立大学 佐藤井一助教授の研究グループは、「光で結晶化するナノシリコンインク」を紹介した。ワークに塗布したナノシリコンインクを高温処理に代わり光照射処理によって結晶化する技術で、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基板にも適用可能だ。


図4 シリコンナノコロイドからSiナノ結晶膜が作られる工程

 今回の実験では、まずシリコンナノコロイド(溶媒は水)をガラス基板上に塗布し、室温で乾燥。このシリコン膜を構成するナノ粒子は平均直径14nmだが、結晶サイズは4nm程度であることがX線回折(XRD)測定により確認された。この膜を室温環境下でフラッシュ光照射することにより、結晶サイズがナノ粒子の平均直径に近づいた。XRD測定により、室温環境内でのフラッシュ光照射1回で700℃以上の熱処理に相当することが確認された。

 プロセスは室温環境での処理が可能なため、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基板上に塗布した場合も結晶性を向上させることが可能。この際、フラッシュ光照射工程中、基板温度は40℃以下と室温レベルを維持できることがサーモラベルにより確認された。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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