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 Special Serialization■図解!! PDPの構造と製造プロセス
第17回 封着・排気・封入・封止プロセス

 数あるPDPプロセスのなかでもっとも改善が求められてきた工程が封着・排気・封入・封止工程。他の工程に比べ圧倒的に処理時間がかかるうえに、パネルの真空漏れなどの不良があるとそのコストロスが大きいためだ。

 そこで、封着と排気を分離したバッチ処理から、封着・排気一括処理、インライン処理とプロセスは目覚ましく進歩してきた。しかし、それでもまだ不十分という声が多く、従来の概念を超越した高スループット装置や完全自動化装置が求められている。
また、処理時間短縮のため、新たなメソッドが相次いで提案されるなど、今後、プロセスが劇的に変化する可能性もある。
 
バッチ式封着・排気方式(分離型)


バッチ式封着排気一体処理方式


インライン連続封着方式


カートプッシャー式連続排気方式


チップレス排気・封入・封着方式

 この方式はチップ管を用いない点が他方式と比べ決定的に異なる。準備として、通常のシールパターンの上部に低温で溶融する排気・封入用フリットガラスを間欠パターンで塗布し、排気・封入孔を設けておく。

 フローは、まずチャンバ内を加熱しながら排気する。所定の真空度に到達後、複数のパネルを収容したマッフル内にNe-Xeなどの放電ガスを導入し、パネル内に封入する。次に、マッフル内を再加熱する。この昇温過程で融点の低い排気・封入用フリットガラスが溶融する。この結果、パネル内がシーリングされる。その後、ピーク温度に達すると本シール用のフリットガラスが溶融し、パネル内が完全に気密化される仕組み。

水平インライン封着・排気・封入方式


MgO膜成膜〜貼り合わせ〜封着〜排気〜封入一貫処理方式



 上図のように近年、封着・排気・封入・封止工程はバリエーションが豊富になってきた。これは、PDPメーカー・製造装置メーカーがパネルのコストダウンのため、プロセスの改善に取り組んできた結果といえる。

 周知のように、従来は封着・排気を同一装置で一括処理するバッチ処理が主流だった。これは、封着と排気を別々の装置で処理する分離方式に比べ省エネルギーなためである。その後、バッチ式に比べ省エネルギーでトータル的にはコンパクトなインライン化へ移行する動きが活発化した。具体的には、封着はペースト焼成工程で用いられるインライン連続処理方式、排気は排気カートを用いたカート式連続排気処理が代表的だ。

 さらに、最近では封着・排気を完全に連続処理するカート式インライン装置や、水平枚葉式で連続処理する装置も登場。そのほか、MgO膜成膜からパネル貼り合わせ〜封着・排気を大気にさらさず、同一装置内で処理するというコンセプトも提案されるなど、封着・排気工程はプロセス・装置とも目覚ましい進歩を遂げている。そして、ファイナルターゲットとされるのがインライン処理のチップレス処理だ。ただし、その実現にはフリットシールペーストから発生する不純物ガスをどのように処理するかが最大の課題となっている。

■工法の比較

手法
温度分布
メンテ性
自動化・省力化
パネル厚さ
脱バインダ
実績
コスト
イニシャルコスト
ランニングコスト
歩留り
トータル
装置コスト
(対処理能力)
スペースコスト
(対処理能力)
エネルギーコスト
ガス導入コスト
バッチ式封着+排気方式
×
×
×
×
×
バッチ式封着・排気一括処理方式
×

インライン封着+カートプッシャー型排気方式

カート式インライン封着・排気方式
チップレス排気・封入・封着方式
×
×
×
インライン式封着・排気方式
×

MgO膜〜貼り合わせ〜封着〜排気一貫処理方式

×

封着・排気・エージング工程の処理時間短縮方法

ラインプラズマ照射法




 上記のように封着・排気工程並びにエージング工程はPDP製造プロセスのなかでもっとも処理時間がかかるだけに、処理時間を短縮しようという試みある。

 代表的なアプローチがラインプラズマを照射して前面基板上のMgO膜、背面基板上の蛍光体層をクリーニングするアイデア。すでに幅1000o以上に対応可能なラインプラズマ処理装置が開発されており、図のようにHeガスなどによって発生させた高密度ラインプラズマを水平移動する基板上に照射する。

 周知のように排気工程ではセル内に残留している不純物ガスを除去するが、蛍光体、MgO保護膜、バリアリブといった構造物の内部に残留しているガスを除去するには非常に時間がかかり、それでも完全に除去するのは難しく、駆動中にセル内に放出されてライフや発光効率を低下させるといわれる。このため、一般的には封着・排気工程で15〜20時間、エージング工程で6〜10時間を要するとされる。これをラインプラズマ処理を1時間程度に短縮するという狙いである。

レーザー封着法


 この方法は図のようにNd:YAGレーザービーム(1064nm)をシール部4辺に照射する仕組みで、シールフリットを局所加熱して封着時間を現在の十数時間から数分に短縮する狙いがある。使用するシールフリットはPbO-B2O3系の非晶質フリットで、通常は450℃×15分で封着するが、予熱温度300℃前後でもレーザーによる局所加熱によってフリット内の温度が急上昇し数分で封着温度に達する。

 ただし、予熱温度を低くするとガラス基板が割れやすくなる。いうまでもなく、局所加熱されたシール部付近とそれ以外のエリアで温度差ができ熱応力が発生するためであり、レーザー照射ポイントより上部には引っ張り応力、下部には圧縮応力が発生する。この結果、レーザー照射方向に沿って割れが進行する。

 いずれにしても予熱温度を250℃以下に下げることができればMgO成膜後の予熱が利用できるため、封着タクトタイムを2分程度に短縮することが可能になる。


今後の掲載スケジュール

第18回 エージングプロセス

※毎週、上記の工程を追加していく予定です。


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