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CLOSE UP■ペンタセン有機トランジスタ製造フロー |
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有機半導体材料としてもっとも高いキャリアモビリティを誇るペンタセン(C22H14)。だが、一般的な蒸着タイプに限ればそのパターニング法はマスクスルー蒸着法に限定されていた。その一方、ここにきて相次いでフォトリソ法を改良したメソッドなどが提案されている。蒸着型ペンタセンのパターニング法を検証する。
一般的にペンタセンは溶剤に不溶であるため、通常は抵抗加熱蒸着法で成膜される。また、エッチングによるパターニングも難しいため、従来はメタルマスクの開口部からペンタセンをスルー蒸着するメタルマスクスルー蒸着法が用いられてきた。 容易に想像できるように、マスクスルー蒸着法はプロセス難易度が高く、メタルマスクにはパターン寸法精度、開口部のテーパー化、表面平滑性、洗浄性、高ヤング率、テンション均一性などが求められる。一方、プロセス面ではワークとメタルマスクのアライメント精度、蒸着レート均一性、メタルマスクの熱変形などが課題となっている。いずれにしてもチャネル長を20μm以下にすることはきわめて困難で、将来の大型化にも対応にしくい。 このため、近年ではプリントシャドウマスクを用いるマスクスルー蒸着法や、有機半導体へのダメージを抑制した新たなフォトリソ法が相次いで登場。パターニング法のバリエーションが広がってきた。以下、これまでに明らかにされているニューメソッドをみてみる。 ちなみに、ペンタセンを蒸着する前に、シランカップリング剤を塗布するなど表面改質した下地をパターニングしておけば、プリトリートメントした部分に付着したペンタセンだけが配向・成長するため、このケースではマスクスルーパターニング精度はさほど問われない可能性もあり、従来のマスクスルー蒸着法でも問題ないことも考えられる。プリントシャドウマスク法 プリントシャドウマスク法は、従来のメタルマスクに代わってプリントシャドウマスクを用いる。非感光性レジストをスクリーン印刷してマスキングパターンを形成した後、有機半導体材料をベタ成膜してパターニングする仕組み。 実際に膜としてワークに印刷するため下地との密着性も良好で、メタルマスクを用いると裏面から蒸着材料が回り込む“シャドー”も発生しない。さらに、メタルマスクで問題となる熱膨張係数の違いによる寸法ずれの懸念もほとんどない。つまり、メタルマスクを用いる場合に比べパターニング精度が大幅に向上する。くわえて、ブランク部に成膜する主材料にも制約がなく、蒸着プロセスにもウェットプロセスにも対応できる。そのほか、シャドーが発生しないため、OVPD(Organic Vapor Phase Deposition)法をはじめとするキャリアガスを用いる真空成膜法にも対応可能だ。汎用の非感光性レジストをスクリーン印刷するため、プロセスコストも概して安い。 これらのアドバンテージがある反面、マスキングレジストの硬化性(=硬化温度+硬化時間)と剥離性はトレードオフの関係になるため、剥離しやすさを優先し硬化条件をウィーク設定にすると密着性が低くなるといったウィークポイントがある。また、ペンタセンのようにセンシティブな材料を用いる場合はレジストに含まれる溶剤成分の影響も懸念される。 フォトリソ法@〜ドライエッチング法 上記のように一般的にペンタセン膜をフォトリソでパターニングすることは難しいが、保護膜を用いればミニマムダメージでペンタセンをパターニングすることも可能だ。図2のように、ペンタセン膜上に樹脂を塗布した後、フォトレジスト塗布〜露光〜現像〜O2ドライエッチング〜剥離といったフローでパターニングする仕組みだ。ただし、この際も現像液や剥離液によるペンタセンのダメージが懸念されるため、これらの薬液の選定には注意を要する。 フォトリソ法A〜新リフトオフ法 この方法はペンタセン有機半導体の微細パターニング法として考案されたニュープロセスである。 まずポジ型フォトレジストを塗布・硬化し、マスク露光〜現像によってパターニングする。続いて、UV光を全面露光する。これにより、基板上に残ったレジストが現像で容易に可溶化する。その後、ペンタセンを抵抗加熱蒸着する。最後に、通常のアルカリ現像液で残ったレジストを溶解し、上部に付着したペンタセンとともにリフトオフする。つまり、通常の現像液を用いてディッピング法でレジストを剥離する。これは、ペンタセンが一般的な剥離液ではダメージが大きいのに対し、現像液によるダメージは比較的小さいためである。 最終工程のリフトオフ時に半導体層として残す部分のペンタセンの剥離・パターニング不良が懸念されるが、ペンタセンを蒸着する前にシランカップリング剤を下地に設けて密着性を高めておけばそうした問題はないといわれる。 フォトリソ法B〜犠牲層を用いる方法 この方法は犠牲層であるセパレータを設けて有機半導体層を微細パターニングする。このため、ペンタセン有機半導体は蒸着法にしろ、塗布法にしろ、ベタでいい。ただし、セパレータによって形状が段差状になるため、上部にプラナリゼーションが不可欠となる。 |
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表1 ペンタセン有機半導体層パターニング法の比較 |