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 Special Serialization■図解!! PDPの構造と製造プロセス
第12回 バリアリブ形成プロセス

 PDPのリブ形成法は従来から数多くの工法が提案され、しのぎをけずってきた。現在は感光性ペースト法とウェットエッチング法がおもに用いられているが、ローコスト化のため海外メーカーを中心にスクリーン印刷法を採用する動きもある。いずれにしても次世代プロセスは、必要な部分だけにリブ材料を形成するというアディティブ法が有力視されている。
 
感光性ペースト法

 バリアリブはガラスペースト塗布後のウェット状態で膜厚が150〜200μmになるだけに、露光時にUV光が下部まで浸透せず、従来は複数回露光〜現像を繰り返す必要があった。こうした問題をブレークスルーしたのが東レの感光性ガラスペーストで、1回で露光できるようになった。このため、パナソニックは東レとPDP合弁会社を設立して量産採用。このため、この感光性ガラスペーストを使用できるのはパナソニックだけで、現在も他のPDPメーカーはこの工法を採用できない。

ウェットエッチング法



 ウェットエッチング法は近年量産採用された比較的新しい工法。まず採用したのは背面基板メーカーのLG Micron(韓国)で、LG Electronicsなどへ背面基板を供給。その後、Samsung SDIも量産採用した。

 ポイントは硝酸系エッチャントの選定を含めたエッチング工程で、とくにクローズドセルではエッチャントのセル内への滞留を抑制するため、基板を下向きにセットしてエッチャントを下部から噴射するのが一般的だ。

サンドブラスト法

 サンドブラスト法は40型以上のPDPを量産する上でキーポイントになった工法。その原型は沖電気工業が開発。その後、富士通、パイオニアなどが相次いで量産採用し、リブ形成メソッドのスタンダードになった。ただ、近年はウェットエッチング法や感光性ペースト法の台頭に加え、サンドブラスト法を採用していたPDPメーカー・背面基板メーカーが相次いで撤退するなど勢力地図は一変している。

スクリーン印刷法

 トータルの積層印刷回数を10回とすると、1〜8回までは乳剤パターンがパターニングされたスクリーンマスクを用いてパターン印刷。最後の1〜2回は積層によって凸部が形成されているため、ベタ印刷で構わない。この1〜2回のベタ印刷でスクリーンメッシュ痕を消す。

 スクリーン印刷だけに適用可能なセル構造には制約があり、ストライプセルやハニカムセルには適用可能な反面、マトリクスセルは水平リブと垂直リブの交点が太るため、適用するのが難しい。

 なお、量産採用しているのはOrion PDPのみ。

リフトオフ法

 この工法は40型クラスの大型PDPの量産当初、NECが量産採用した。その後、NECはサンドブラスト法に変更。さらに、パイオニアにPDP事業を売却したため、以降は量産に用いられていない。

サンドブラスト&印刷法

ダイレクトサンドブラスト法


 この方法は、@リブ材料が不要、A焼成が不要という二つのアドバンテージがあり、これらの結果、リブペーストに含まれるバインダなどがパネル駆動中にセル内に放出されず寿命面で有利といえる。

 反面、ガラス基板自体を微細にサンドブラストでエッチングすることが難しく、チッピングが頻発するという問題がある。また、リブ形成後にアドレス電極を形成しなければならないため、セル構造はストライプセルに限定される。このため、現時点ではいまだ検討レベルにとどまっている。

ダイレクトウェットエッチング法


 この方法のメリットはダイレクトサンドブラスト法と同じである。リブペーストを用いる通常のウェットエッチング法に比べ難易度がアップするものの、ダイレクトサンドブラスト法ほど難易度は高くないと考えられる。反面、リブ形成後にアドレス電極を形成しなければならないため、セル構造はストライプセルに限定される。このため、現時点では検討レベルにとどまっている。

プレス成形法

 この方法はきわめてシンプルなプロセスだけに、京セラが発表した当時は大きな注目を集めた。その後、京セラは技術的問題から背面基板事業への進出を断念。その後も複数の企業から似たような提案・発表があったものの、いずれも試作レベルにとどまっており、多面取り時代を迎えた現在、検討さえもされていないと考えられる。

ブレード成型法

 この工法は三菱マテリアルが開発。リブペーストがプリンのようなレオロジー特性を保有していることが絶対条件となる。つまり、ブレード成型時はシャープに掻きとれ、即座に形状を保持する特性を備えている必要がある。プロセス自体はプレス成型法と同様、もっともシンプルなだけにPDPメーカーの関心を呼び、2002年にSamsung SDIが量産採用を決定。しかし、その後、Samsung SDIは採用を撤回。このため、三菱マテリアルもブレードとペーストの販売から撤退した。

 Samsung SDIをはじめPDPメーカーが採用に踏み切らなかった最大の原因は、そのメカニズムからストライプ構造セルにしか対応できなかったこと。折りしも、Samsung SDIが一時採用を決断したのは、ストライプ構造セルからクローズド構造セルへ移行する時期にあった。

ノズルノズルディスペンサ法

 このメソッドは07年に大日本スクリーン製造から発表された。ターゲットはPDPのリブだけでなく、FEDのスペーサーということからも想像できるように、きわめてアスペクト比の高い構造物が作製でき、学会では高さ1.5oのFED用スペーサーを発表している。また、1ヘッド当たりのノズルも100個以上設けられるため、ヘッドをマルチ化すれば1スキャンでリブを一括形成できる。ディスペンス直後にUV光を照射してリブペーストを硬化させるため、ペーストをUV硬化型にする必要があり、ペーストに含まれるバインダがその後の焼成によって完全に除去できるかなど疑問もある。いずれにしてもディテールは開示されていないため、下の表でも?マークを多くつけた。

メタルメッシュ実装法

 大気開放型CVD法で知られる長岡技術科学大学の提案で、メタルプレートをウェットエッチングしてリブの原型を作るという発想は評価できる。その最大のメリットはセル高さを稼ぐことができる点で、この結果、発光効率が向上する。

 問題は作製したメタルメッシュをどのような方法で背面基板に実装するかである。接着剤などで接着するにしても、最終的には焼成する必要があり、その際のガラス基板とメタルメッシュの熱膨張係数の違いによるパターン歪みが懸念される。


 上図のようにリブ形成法には数多くの工法があり、その数は机上レベルを含め50近くともいわれる。これらは、フォトリソによってパターニングするフォト法と、スクリーン印刷に代表されるアディティブ法に大別できる。

 これまでは精度や量産安定性に優れるサンドブラスト法が事実上のデファクトスタンダードとなっていたが、近年は感光性ペースト法やウェットエッチング法が台頭。さらに、金型や版などを用いた転写法も登場。くわえて、海外メーカーを中心にローコストなスクリーン印刷法を見直す動きがあるなど、勢力地図は一転して混戦模様を呈している。

■工法の比較

形成法
xy精度
z精度
セル形状自由度
リブ形状自由度
高さ
脱バインダ性
フルHD対応
実績
コスト
工程数/タクト
装置コスト
直接材料コスト
間接部材コスト
歩留り
トータル
スクリーン印刷法
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サンドブラスト法(通常)
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リフトオフ法
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感光性ペースト法
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プレス成形法
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ダイレクトサンドブラスト法
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ダイレクトウェットエッチング法
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印刷+サンドブラスト法
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ウェットエッチング法
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メタルメッシュ実装法
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ノズルディスペンサ法
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ブレードデフォーミング法
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注1)感光性ペースト法は1回のフォトリソでパターニングできると前提

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