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技研公開2025(2025年5月28日〜6月1日)


技研公開2025 Mini-LEDディフォーマルディスプレイの完成度がUP

5月29日〜6月1日、NHK放送技術研究所(東京都世田谷区)で開催された「技研公開2025」。ディスプレイ関連のメインエキジビションは2023年から公開しているLEDディフォーマルディスプレイで、今年は解像度を2.5倍に高めるなど完成度がアップ。さらに、独自の液体金属配線を通常のディフォーマルディスプレイに加え、形状によって表示画像が変化するオリジナルデバイスにも適用するなど、そのポテンシャルをより高めた。



写真2 256×128mmサイズMini-LED

写真1 128×128mmサイズMini-LED
 冒頭のように、ハンカチのように形状が自在に変化するディフォーマルディスプレイはRGBフルカラーの128×128mm(32×32画素)と256×128mm(64×32画素)のMini-LEDデバイスを披露。どちらもドットピッチは4mm、LEDチップサイズは2o角で、昨年に比べ解像度を2.5倍に高めた。写真1、2のようにベース形状は半球ドーム状だが、伸縮配線を用いたアクリルゴムベースデバイスのため、自在に形状を変化させることができる。この点を強調するため、写真3のように伸び縮みを繰り返すデモも敢行。コンベンショナルなプラスチックフィルムデバイス以上のフレキシブル性を印象づけた。また、輝度も600〜700cd/m2と高く、かなり明るく鮮やかに感じた。


写真3 ベンディングテストの様子
 このディフォーマルディスプレイを実現するキーテクノロジーである伸縮配線については従来、融点が低く液体でありながら電極として機能するGaIn系を用いていたが、印刷後の膜状態における空隙や凝集を抑制するため、ナノサイズNiをドープし、母体粒子であるGaInを周囲に結合させる形でインク化。この結果、印刷後もボイドレスの均一なファインラインが形成できるようになった。もちろん、室温で液体状態を維持し電極として接着した後も液体として動作する。この結果、デバイスを伸ばしたり丸めたりしても電極が破損しないのはもちろんのこと、比抵抗も変化しない。

 形成方法は従来と同様、まず元ガラス基板上にメタルマスクを載せ、その開口部から液体金属を充填印刷するメタルマスクスルー印刷によって印刷。メタルマスクを外した後、保護膜としてシリコン樹脂を塗布・硬化させることで配線エリアを固定して封止する。その後、市販のマイクロLEDチップをマウンターで実装。最後に、元基板をアクリル系ゴムシートに接着して転写した後、剥離する仕組み。

変化する形状に追随して表示画像が変化するLEDデバイスも披露


写真5 しぼまさせた状態のLEDデバイス

写真4 ふくらませた状態のLEDデバイス
 冒頭のように、今回は伸縮配線を利用し、形状変化に応じて表示画像が異なるというユニークなデバイスも披露した。

 写真4はエアーによってLEDデバイスをふくらませた状態、つまり配線が伸びることによって高抵抗になった状態である。一方、写真5はエアーを抜いてしぼまさせた状態、つまり初期の低抵抗状態を示す。この抵抗値の変化に応じてLEDの点灯状態をあらかじめ設定しておくことで、形状変化によって自動的に表示画像も変化するようにした。いうまでもなく、これは再三述べたきた液体伸縮配線によってのみ可能になる。

酸化物ITZO-TFTを撮像デバイスに


写真6 湾曲型TFTイメージセンター
 TFT関連では、広視野撮影カメラを実現するデバイスとして湾曲型TFTイメージセンターを披露した。耐熱性の高いポリイミドフィルム上にITZO(In-Sn-Zn-O)-TFTを作製したデバイスで、プロセス温度をマックス400℃に抑制。キャリモビリティもコンベンショナルなIGZO-TFT以上が得られる。

今年も透明有機薄膜太陽電池をPR

 太陽電池関連では、今年も透明有機薄膜太陽電池を披露した。p型とn型の光吸収層をスタックしたp-n接合型低分子デバイスとクラシックといっていいほどの初期的デバイスだが、逆型有機EL向けに日本触媒と共同開発したノンアルカリ電子注入材料を電子輸送層に使用。この結果、通常デバイスを凌ぐ信頼性を確保した。ただ、具体的な寿命は公表せず、光電変換効率も1%程度に過ぎないという。

 ブースでは写真7のように背面が透けてみえるデモを敢行、70%以上という高透過率をアピールした。また、写真8のように太陽光やLED照明で発電し、市販の電子ペーパー、風車、トイをドライブ。その透明性を生かしたインドアユースに有効なことを示した。

写真8 透明有機薄膜太陽電池の応用例

写真8 透明有機薄膜太陽電池


REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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