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第27回ファインテック・ジャパン/第8回高機能フィルム展(4月5〜7日)


第27回ファインテック・ジャパン/第8回高機能フィルム展
出そろってきたフレキシブル有機ELデバイス向けインフラ

4月5〜7日、東京ビッグサイトで開かれた「第27回ファインテック・ジャパン/第8回高機能フィルム展」。近年の傾向を引き継ぎ、今年もフレキシブルディスプレイ・デバイス用インフラのデモが目を引いた。おもなトピックスをレポートする。


写真2 車載用曲面OLEDマルチディスプレイ

写真1 8K98型TFT-LCD

 まずディスプレイモジュール関連では、今年もBOE Technology(中国)グループが唯一ディスプレイを出展。フラッグシップモデルはすでに発売中の8K98型TFT-LCDで、そのサイズ&レゾリューションは圧倒的な存在感を放っていた。ただし、このプロダクトは2年前から披露しており、目新しさはなかった。

パネルの額縁部分を透明にしてタイリング有機ELDの見栄えを向上

 一方、ディスプレイカテゴリーで目立っていたのが半導体エネルギー研究所。独自のCAAC-IGZO(C-Axis Aligned Crystal-In-Ga-Zn-O)-TFTでドライブした有機ELディスプレイを大々的にデモ。目玉はフレキシブルパネルをタイリングした曲面OLEDマルチディスプレイで、写真2のように13.5型トップエミッションパネルを3枚タイリングした車載用ディスプレイシステムを披露。パネル間のつなぎ目に当たる額縁部分5oを透明にすることによって重ね合わせ部を目立たなくしたのが特徴で、確かに50cm以上先ではシーム部はほとんど認識できなかった。

 パネル自体は青色蛍光材料と赤色&緑色燐光材料を用いたRGB3色独立発光方式で、元ガラス基板上にCAAC-IGZO-TFTと有機ELを形成し樹脂膜で封止した後、剥離層からリリースしてTACフィルムに転写した。このため、厚さはわずか0.1oに過ぎず、フレキシブル性もR=2oとハイスペックを実現した。なお、気になる水蒸気透過性もWVTRで10-6g/m2/dayクラスとコンベンショナルなガラス製パネル並みを確保した。

密着層によってベースフィルムの耐熱性を向上


写真3 各種印刷サンプル


図1 プリンテッドエレクトロニクス用フィルムの構造

 マテリアル関連では、日本製紙がユニークなプリンテッドエレクトロニクス用フィルムを提案した。図1のようにプラスチックフィルムに印刷層とブロッキング防止層を設けたもので、この構成のフィルムをタッチパネルメーカーなどへ供給する格好。核心パートである印刷層は上部に印刷されるインク・ペーストの密着層となり、これらを吸収するわけではないものの、にじみの少ないファインラインが印刷可能になる。しかし、最大の特徴は耐熱性が210℃クラスと高いこと。つまり、ベースフィルムの耐熱性を実質的に高めることができる。このため、インク・ペーストの焼成温度を高めることができる、つまり導電性などの特性をエンハンスすることができる。すなわち、コンベンショナルな耐熱性フィルムであるポリイミドフィルムを代替する安価なプラスチックフィルムとして有望とされる。

 写真3は各種印刷法でパターンを形成したサンプルで、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、インクジェットプリンティング法でその有効性を確認。さらに、一般的な熱焼成プロセスに代わる硬化方式として注目される光焼成プロセスでは光焼成でPETフィルムがダメージを受けて陥没する危険が高いのに対し、このフィルムではサブストレートに対するダメージがみられないなど、より効果的であることを強調していた。

ALD膜を用いて薄膜封止膜を薄膜化


図3 ALD封止技術を用いた有機EL照明デバイスの構造


写真4 ALD封止技術を用いた有機EL照明デバイス


図2 水蒸気透過性評価結果(WVTR)

 製造装置では、低温poly-Si TFT-LCD用エキシマレーザーアニール装置で知られる日本製鋼所が有機ELデバイス向けとして薄膜封止用ALD(Atomic Layer Deposition)装置をアピールした。ALD法は膜の緻密性が高く、薄膜でも高い封止性能が得られるためで、ステップカバレッジ性にも優れるためサイドリークの心配がないという。ただし、ALD法で成膜したAl2O3単膜またはSiOx単膜では十分な封止性能が得られないため、CVD膜/ALD膜/CVD膜の3層構成を提案。膜厚はALD膜が20nm以下、CVD膜が100nm以下で、この構成だと図2のように10-6g/m2/dayという水蒸気透過性が得られる。

 写真4はPENフィルム上にこのCVD膜(SiNx)/ALD膜(Al2O3)/CVD膜(SiNx)ガスバリア層を設けたフレキシブル照明デバイス(図3)で、一般的な有機/無機ハイブリッド封止レイヤーに比べ膜厚が薄いためフレキシブル性に優れ、R=30oまで曲げても封止性能はほとんど低下しないという。装置としてはCVDチャンバも併設したクラスターツール型封止システムを開発、マックス第6世代基板まで対応可能だ。ちなみに、気になるALD法の成膜レートは3〜5nm/minだという。

フレキシブルガラス用Roll to Roll成膜装置をPR


写真6 ITO膜を成膜したフレキシブルガラス

写真5 FOSA LabX 330 GLASS

 同じフレキシブル有機ELデバイス向けでもフレキシブルガラス用インフラをアピールしたのが独Von Ardenne。日本電気硝子などのガラスメーカーから提案されているロール状フレキシブルガラスをRoll to Roll方式で連続搬送しながら各種機能膜を成膜するパイロットマシン「FOSA LabX 330 GLASS」を紹介。このマシンでITO膜(膜厚150nm)を成膜したフレキシブルガラスを披露した。対応幅は300oで、スパッタリングプロセスに加え、プラズマCVDプロセス、蒸着プロセスにも対応できる。また、スパッタプロセスではコンベンショナルなプレーナーターゲットだけでなく、材料利用率が高いロータリーターゲットも使用することができる。

 

 

 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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