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 Special Serialization■図解!! PDPの構造と製造プロセス
第13回 蛍光体層形成プロセス

 いうまでもなく、蛍光体層はPDPの特性を決定する構造物である。青色はBaMgAl10O17:Eu(通称BAM)、緑色はZn2SiO4:Mn、赤色は(Y,Gd)BO3:Eu、(Y,Gd)2O3:Euなどが用いられる。従来、形成法はスクリーン印刷法が唯一の工法とされてきたが、近年はディスペンサ法に代表されるニューアディティブ法も検討されるなどプロセスは多様化している。


スクリーン印刷法



 セル面積の40%程度の乳剤開口部を設けたスクリーンマスクを用いて蛍光体ペーストをセル内にフル充填し、乾燥によって底部とリブ側面に蛍光体を付着させるだけに、基本的には印刷時にセルとスクリーンマスクの位置精度が多少ずれていても問題ない。ただし、乳剤の裏面に付着した蛍光体ペーストを除去するため、1〜3回印刷するたびにスクリーンマスクを裏拭きする必要がある。

 また、スクリーン印刷だけにセル形状には制約がある。もっとも容易なのはストライプ構造セルで、スクリーンマスクとセルの位置合わせ精度が上下左右方向とも多少ずれていても問題ない。一方、マトリクスセルでは難易度がアップする。そのメソッドは、@乳剤開口部をマトリクス形状にパターニングしたスクリーンマスクを使用する、A乳剤開口部をストライプ形状にパターニングしたスクリーンマスクを使用する、の二つに大別される。@はいわゆるドット印刷充填になるため、スクリーンとセルの比較的大きな位置ずれは左右方向にしか許されない。このため、スクリーンマスクの寸法精度を向上する必要があり、フレームサイズ3000×3000o以上の巨大スクリーンを用いて超多面取りをする場合や、フルHDパネルを多面取りするケースには不向きである。他方、Aは当然のことながらリブ頂部にも蛍光体ペーストが付着するため、ペースト乾燥後、リブトップを研磨して付着した蛍光膜を除去する必要がある。

 これらに対し、再三述べてきた位置合わせの問題からハニカム構造セルへ適用するのは困難である。@の完全ドット印刷しか適用できないためで、マザーガラスサイズとスクリーンサイズを考慮すると現実的ではない。

 いずれにしてもパナソニックを除くPDPメーカーが当初から量産採用。ただ、スクリーンマスクは現状のフレームサイズ3500×3500oが限界とされるため、マザーガラスをさらに大型化する場合にはディスペンサ法など他のメソッドへ変更する必要がある。

ディスペンス

 パナソニックが合弁相手の東レの開発した技術をベースに唯一量産採用。詳細についてはブラックボックス化されている。

インクジェットプリンティング(IJ)法


 IJノズルからの吐出性を考えると、既存のミクロンパウダーは使用できず、ナノサイズ蛍光体パウダーを使用することが絶対条件になる。このため、コスト的に現実的はなく、現時点では検討レベルにとどまっている。

感光性ペースト法


 当初、ポストスクリーン印刷法の一番手とされたが、感光性蛍光体ペーストが高価なことや、なんといっても2色目、3色目の塗布時に、すでにパターニングした1色目または2色目と混色する危険があるため、近年は検討さえも下火に。感光性ペーストに変わって感光性テープを用いる方法も同様の理由で近年は検討さえもされていない。


 上図のように、蛍光体層形成プロセスではR、G、Bの蛍光体を塗り分ける必要があるため、他の構造物に比べ工程数が多い。その反面、バリアリブ間の溝に蛍光体ペーストを落とし込むという特異なプロセスだけに精度面の要求は緩やかで、これがスクリーン印刷法が採用されている理由となっている。

 一方、感光性ペースト法は上図でもわかるように工程数が非常に多く、混色の危険性もあるため、量産採用には至っていない。近年、浮上してきたインクジェットプリンティング法は原理こそシンプルでローコストだが、ペーストのレオロジーに代表される材料面や、ノズル目詰まりなどの機械的な問題がネックとなっている。また、マスクスルー成膜法は大気開放型CVD法によるダイレクト成膜が魅力だが、まだ発光特性など明確なデータが明らかにされていないほか、材料利用率ではスクリーン印刷法に比べ劣るだけにローコストとは言い切れない。

 最近、採用が進んでいるのがディスペンサによる一括形成法で、ヘッドをリブ方向へ走らせながら、あかじめパネル毎に作製したノズルプレートの開口部から蛍光体ペーストを一括で滴下。これをRGB3回繰り返す仕組みだ。

■工法の比較

形成法
xy精度
膜厚精度
セル形状自由度
脱バインダ
フルHD対応
実績
コスト
工程数/タクト
装置コスト
直接材料コスト
間接部材コスト
歩留り
トータル
スクリーン印刷法
感光性ペースト法
×
×
×
×
×
×
IJ法
ディスペンサ法
マスクスルー成膜法
(大気開放型CVD法)
×
×

フルHD化対策〜ナノ蛍光体を用いて放電空間の減少をミニマム化

ナノ蛍光体を用いるケース


 フルHDパネルでは画素ピッチが小さくなるため、それにともなって放電セル空間も減少する。したがって、発光効率が低下する。

 こうした放電空間の減少をミニマム化する効果があるのが、ナノサイズ蛍光体を用いる方法。コンベンショナルな蛍光体パウダーはリブ側面・白色誘電体層上部に2.5層敷き詰めると膜厚が10〜15μmになる。つまり、マトリクスセルでは5面で計50〜75μm、ストライプセルでも計30〜45μmとなる。これはサブピクセルピッチが100〜200μmのフルHDパネルでは無視できない。そこで、ナノサイズ蛍光体を用いることによって蛍光体層の膜厚を薄くし、従来と同等以上の放電空間を確保しようという狙いである。

 すでにナノサイズ蛍光体パウダーは複数のメーカーから開発されているが、欠陥が多く発光にほとんど寄与しないとされる蛍光体表面の相対面積が増大するため、サイズを最適化するとともに結晶性を向上する必要がある。また、ナノサイズ化すると活性になり、ペースト化するとパウダー同士が凝集しやすいといった問題もあり、その対策としてCdTeやCdCeなどのナノ半導体粒子をガラス中に安定的に取り込む方法も開発されている。いずれにしても量産に適用できるナノ蛍光体材料の完成にはまだ時間を要するとみられる。

 ちなみに、パネルへの形成プロセスは通常のミクロンパウダーと用いる際と同じで、とくにディスペンサ法やIJ法を用いる場合はノズル目詰まりを懸念しなくてもいいため、むしろミクロンパウダーよりも塗布・パターニングしやすいといえる。

長寿命化〜蛍光体層にラインプラズマを照射

ラインプラズマ照射法



 蛍光体層をプラズマ処理すると、蛍光体の寿命が向上するといわれる。RGB蛍光体層を焼成した後、左図のようにラインプラズマ装置から2.45GHzのマイクロウェーブを照射してH2またはArプラズマを発生させる。とくにBAMと緑色蛍光体に有効とされる。



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