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関西大学新技術説明会(11月15日) |
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11月15日、科学技術振興機構(JST)で「関西大学新技術説明会」が開かれた。ここにきて実用化機運が高まっているフレキシブルデバイス向けとして紹介された2件の講演をピックアップする。
化学生命工学部化学・物質工学科の川ア英也准教授は独自開発した画期的なナノCu粒子について発表した。 ナノCu粒子の合成法は簡便なポリオール法を選択。Cuイオンを溶解させたエチレングリコールを塩基雰囲気で185℃×30分加熱処理し、ナノCu粒子が独立分散した分散液を作製した。つまり、溶媒と前駆体イオンだけで合成したもので、エチレングリコールが還元剤の役目を果たすため、ナノ粒子の独立分散状態を保持する表面保護剤は不要である。ポイントは加熱処理にマイクロ波加熱を用いた点にある。熱伝導や対流の影響が少なく、特定の物質のみを急速かつ均一に加熱できるため、短時間で均一なナノCu粒子が生成できる。具体的には金属原子から短時間で大量の核が形成でき、その段階で反応を停止させて粒子をそれ以上成長させないスキームで、この結果、シングルナノサイズのCu粒子が生成される。この際、エチレングリコールは加熱処理によってオリゴマーになり、ナノCu粒子に耐酸化性が付与される。 写真1はナノCu粒子の顕微鏡像とTEM像で、粒径2nm前後のシングルナノ粒子が得られ、その粒度分布も±0.2nmときわめて均一だった。表面保護剤レスのため膜化した際に低温焼結するのも特徴で、150℃で焼成するとグレイン同志が融着し導電膜として機能する。いうまでもなく、既存のナノCu粒子の焼結温度が300〜400℃であることを考えると、この値は画期的に低いといえる。
また、前記のメカニズムからナノCu粒子の最大の問題とされている酸化もほとんどなく、XPS測定でもピークは932.6eVとピュアシングルナノCuのバルク値(932.4eV)とほとんど変わらなかった。これは、FT-IR観察でも酸化Cuの吸収ピークがみられなかったことからも裏づけられた。さらに、合成後、大気中で3週間放置しても酸化せず、分散性も変化していないことが確認できた。 研究グループはCuに続きPd、Pt、Au、Feもマイクロ波加熱を用いたポリオール法でシングルナノサイズのナノサイズ化することに成功。今後、大量合成技術を開発することにしている。 転写法でフィルム基板に結晶化セラミック薄膜を しかし、いうまでもなく通常は元基板から剥離転写時に結晶化セラミック膜にクラックが入ってしまい、うまく転写できない。そこで、図2のようにあらかじめ元基板上にPVP(ポリビニルピロリドン)やポリイミドといったポリマーを剥離層として塗布。その後、セラミック膜をゾル・ゲル法で塗布して高温焼成し、最後に接着剤付きプラスチックフィルムに転写することにした。なお、高温焼成時に炭化して一部が転写されたセラミック膜上に残るポリマーは、テープで容易に剥離除去できる。
まずはプリカーサ材料を用いてTiO2薄膜を転写することにトライ。セロハン粘着テープに転写したところ、TiO2薄膜上にクラックが発生した。つまり、元基板からの剥離時に引っ張り応力と曲げ応力が働いてきれいに転写できなかった。そこで、厚さ0.5oのポリカーボネート基板を転写基板に用いたところ、図3のようにクラックレスで転写することができた。この結果、TiO2薄膜によってポリカーボネート基板に高い反射特性が付与でき、ある程度のフレキシブル性も得られた。 続いて、FPDや太陽電池など幅広く使用されるITO薄膜もクラックレスで透明な導電膜を転写することに成功。さらに、シリコン基板上に形成した(002)配向ZnO薄膜も転写することを確認。さらに、ダイシング加工したシリコン基板を基基板に用いると、図4のようにアクリル基板上にZnO膜がパターニングできた。 参考文献
1)川ア:低温基材用ナノインクに最適! シングルナノサイズ(約2nm)の銅ナノ粒子、関西大学新技術説明会資料、pp.29-33(2011.11) |