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技研公開2021(2021年6月1〜30日)


技研公開2021 フレキシブル有機ELDを3枚用いたVRディスプレイや量子ドットをPR

NHK放送技術研究所(NHK技研)は6月1日から30日にかけてonline形式で「技研公開2021」を開催している。開催自体は2年ぶり、online開催は初めてで、期間中、公式HPでテレビ放送に関する次世代技術をピーアール。ここでは、ディスプレイ関連のWhat's Newを公式HP(https://www.nhk.or.jp/strl/open2021/index.html)から抜粋してレポートする。

写真2 30型4Kフレキシブル有機ELD(InterBee 2019で撮影)

写真1 没入型VRディスプレー(出所:NHK技研のHP)

 "未来の没入型VRディスプレー"と名付けた次世代ディスプレイは、30型4Kフレキシブル有機ELディスプレイを横方向に3枚貼り合わせた51.3型パネルを開発。写真1のように、半径37cmに湾曲化することにより頭部を包み込むようなディスプレイを実現した。視野のほとんどを映像でカバーできるため、パーソナル視聴でも高い没入感が得られる。くわえて、映像・音声に合わせて振動する椅子(いす型触覚デバイス)を組み合わせれば、さらに臨場感を高めることができる。解像度は6480×3840画素と水平方向6K、垂直方向4Kで、画素ピッチ0.173mmに高精細化することでピクセルが事実上みえないようにした。

 30型4Kフレキシブル有機ELDはシャープディスプレイテクノロジーと共同開発したもので、パネルは反射アノード/ホール注入層/ホール輸送層/EL発光層/電子輸送層/電子注入層/光透過性カソードというトップエミッション構造。ベースサブストレートと封止サブストレートにプラスチックフィルムを用いることにより厚さを0.5o、重さを100gに薄型軽量化しフルフレキシブル化した。なお、有機EL素子を駆動するTFTにはLCDで量産採用しているIGZO(In-Ga-ZnO)-TFTを用いている。

Cdフリーの量子ドットを開発し発光素子を公開

 一方、次々世代向けでは"色鮮やかな量子ドット発光素子"を紹介。周知のように、量子ドット材料は粒子状の小さな半導体結晶で、発光を担うコアとシェルの周りにインク溶剤をなじませるための配位子を設ける。コアの直径は数〜十数nmで、そのサイズによって発光色をコントロールできるのが特徴。つまり、サイズが大きいと赤、小さくなるにつれて緑、青と色が変化する。このため、RGB各色を塗り分けることによりRGB独立発光方式のフルカラーディスプレイが実現する。


図1 開発した量子ドットと色再現性(出所:NHK技研のHP)




















  量子ドットはこれまで効率の高いCd系を中心に開発が進められてきたが、図1のようにNHK技研はRGBともCdフリーの量子ドット材料(InP、SeZn)を使用。4K8Kの国際規格Rec.ITU-R BT.2020で定められている色の範囲に対し80%を再現できるようにした。

写真3 開発した量子ドット(出所:NHK技研のHP)

 ちなみに、写真3の試作素子はアノード/ホール注入層/QD層/電子輸送層/カソードと有機ELとほぼ同じレイヤー構成で、QD層はインクジェットプリンティング法などのウェット塗布法によって形成することができる。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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